米国保健福祉省(HHS)は2026年8月21日、連邦政府によるワクチン推奨の区分と共同臨床意思決定の運用について、国民から意見を募集すると発表しました。
連邦官報への掲載予定日は8月24日で、意見の提出期限は9月20日です。
今回の募集は、トランプ大統領が8月10日に署名した小児予防接種に関する大統領令を受けたものです。
現行のワクチン推奨を直ちに変更する手続きではなく、HHSと「より安全な小児用ワクチンに関するタスクフォース」が、今後の推奨制度を検討するための情報提供依頼となります。
- HHSが見直しを検討するワクチン推奨区分
- 共同臨床意思決定の利点と運用上の課題
- 接種時期や接種頻度を巡る検討項目
- 意見募集の期限と今後予定される動き
HHSはトランプ大統領令を受けて米国のワクチン推奨区分をどのように見直すのか

HHSは、現在使われている3つの推奨区分が、科学的根拠の確かさ、十分な情報に基づく選択、個人の事情、国民の信頼を適切に反映しているかを検討します。
意見募集の対象には、患者や保護者、医師、看護師、薬剤師、保健当局、研究者、保険者、製薬企業、専門団体などが含まれます。
すべての質問へ回答する必要はなく、裏付けとなるデータや具体例の提出が推奨されています。
現在のワクチン推奨は三つに分類
現行の連邦ワクチン推奨は、特定の年齢層の全員を対象とする定期接種、医学的・職業的・行動上のリスク因子を持つ人を対象とするリスクベースの接種、患者と医療従事者が個別に判断する共同臨床意思決定(SCDM)に分類されています。
定期接種とリスクベースの推奨では、禁忌などがない限り接種が基本となります。
一方、SCDMには一律の判断がなく、個人の特性、入手可能な科学的根拠、医療従事者の裁量、患者や保護者の価値観を踏まえて接種の可否を決めます。
条件付き推奨など新たな区分も検討
HHSは、現行の3区分を維持するかどうかに加え、新たな区分を導入する可能性についても意見を求めています。
具体例として示されたのは、推奨するものの乳児期には接種しない区分、一定の条件を付けた推奨、条件付きの共同臨床意思決定です。
さらに、接種可能な年齢幅をこれまでより明確に示す方法や、複数のワクチンを同じ受診日に接種するか、別々の受診日に分けるかについても検討対象となりました。
情報提供依頼には18項目の質問が設定され、推奨区分だけでなく、科学的根拠、接種時期、保険給付、情報提供、国民の信頼まで幅広く扱われています。
共同臨床意思決定では混乱と負担を検証
HHSは、SCDMが患者中心の個別判断を可能にする一方、患者や医療従事者の混乱、接種率の低下、診療時間の増加につながっていないかを検証します。
HHSが引用した2021年公表の医師調査では、回答者の約90~95%が、SCDMによる推奨の実施には定期接種より多くの時間が必要だと答えました。
また、SCDM対象ワクチンが保険給付の対象になることを理解していた医師は半数未満でした。
このためHHSは、SCDMが接種対象外や保険給付外を意味すると誤解されないための情報提供方法についても意見を募集します。
検討項目には、電子カルテへの表示、患者向け判断支援資料、医療従事者向け研修、記録方法、給付条件の説明が含まれました。
募集内容の詳細は、Federal Registerの情報提供依頼に掲載されています。
HHSとトランプ大統領によるワクチン政策見直しが製薬企業の実務に与える可能性
今回の意見募集は、トランプ政権が進める小児予防接種スケジュール見直しの一部です。ただし、大統領令、HHSの情報提供依頼、CDCの既存推奨は、それぞれ異なる位置付けにあります。
現段階では推奨変更の最終案は示されておらず、個別ワクチンの接種対象や保険給付も変更されていません。
小児の定期接種を11疾患に重点化
ホワイトハウスは8月10日の大統領令について、小児の定期接種を11疾患に重点化し、それ以外のワクチンを患者と医療従事者による個別判断の対象とする方針を示しました。
大統領令はHHS長官に対し、「より安全な小児用ワクチンに関するタスクフォース」を通じて、接種時期と順序、推奨ワクチンのリスクと便益の継続的評価などに関する計画を90日以内に提出するよう指示しています。
大統領令で示された方針は、Insights4 Pharmaの関連記事「米国トランプ大統領、小児ワクチン見直しとMMRワクチン分割を提言」で確認できます。
推奨区分変更に伴う給付への影響を検討
ワクチン推奨区分の変更は、医療保険による給付、Vaccines for Childrenプログラム、ワクチン被害補償制度、州法上の取り扱いに影響する可能性があります。
現行制度では、CDC長官が採用したSCDMによる推奨も、定期接種と同様に医療費負担適正化法に基づく自己負担なしの給付対象となります。
しかし、患者や医療従事者がこの点を十分に理解していないことが、HHSの文書で課題として示されました。
そこでHHSは、新しい区分を導入した場合でも、既存ワクチンへのアクセスと予測可能な給付をどのように維持するかについて意見を求めています。
製薬企業では、米国の薬事政策や市場アクセスを担当する職種を中心に、推奨区分と給付制度の関係が今後どのように示されるかが確認事項となります。
意見募集は推奨変更の決定ではない
2026年8月21日時点で、今回の意見募集に基づくワクチン推奨の変更は決定していません。
情報提供依頼は規則、規則案、ワクチン推奨のいずれにも該当しません。そのため、現在有効なワクチン推奨、保険給付の要件、関連プログラムの義務を変更するものではないとHHSは明記しています。
提出された意見に対する個別回答は行われません。HHSとタスクフォースが、推奨区分、科学的根拠の示し方、接種の時期と頻度、国民への情報提供を検討する際の資料として使用します。
HHSとトランプ大統領によるワクチン見直しの今後の日程
HHSは2026年9月20日まで意見を受け付けます。主な検討対象は、定期接種、リスクベースの接種、SCDMという現行区分の妥当性、新たな条件付き区分、接種時期と頻度、科学的根拠が限られる場合の表示方法、保険給付、情報提供です。
一方、トランプ大統領の指示に基づく計画は、大統領令への署名から90日以内に提示される予定となっています。現時点で発表されているのは意見募集と検討項目であり、個別ワクチンの推奨、接種対象、保険給付を変更する最終決定ではありません。
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