製薬・医療業界の転職で、「MRはオワコン」と言われることがありますが、実際に、MRは本当に終わった職業なのでしょうか?確かに、MR数の減少や製薬業界の変革により、「MRの役割は時代遅れなのではないか?」という声も聞かれます。
しかし、実情はそれほど単純ではありません。
MRの役割は進化を遂げ、求められるスキルや活動内容が一層高度化しています。特に、スペシャリティ領域では求人数が増加しており、転職市場でもMRの需要は依然として高い状況です。
この記事では、最新データに基づいて進化するMR像を解説し、製薬会社のMRとして今後のキャリアをどのように展開すべきかについて、深く掘り下げていきます。
なお、別記事「MR転職ガイド」では、MR転職の就難易度や年収、転勤の現実と失敗しないための必須知識をご紹介しているのであわせてご利用ください。
- MRがオワコンと言われる背景とその真相は?
- MR数の減少が示す業界の変化とその理由とは?
- スペシャリティ領域におけるMRの需要と求人数の現状
- 進化するMR像に対応するためのキャリア戦略や転職方法
MRはオワコン?その真相とは?
- オワコンとは?その意味と使い方
- MR数の減少が示す現状
- 新型コロナで進んだオンライン活用でMR活動の変化
- 製薬大手のMR削減の背景と専門性の高いMR活動重視へ
オワコンとは?その意味と使い方
「オワコン」とは、「終わったコンテンツ」の略語です。もともとはインターネット上で使われ始めたスラングです。
かつて人気を誇っていたものが、今ではその勢いを失い、時代遅れや無用と見なされるものを指します。具体的には、かつては大きな関心を集めていたアニメやゲーム、さらには職業や産業までもが対象となり、現在ではその価値が失われたと感じられるものに対して使われます。
例えば、スマホが市場で普及することで、スマホ以前に市場を席巻していたタイプの携帯電話、いわゆる「ガラケー」は、そぐわないものとして淘汰されました。
このような場合、ガラケーを指して、「ガラケーはオワコン」といったように使用されます。
ただし、この言葉は否定的な意味合いを含むため、使用する際には相手に対して配慮が必要です。特にビジネスや職業に関して使う場合には、感情的な反応を引き起こす可能性があるため、慎重な表現が求められます。
では、MRがオワコンと言われる真相は、どうなのでしょうか?
MR数の減少が示す現状
MRの数は、過去数年間で大幅に減少しています。2020年には日本のMR数が約5万3千人にまで減少し、2013年のピーク時から6年連続で減少傾向が続いています。
2024年の最新のミクスの調査によると、MR数は前年から1,784人減少し、総数は24,903人となりました。これは、前年比で6.7%の減少を示しています。MRの減少傾向は数年にわたって継続したトレンドです。
この減少の背景には、製薬業界全体の変化が影響していると言えるでしょう。
主な理由としては、医薬品市場の収縮と、それに伴う企業のコスト削減が挙げられます。また、デジタル技術の進化により、医薬品の情報提供がオンラインでも行われるようになったため、従来のMRが果たしていた役割が縮小されています。さらに、政府の医薬品価格引き下げ政策も、企業がMRの人員削減を進める一因となっています。
このような現状から、MRという職種は、かつてのような規模がなくなっており、MR数が長い間減少傾向が継続していることから、MRはオワコンではないのか?という表現を用いて、MRの減少を表していることが考えられます。
その役割自体が完全に消滅するわけではありません。むしろ、今後は少数精鋭のMRが求められる時代へとシフトしているのです。
新型コロナで進んだオンライン活用でMR活動の変化
新型コロナウイルスのパンデミックは、製薬業界に大きな変化をもたらしました。その一つが、MR(医薬情報担当者)の活動方法です。従来、MRは医療機関を訪問し、直接医師や薬剤師に対して製品情報を提供していましたが、コロナ禍により訪問が困難となりました。この状況に対応するため、多くの製薬会社はオンラインでの情報提供にシフトしました。
オンライン活用の進展により、MR活動は大きく変わりました。まず、医療従事者とのコミュニケーションがデジタルツールを介して行われるようになり、訪問回数が減少しました。しかし、これにより効率的に多くの医療従事者と接触できるようになり、結果として情報提供のスピードと範囲が拡大しました。
一方で、オンラインコミュニケーションには限界もあります。対面での細やかな対応が難しくなり、信頼関係を築くことが難しい場面もあるため、MRは新たなスキルとアプローチを求められています。特に、オンラインでのプレゼンテーション能力や、デジタルツールを活用したデータ分析力が重要視されるようになっています。
このように、新型コロナによって進んだオンライン活用は、MR活動に大きな変化をもたらしましたが、それは単なる制約ではなく、新たな可能性を生み出しています。
製薬大手のMR削減の背景と専門性の高いMR活動重視へ
製薬大手のMR数削減は、多くの人に「MRはオワコンではないか?」という印象を与えるかもしれません。しかし、実際にはこれらの削減は単なる人員整理ではなく、戦略的な再編成の一環として行われていることが明らかです。最新のニュースを例に挙げて、その背景を詳しく見ていきましょう。
アステラス製薬のケース
アステラス製薬では、MR数を800人から400人に半減させました。一見すると大規模な削減に思えますが、その背景には、生活習慣病領域から抗がん剤や細胞治療などのスペシャリティ領域へのシフトがあります。これにより、MRの役割が単なる製品の販売から、より専門的な知識を活かした情報提供や医師との連携に変化、新たな営業体制を再構築する中で、専門性の高い人材が求められていることが分かります。
塩野義製薬のケース
塩野義製薬でも、MR数を170人減らしましたが、その背景には感染症領域の成長と新規事業の確立があります。特に、感染症治療薬の分野での成長が期待されているため、社内リソースの再配置が行われ、早期退職者を募集する形でMR数を調整しています。このように、単なる削減ではなく、新たな事業へのリソース移行が目的となっています。
中外製薬のケース
中外製薬では、クリニック向け薬剤から専門病院向け製品へのシフトに伴い、MR数を150人減らしました。これも、スペシャリティケアに特化した製品に対応するための要因構成への転換が目的です。従来のMR像とは異なり、より高度な知識と経験が求められるため、数よりも質を重視した再編成が行われています。
このように、製薬大手のMR数削減は、単なる人員削減ではなく、企業戦略に基づいた専門性の高いMR活動へのシフトを意味しています。
特に、スペシャリティ領域においてはMRの需要が依然として高く、これからも進化するMR像が求められているのです。MRはオワコンではなく、むしろその役割が進化し続けていると言えるでしょう。
MRはオワコンなのか?
このように、多くの人が「MRはオワコン」と感じる背景には、製薬業界でのMR数の減少や、需給バランスの変化が影響しているからと考えられます。
確かに、大手製薬会社がMR数を削減したというニュースは、MR自体の役割も縮小しているという印象を強めています。しかし、これらの動きは単純にMRが不要になっているわけではなく、むしろMRの役割が進化していることを示しており、より専門性の高いMRが求められるようになっています。
このように、従来のMR像とは異なる新たなMRの役割が求められていることが言えます。
需給バランスの変化からMRはオワコンだというイメージが広がっていることも事実です。MR数の削減が続く中で、求人件数も減少していると考えられがちですが、実際のデータを見ると、その見方は誤りであることがわかります。
アンサーズニュースの最新の発表によると、2024年下半期においてMRの求人件数は増加傾向にあります。特に、がん治療や希少疾患などのスペシャリティ領域での大型募集が活発であり、MRの有効求人倍率は過去数年で最高となる見込みです。
このような売り手市場のMRは、今までの領域経験者を重視から、最近ではプライマリケア経験者にも採用の門戸を広げているとの分析もアンサーズニュースではしています。
これにより、転職を希望するMRにとっては新たにチャンスが生まれており、新たなキャリアパスが開かれている状況です。
このような需給バランスの変化から、MRの仕事がオワコンと見なされがちですが、実際には求人の増加や新たな機会が生まれており、MRの役割は進化しています。
また、デジタル技術の進化に伴い、MRの業務内容も進化しています。オンラインでの情報提供やリモートディテーリング(遠隔営業)など、新しい形式でのMR活動が増えており、これに対応できるスキルを持つMRは今後も重要な存在であり続けるでしょう。
結論として、MRの仕事は単なるオワコンではなく、その役割が進化し、より専門的なスキルと知識を求められるようになっていることが言えます。
MRオワコンではなく進化である時代に求められるMRの転職対策
- 進化するMR像に対応する経験と専門性を活かす転職
- MRの将来性を見据えたキャリア戦略
- MR転職で実績のある転職エージェントの活用
進化するMR像に対応する経験と専門性を活かす転職
従来のMR像は、医薬品の営業活動に重きを置き、医療機関への訪問回数や営業量で成果を追求するスタイルが一般的でした。
このモデルは、大量の医薬品を市場に送り込み、大量のMRが売上を確保することを目的として活動していました。
結果として、多くのMRが医師に対して同様の製品を売り込むため、製品間の差別化が難しく、営業の質よりも量が重視されていた時代が長く続きました。
一方、現代における進化したMR像は、単なる営業マンではなく、医療従事者のパートナーとして、専門的な知識と洞察力を活かし、医療現場で価値を提供する役割が求められています。特に、スペシャリティ領域においては、MRが提供する情報の質や、その情報を基にした治療提案が、患者の治療効果に直結することが多く、従来の営業型MRとは大きく異なる役割が期待されています。
がん治療や希少疾患に特化した医薬品においては、MRの需要が依然として高いことが示されています。
これらの分野では、医薬品の適正使用を促すための専門知識が不可欠であり、MRが医療従事者に対して的確な情報提供を行うことで、治療の質が向上し、患者の生活の質(QOL)の向上にも寄与しています。このような高い専門性を持つMRは、単なる情報提供者ではなく、医療の現場で重要な意思決定を支える役割を担っています。
この進化するMR像に対応するためには、従来の営業型MRとしてのスキルだけでなく、デジタルツールの活用や、最新の医療知識に基づいたコンサルティング能力が求められます。これにより、進化したMRは、医療従事者から信頼される存在となり、自らのキャリアを強固にすることが可能になります。
従来のMR像ではなく進化しているMR像を明確にすることが、今後のMRの転職対策になると言えます。進化するMR像に対応するには、経験と専門性を活かし、デジタルスキルが高い上にしっかりとしたコミュニケーション能力を備え、常にスキルをアップデートし続けることが、MRとしてキャリア成功への道を切り開く鍵となります。
MRの将来性を見据えたキャリア戦略
MRの将来性を考える上で、今後のキャリア戦略をしっかりと立てることが重要です。MRの需要は減少傾向にありますが、一方でスペシャリティ領域やデジタルマーケティングなど、新しい分野での活躍が期待されています。こうした分野での専門知識やスキルを身につけることが、これからのMRに求められる資質です。
キャリア戦略を立てる際には、自分の得意分野や興味のある領域を見極めることが大切です。例えば、オンコロジー(がん治療)や希少疾患などの専門領域に特化したスキルを磨くことで、希少性の高いMRとしての価値を高めることができます。また、デジタルツールの活用やリモートでの情報提供スキルを高めることも、今後のキャリアにおいて有利に働くでしょう。
将来性を見据えたキャリア戦略を立てることで、MRとしての市場価値を維持し、さらなるキャリアアップを目指すことが可能です。
MR転職で実績のある転職エージェントの活用
転職エージェントは、転職活動を成功させるための強力なサポートツールです。進化しているMRに対して、適切な転職エージェントの活用は非常に重要です。エージェントは業界特有の求人情報や、一般には公開されていないポジションを紹介してくれることが多く、自分の希望に合った職場を見つける手助けとなります。
エージェントは転職状況に加え、企業の内情やカルチャーについての情報も持っているため、求人票だけでは分からない重要な情報を得ることができます。例えば、特定の企業でのキャリアパスや、働きやすさといった点についてもアドバイスを受けることができます。
エージェントを活用する際は、まず自分の経験や専門性に加え、キャリアの希望や条件を明確に伝えることが大切です。経験や専門性の高いMRに特化した実績のあるエージェントなら、そのような要望と企業のニーズにマッチする最適な求人を提案してくれるでしょう。別記事、「MR専門のおすすめ転職エージェント」では、MRの転職で実績のある転職エージェントの情報を提供しています。
さらに、エージェントの多くは非公開求人を持っており、実績のあるエージェントを複数活用することで、このような求人へのアクセスを高めることができます。もちろん、エージェントの面接対策や履歴書の添削などのサービスも積極的に利用し、転職活動をスムーズに進めましょう。
このように、転職エージェントを賢く活用することで、進化するMRのキャリアを成功へと導くことができます。
MRはオワコンではなくMR像の進化のまとめ
- 「オワコン」とは「終わったコンテンツ」の略語である
- かつて人気があったが、現在では価値が低下したものを指す
- スマホ普及で「ガラケー」がオワコンとされた例がある
- MR数は過去数年間で大幅に減少している
- 2024年、MR数は前年比6.7%減少し、24,903人となった
- 製薬業界全体の変化がMR数減少に影響している
- 医薬品市場の縮小と企業のコスト削減が原因の一つである
- デジタル技術の進化でMRの役割が変わりつつある
- 新型コロナでオンライン活用が進み、MR活動が変化した
- MR数削減は単なる人員整理ではなく、戦略的再編成である
- アステラス製薬はスペシャリティ領域へシフトしMR数を削減した
- 塩野義製薬は新規事業確立のためMR数を減らした
- 中外製薬は専門病院向け製品へのシフトに伴いMR数を削減した
- MRはオワコンではなく、専門性の高い役割へ進化している
- 2024年のMR求人件数は増加傾向にあり、需給バランスが変化している