このような方におすすめ
- 今後伸びる将来性のある製薬会社は?
- 2028年の医薬品の売上予測ランキングは?
- 将来性が期待されるイーライリリーとノボノルディスクはランキング入りするのか?
製薬業界の将来予測は、業界の関係者にとって極めて興味深い情報です。転職を検討している人にとって、将来性が高い製薬会社や見込みのある医薬品を見極めることは、次のキャリアを計画する上で不可欠な情報です。
この記事では、2028年までの世界の製薬会社と医薬品の売上予測をもとに、今後伸びるであろう製薬会社と注目すべき医薬品に焦点を当てます。
将来性が高い製薬会社やそのランキングに貢献する医薬品を探ります。
2028年の世界の製薬会社の売上ランキングトップ10
会社名 | 2028年ランキング | 2028年売上予測 | 2022年売上 | 2022年ランキング |
ロシュ | 1 | 650億ドル | 663.2億ドル | 2 |
メルク | 2 | 640億ドル | 592.8億ドル | 3 |
アッヴィ | 3 | 630億ドル | 580.5億ドル | 4 |
J&J(医薬) | 4 | 600億ドル | 525.6億ドル | 5 |
ファイザー | 5 | 590億ドル | 1,003.3億ドル | 1 |
ノバルティス | 6 | 580億ドル | 505.5億ドル | 6 |
アストラゼネカ | 7 | 550億ドル | 443.5億ドル | 9 |
サノフィ | 8 | 540億ドル | 453.5億ドル | 8 |
ノボノルディスク | 9 | 500億ドル | 251.3億ドル | 16 |
イーライリリー | 10 | 480億ドル | 285.4億ドル | 12 |
ロシュ、メルク、アッヴィのトップ3の差はごくわずか
コンセンサス予測に基づいた2023年の予測では、ロシュが僅差ながら2028年のトップと予測されています。
ロシュの抗がん剤テセントリク、多発性硬化症治療薬オクレブス、眼科の治療薬バビースモをはじめ次世代モノクローナル抗体の開発状況も含め、高く評価されています。
しかしながら、ロシュに続くメルク、アッヴィらの予測される売上は、630億ドルから650億ドルと20億ドルしか差がありません。
予測をした調査会社も、どの会社が5年後にトップについても全く不思議ではないと述べています。
例えば、アッヴィのヒュミラですが、ジェネリック医薬品の浸透度の具合で大きく売上も上下します。このように順位に影響する、予測を難しくする要素が多くあります。
いずれにしてもこの3社の中の1社がトップをとるものと予測しています。
新たにトップ10入りする製薬会社が2社
- 新たにトップ10入りする会社:ノボ・ノルディスク、イーライリリー
- トップ10から去る会社:ブリストル・マイヤーズスクイブ、GSK
ノボとリリーの伸びと将来性が期待されています。2社が新たにトップ10入りすることが予測されています。22年時点の売上ランキング、ノボは16位、リリーは12位から順位を上げます。
この躍進の原動力となる医薬品が、「持続性GLP-1受容体作動薬」で2型糖尿病と肥満薬です。
ノボノルディスクは「オゼンピック」「リベルサス」「ウゴービ」(いずれも同じ成分のセマグルチド)、イーライリリーは「マンジャロ」。どちらも2028年の売上予測が150億ドル以上の売上が予測され、トップ10入りを支えます。
ファイザーは、コロナ特需からコロナクリフへの対策
2022年に1000億ドル強の売上でランキングトップのファイザーは今回の予測では5位まで順位を下げます。
1000億ドルの記録的な売上も半分以上の売上がコロナ関連の医薬品です。2028年にはコロナの特需は過ぎ去っているものと予想されます。
ファイザーとしては、コロナクリフへの対策を打って入るものの、特需で得たランキングトップの地位は維持は出来ないようです。
なお、21年にコロナ特需でトップ20にまで新たに食い込んだモデルナ社、ビオンテック社ですが、今後数年は順位を上げるどころかコロナクリフへの対応に追われます。
2028年の世界の医薬品売上予測ランキングトップ10
医薬品名 | 順位 | 28年売上予測 | 製薬会社 | 疾患・領域 | 22年順位 | 22年売上 |
キイトルーダ | 1 | 309 | メルク | オンコロジー | 3 | 238 |
デュピクセント | 2 | 190 | サノフィ | アトピー性皮膚炎 | 10 | 100 |
オゼンピック | 3 | 180 | ノボノルディスク | 2型糖尿病 | ランク外 | 87 |
マンジャロ | 4 | 170 | リリー | 2型糖尿病 | ランク外 | – |
ダラザレックス | 5 | 165 | J&J | 多発性骨髄腫 | ランク外 | 79 |
オプジーボ | 6 | 157 | BMS 小野薬品 | オンコロジー | ランク外 | 99 |
スキリージ | 7 | 150 | アッヴィ | 乾癬 | ランク外 | 13 |
ビクテグラビル | 8 | 120 | ギリアド・サイエンシズ | HIV | 8 | 134 |
ガーダシル | 9 | 100 | メルク・CSL | HPVワクチン | ランク外 | 60 |
トライカフタ | 10 | 95 | バーテックス | 嚢胞性線維症治療薬 | ランク外 | 60 |
GLP-1受容体作動薬セマグルチド | 参考値 | 330 | ノボノルディスク | 2型糖尿病、肥満 | オゼンピック リベルサス ウゴービ | 同成分で3剤をまとめた場合 |
2028年の最も売れている医薬品トップはキイトルーダ
2028年、キイトルーダの売上予測が、300億ドルの大台に達するとEvaluate Pharmaは予想しています。売上高200億ドルを達成する治療薬すら他にないダントツのトップです。
同じがん免疫療法のオプジーボの売上予測は157億ドルと2028年もランキング6位ですが、売上規模ではキイトルーダに大きく引き離されます。
さらに、このキイトルーダの売上には、皮下注製剤は含まれていません。皮下注製剤は現在フェーズ3試験中で、承認された場合には、2028年の売上高は24億ドル増えると予測されています。
ちなみに、2022年の世界の医薬品の売上では、キイトルーダは3位にランクインしています。
2022年の世界の医薬品売上トップ3
22年ランク | 医薬品名 | 会社 | 売上高 |
1位 | ヒュミラ | アッヴィ | 349億ドル |
2位 | エリキュース | BMS/ファイザー | 240億ドル |
3位 | キイトルーダ | メルク | 239億ドル |
肥満薬「GLP-1製剤」の躍進
2023年時点でも大きな躍進を遂げているGLP-1製剤がさらに市場での存在感を増します。
GLP-1製剤は、2型糖尿病と肥満の治療薬ですでに承認されています。
イーライリリー「マンジャロ」の売上予測も170億ドルと、今後も急進します。
ノボノルディスクのGLP-1製剤3剤「オゼンピック」「リベルサス」「ウゴービ」(同じ成分のセマグルチド)の売上予測は合計で330億ドルの売上が予想されています。この金額はキイトルーダを凌ぎます。
HPVワクチンの後進国での需要への対応
2006年に子宮頸がんワクチンとして承認されたメルクのガーダシルが2028年に9位の売上が見込まれています。
ガーダシルは20年以上市場で接種されているHPVワクチンであるが、最近は、途上国でのHPVワクチンへの需要の高まりから、売上が増加しています。
2028年の製薬業界売上予測のまとめ
海外の市場調査のデータやランキング情報をもとに2028年の世界の製薬市場の姿をみてみました。
2028年の医薬品の売上予測のランキング、10位のトライカフタが95億ドルと現在の交換レート(1ドル約150円)で、1兆円を大きく超えます。
2022年時点でもすでにそうですが、世界の医薬品の売上ランキング、100億ドルを超える医薬品が数多くあります。もはや、一つの医薬品で100億ドルを超えないと世界のトップ10ランキングには食い込めない市場になってきています。
2028年には、ロシュ、アッヴィ、メルクが上位3社を占めると予想されます。それぞれがはやり大型の医薬品を持ち、現時点の予測の差が20億ドル内という僅差、現時点ではロシュが1位ですが、入れ替わりは十分にありそうです。今後5年間の動向も含めて興味が湧きます。
新たにランクインする2社にも注目です。
9位と10位にランクインするノボとイーライリリーですが、今後5年間で大きく売上を伸ばす肥満治療薬が牽引します。特許切れもまだ先ですので、まだまだ成長が見込まれます。
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