Vaderis Therapeuticsは2026年8月11日、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)を対象とするengasertib(VAD044)のグローバル第III相HEROIC試験を開始したと発表しました。
同時に、応募超過となったシリーズBで1億5,200万ドルを調達しています。
今回の発表により、開発段階は概念実証から検証的試験へ移りました。本記事では、HEROIC試験の設計、先行試験の有効性データ、資金調達の目的、競合するHHT治療薬の開発状況を確認します。
- HEROIC試験の対象と試験設計
- 先行試験で示された鼻出血の変化
- 1億5,200万ドルの資金使途
- HHT治療薬の競合開発状況
engasertib(VAD044)の開発動向

engasertibは、HHTの病態に関与するシグナル伝達を標的とした、1日1回投与の経口AKT1/2アロステリック阻害薬です。Vaderisによると、HHTに特化して開発された薬剤として初の第III相試験になります。
HEROIC試験の設計
HEROIC試験(NCT07743671)は、中等度から重度のHHT患者約240人を対象とする無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。北米、南米、欧州の施設で、engasertibを1日1回投与し、有効性と安全性を評価します。
HHTでは、反復する鼻出血、貧血、内臓の動静脈奇形などがみられます。Vaderisの発表時点で、engasertibはいずれの国・適応症でも承認されておらず、有効性と安全性も規制当局によって確立されていません。(出典:ClinicalTrials.gov「HEROIC試験」)
先行試験の鼻出血データ
HEROIC試験の根拠となった概念実証試験では、12週時点の鼻出血頻度がベースラインから30mg群で平均26.5%、40mg群で27.8%減少しました。プラセボ群の減少率は18.0%です。
鼻出血の平均持続時間は、30mg群で29.9%、40mg群で41.4%減少し、プラセボ群では23.8%でした。ただし、先行試験は小規模で、個々の患者の反応には大きな幅がありました。第III相試験では、より大きな集団で先行結果を検証します。
先行試験で用いられた30mg群と40mg群の数値は試験集団の平均値であり、個別の患者に同程度の変化が生じることを示すものではありません。
遺伝性出血性毛細血管拡張症治療候補engasertib(VAD044)の今後
Vaderisは第III相試験の開始と同時に、開発後期から承認申請を見据えた資金を確保しました。一方、HHT領域ではAKT1やALK1シグナルを標的とする複数の開発品が臨床段階へ進んでいます。
資金調達と承認申請
シリーズBはGoldman Sachs AlternativesのLife Sciences部門とTCGXが共同で主導しました。Omega Funds、EQT Life Sciences、Perceptive Advisors、Kalehua Capitalのほか、既存投資家のMedicxiとDroiaも参加しています。
Vaderisは、調達資金によってengasertibの承認申請と、米国で承認される可能性がある時点までの事業運営を賄う見通しを示しました。ただし、申請時期や試験完了時期、承認取得は確定していません。
(出典:Vaderis Therapeutics「シリーズB資金調達およびHEROIC試験開始」)
HHT標的治療薬の競合
Terremoto BiosciencesはAKT1阻害薬TER-4480を開発しており、2026年後半の臨床試験開始を予定しています。Atavistik Bioも、経口AKT1選択的アロステリック阻害薬ATV-1601の開発資金として、シリーズB追加ラウンドで4,000万ドルを調達しました。
Diagonal Therapeuticsは、ALK1シグナルの活性化と回復を目的とするクラスタリング・アゴニスト抗体DIAG723について、第I/II相試験で最初の患者への投与を開始しています。AKT阻害とは異なる作用設計です。
遺伝性出血性毛細血管拡張症のengasertib(VAD044)まとめ
- Vaderisは2026年8月11日にHEROIC試験の開始を発表
- 中等度から重度のHHT患者約240人を登録予定
- シリーズBで1億5,200万ドルを調達
- 今後は先行試験の有効性と安全性を第III相で検証
発表済みの主な動きは、第III相試験の開始と開発資金の確保です。今後はHEROIC試験の登録進捗と結果、承認申請に関するVaderisの追加発表が予定されます。
