Johnson & Johnson(J&J)は2026年8月24日、抗FcRn抗体IMAAVY(一般名:nipocalimab-aahu、ニポカリマブ)が、温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)の治療薬として米食品医薬品局(FDA)の承認を取得したと発表しました。
対象は、副腎皮質ステロイドによる治療中または治療歴のある12歳以上の患者です。米国でwAIHAに対して承認された初の治療薬であり、IMAAVYにとっては全身型重症筋無力症に続く2つ目の適応症となります。
- IMAAVYのFDA承認対象
- 第2/3相ENERGY試験の有効性
- 安全性と主な副作用
- J&Jの自己抗体疾患における開発戦略
J&JのIMAAVYが温式自己免疫性溶血性貧血でFDA承認

今回の承認対象と、承認の根拠となった第2/3相ENERGY試験の主要な結果を確認します。
米国初のwAIHA治療薬
wAIHAは、病原性IgG自己抗体が赤血球に結合して破壊し、重度の貧血や強い疲労を引き起こす希少な自己免疫疾患です。静脈血栓塞栓症、急性腎不全、感染症などの重い合併症につながる可能性もあります。
これまで副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が使用されてきましたが、疾患を引き起こすIgG自己抗体を標的とするFDA承認薬はありませんでした。
IMAAVYは胎児性Fc受容体(FcRn)に結合し、その働きを阻害するモノクローナル抗体です。FcRnによるIgGの再利用を抑え、B細胞機能を維持しながら血中の病原性IgG自己抗体を減少させるよう設計されています。
承認対象は、現在または過去に副腎皮質ステロイドによる治療を受けた12歳以上のwAIHA患者です。
ENERGY試験の主要評価項目
承認の根拠となったENERGY試験は、成人wAIHA患者115人を対象とした多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の第2/3相試験です。患者はニポカリマブの異なる2つの投与群またはプラセボ群へ、約1対1対1で割り付けられました。
主要評価項目は持続的ヘモグロビン反応です。ヘモグロビン値が10g/dL以上かつベースラインから2g/dL以上上昇した状態が28日以上続き、救済治療を必要としないことと定義されました。
承認用量であるIMAAVY 30mg/kgを4週間ごとに静脈内投与した群では、24週までに持続的ヘモグロビン反応を達成した患者の割合がプラセボ群の約3倍となり、主要評価項目を達成しました。試験設計の詳細は、ClinicalTrials.govのENERGY試験登録情報に掲載されています。
早期のHb上昇と疲労改善
IMAAVY群では、投与開始1週時点でヘモグロビン値が平均1g/dL上昇しました。プラセボ群では同時点で変化が確認されていません。
反応例における最初のヘモグロビン反応までの期間中央値は、IMAAVY群が4.1週、プラセボ群が12.1週でした。また、24週時点におけるFACIT-Fatigueスコアのベースラインからの平均変化量は、IMAAVY群がプラセボ群を3.51ポイント上回っています。
ただし、1週時点のヘモグロビン変化、反応までの期間、FACIT-Fatigueの結果は、事前に定められた統計解析計画上、記述的な結果として扱われています。
J&JのIMAAVY、温式自己免疫性溶血性貧血でFDA承認|安全性と開発戦略
ENERGY試験で確認された安全性と、全身型重症筋無力症から希少血液疾患へ広がるIMAAVYの開発状況をまとめます。
主な副作用と安全性
ENERGY試験におけるIMAAVYの安全性プロファイルは、全身型重症筋無力症を対象とした臨床試験で確認されている既知の安全性情報とおおむね一致しました。
wAIHA患者で発現率が10%以上だった主な副作用は、末梢性浮腫、下痢、発熱です。現時点で、wAIHAに固有の新たな安全性シグナルは発表されていません。
米国の処方情報には、感染症、重篤な過敏症、注入に伴う反応などのリスクが記載されています。また、IMAAVYによる治療中は生ワクチンを接種しないこととされています。
2つ目の適応症を獲得
IMAAVYは2025年4月、AChR抗体またはMuSK抗体陽性の12歳以上の全身型重症筋無力症を対象に米国で承認されました。今回のwAIHAは、同剤にとって2つ目のFDA承認となります。
全身型重症筋無力症に続いてwAIHAでも承認を取得したことで、IMAAVYの事業展開は神経筋疾患から希少血液疾患へ広がりました。一方、今回の発表では、wAIHAを適応症とする米国での発売時期、価格、売上見通しは示されていません。
自己抗体疾患で開発を拡大
J&Jはニポカリマブを自己抗体疾患領域の中核資産と位置付け、リウマチ性疾患、希少自己抗体疾患、母体由来の同種抗体が関与する母体・胎児疾患の3領域で開発を進めています。
FDAはこれまで、wAIHA、胎児・新生児溶血性疾患、全身型重症筋無力症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、胎児・新生児同種免疫性血小板減少症でニポカリマブを希少疾病用医薬品に指定しました。
また、胎児・新生児溶血性疾患とシェーグレン病ではブレークスルーセラピー指定を受けています。今回の承認内容とENERGY試験の結果は、Johnson & Johnsonの公式発表で確認できます。
J&JのIMAAVY、温式自己免疫性溶血性貧血でFDA承認の要点
IMAAVYは、副腎皮質ステロイドによる治療中または治療歴のある12歳以上のwAIHA患者を対象に、米国初の疾患特異的治療薬として承認されました。
第2/3相ENERGY試験では、30mg/kgを4週間ごとに静脈内投与した群が持続的ヘモグロビン反応でプラセボ群を上回りました。投与開始1週時点のヘモグロビン上昇と、24週時点の疲労スコア改善も報告されています。
今回の承認はIMAAVYにとって2つ目のFDA承認です。J&Jは、ニポカリマブを複数の自己抗体疾患で引き続き開発する方針を示しています。
- J&JのIMAAVYが温式自己免疫性溶血性貧血でFDA承認を取得
- 米国で温式自己免疫性溶血性貧血に承認された初の治療薬
- 対象は副腎皮質ステロイドによる治療中または治療歴のある12歳以上の患者
- IMAAVYは病原性IgG自己抗体を減少させる抗FcRn抗体
- 承認は成人患者115人を対象とした第2/3相ENERGY試験に基づく
- 承認用量は30mg/kgを4週間ごとに静脈内投与
- 持続的ヘモグロビン反応の達成割合はプラセボ群の約3倍
- 投与開始1週時点でヘモグロビン値が平均1g/dL上昇
- 主な副作用は末梢性浮腫 下痢 発熱
- 全身型重症筋無力症に続く2つ目のFDA承認で自己抗体疾患への展開を拡大
【PR】海外むけのプライマリー調査に「Konovo」
新薬や開発化合物の市場性、競合製品との差別化を、医師・患者・支払者の声から検証しませんか?海外の医師やKOLをはじめとする医療関係者への定量・定性リサーチには、Konovoを活用できます。
調査のご相談・お見積もりは無料、日本語でお問い合わせいただけます。資料請求はこちらから
