第一三共は、2005年に第一製薬と三共が経営統合して誕生しました。当時、三共は高コレステロール血症治療薬「メバロチン」、第一製薬は「タリビット」「クラビット」という合成抗菌薬で知られていた業界大手同士の合併でした。
3000億円のピーク時の売上があった高血圧症治療薬「オルメサルタン」の特許切れ後は、その後、紆余曲折もあり業績は停滞しました。ここ数年は、9%の成長(「5年間の売上ランキング推移で見る日本の製薬会社を分析!成長のポイント4つ」)をしているものの業界4位にとどまっていました。2021年に、久しぶりに売上1兆円超えを達成したことは国内でのランキング以上に、第一三共が成長へギアチェンジできた象徴ともいえ、成長のための芽は確実に大きくなっています。
過去5年間支えてきた製品の中でも抗凝固薬「エドキサバン」は、21年には2056億円の売上をあげて1兆円の大台再達成に大きく貢献しています。2020年の売り上げは1,659億円(2021年には2000億以上達成)をあげています。また、同剤の特許が切れるのは2027年で、今後も成長を続けることが期待されています。
さらなる成長の起爆剤として期待されているのが、2013年から強化を始めたオンコロジー領域における抗HER2抗体薬物複合体(ADC)である「エンハーツ」「パトリツマブ デルクステカン」「ダトポタマブ デルクステカン」ら領域の開発品群です。これらは、治療パラダイムへの大きな変化が期待され大規模な医薬品への成長が見込まれています。
抗体薬物複合体(ADC)で、抗体と低分子化合物を適切なリンカーを介して結合させた薬剤です。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めます。
「エンハーツ」は21年には、808億円の売上を上げていますが、更に成長が見込まれます。同剤は、2019年、乳がん患者の15%を占めるHER2陽性乳がんに対する3次治療の薬剤として米国で承認、その後、HER2陽性胃がんでも承認を取得、HER2陽性乳がんの2次治療でも、標準治療であるロシュの「カドサイラ」に比べて病勢進行・死亡リスクを72%抑制することが示され、米国で適応拡大の承認を取得するなど、早期乳がんや肺がん、大腸がんなどで臨床試験が行われています。
最近では、エンハーツはHER2低発現乳がんでの承認されています。HER2は、乳がん、胃がん、肺がんや大腸がんを含む多くのがん細胞表面に発現するタンパク質で、乳がんの約半数の患者にHER2が低いレベルで発現しています。更に適応拡大で対象の患者層の増加も見込まれ、第一三共のオンコロジーの開発群は「エドキサバン」の特許切れのロスを十分に補う規模の大きな売上が期待されています。
第一三共: 会社概要
会社名(英語表記) | Daiichi Sankyo Company, Limited |
国 | 日本 |
本社住所 | 〒103-8426 東京都中央区日本橋本町3-5-1 |
本社サイト | https://www.daiichisankyo.com/ |
グローバルでの売上 | 1兆449 億円 |
日本法人社名 | 第一三共株式会社 |
日本法人本社住所 | 〒103-8426 東京都中央区日本橋本町3-5-1 |
設立 | 2005年9月28日 |
代表 | 奥澤 宏幸 |
資本金 | 50,000(百万円) |
上場 | 東証プライム |
第一三共:主力製品(売上順)
医薬品名 | 対象領域 | 売上高 |
エドキサバン(リクシアナ) | (抗凝固薬) | 1,659 |
オルメサルタン(オルメテック) | 高血圧 | 918 |
エンハーツ | 乳がん | 301 |
プラリア | 骨粗しょう症 | 346 |
テネリア | 糖尿病 | 242 |
タリージェ | 疼痛 | 206 |
出典:同社ホームページ(21年3月期)
第一三共:売上・従業員数・年収・採用情報
日本での売上 | 5799 億円 |
従業員数 | 5725 人 |
平均年収 | 1094.9 万円 |
平均年齢 | 44.8 歳 |
平均勤続年数 | 20 年 |
公式採用情報へのリンク | https://www.daiichisankyo.co.jp/recruit/ |
ランキング・カテゴリー情報
世界売上ランキング *1 | - |
日本企業売上ランキング *2 | 4 位 |
日本国内での売上ランキング *4 | 2位 |
日本国内年収ランキング *3 | 8位 |
参照
*1:世界売上高100億ドルを超える製薬会社25社の業績(2021年12月期、一部の日本企業は22年3月期、豪CSLは21年6月期)を集計した世界の製薬会社売上ランキング・出典は、製薬業界特化の転職サイト・エージェントの「アンサーズ」が運営するメディアアンサーズニュースの「【2022年版】製薬会社世界ランキング」
*2:東証プライム上場の主要製薬企業41社(製薬が本業でない企業が手がける医薬品事業を含む)の直近の決算を集計(22年3月期を中心)した製薬企業の売上ランキング。出典は、製薬業界特化の転職サイト・エージェントの「アンサーズ」が運営するメディアアンサーズニュースの「【2022年版】国内製薬会社ランキング」
*3: 有価証券報告書を公表した国内の製薬会社。新薬メーカー、後発品メーカーやOTCメーカー、バイオベンチャーら85社対象。出典は、製薬業界特化の転職サイト・エージェントの「アンサーズ」が運営するメディアアンサーズニュースの「【2022年版】製薬会社年収ランキング」
*4: 国内での売上ランキングは、IQVIA社公表の22年国内医療用医薬品市場データ(Disctributorレベル/薬価ベース)に基づいています。