リリーのアルツハイマー病薬ドナネマブ、アミロイド除去アデュヘルム上回る

イーライリリー社が開発中のドナネマブの第3相TRAILBLAZER-ALZ 4試験が、初期症状のアルツハイマー病患者において、6カ月間の治療で脳のアミロイドプラークレベルをベースラインに対して65.2%減少させたと発表しました。一方でバイオジェン社/エーザイ社のアデュヘルムの同名の試験である第3相TRAILBLAZER-ALZ 4試験では、アミロイドプラークレベルの減少は17%にとどまったということです。

2021年にアデュヘルムは、脳内のアミロイドプラークを減少させるという理由でFDAより「臨床的有用性をもたらす可能性が高い」として迅速承認を取得しましたが、物議を醸していました。

アデュヘルムはENGAGE試験で59%、EMERGE試験で71%のアミロイドプラークを治療18カ月時点で減少させたものの、バイオジェン社は本剤の使用が伸び悩む中、商業的な模索を断念し、代わりに抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブに注力し、最近第3相Clarity AD試験で良好な結果を得ています。

Clarity AD試験の詳細な結果は、アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)で発表され、レカネマブで治療した患者の68%が18ヵ月後にアミロイド斑が消失し、認知・機能の低下も27%遅くなっていることが明らかになりました。イーライリリー社の神経科学部門を率いるAnne White氏は「この分野の研究者は、アルツハイマー病の進行を遅らせるためにはアミロイドの強力な低下が必要であることを理解しています。ですからアミロイドの低下が思わしくなければ、試験結果が良いとは言えないでしょう」と述べました。

すべてのエンドポイントを達成
イーライリリー社の第3相TRAILBLAZER-ALZ 4試験では、50歳から85歳の初期症状のあるアルツハイマー病患者148名が登録され、ドナネマブまたはアデュヘルムを4週間毎に最大18ヶ月間、静脈内投与する群に無作為に割り付けられました。イーライリリー社は本試験が6カ月間の主要評価項目および副次的評価項目をすべて満たしたと発表しています。

CTADで発表された結果では、共同主要評価項目である脳アミロイドプラークのクリアランス率は、6カ月時点でドナネマブ投与群では37.9%、アデュヘルム投与群では1.6%であったということです。また、タウ蓄積が中程度のサブ集団では、ドナネマブ投与群の38.5%が脳内アミロイドクリアランスに到達したのに対し、アデュヘルム投与群では3.8%であったということです。

アミロイド関連画像異常(ARIA)とアミロイドクリアランスの相関はない

イーライリリー社は、探索的アウトカムとして、ドナネマブはベースラインと比較して6ヵ月後の血漿中のリン酸化タウ217を有意に減少させた一方、アデュヘルムでは減少しなかったとしています。同社の疼痛・神経変性研究開発グループ副社長であるMark Mintun氏は「この試験の目的は、アミロイドプラークの減少における潜在的な両薬剤の差異を明らかにすることです」と説明しています。

さらに、アミロイド関連画像異常(ARIA)の発症率は、ドナネマブ群で25.4%、アデュヘルム群で26.1%、有症状率はそれぞれ2.8%と4.3%であることが示されました。「重要なことは、本試験が同じ患者集団において、同一のARIA評価方法を用いてARIA発生率を比べた初の試験であり、プラーククリアランスの割合とARIA発生率を切り離すことができることを示したことです」とMintun氏は述べています。TRAILBLAZER-ALZ 4は現在進行中で、12カ月および18カ月の二次解析が行われる予定です。

本年初め、FDAはイーライリリー社のドナネマブについて迅速承認申請を受理し、優先審査対象に指定しています。ドナネマブはN3pGと呼ばれるβアミロイドプラークの修飾型を標的とする抗体で、FDAの承認申請は第2相TRAILBLAZER-ALZ試験の結果に基づいています。

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Insights4 Pharma編集責任者&情報コンシェルジュ 前田静吾

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