関節リウマチの治療薬市場は、2030年代に向けてどの程度成長するのでしょうか。
2026年に発行・更新された市場調査レポートでは、世界の関節リウマチ治療薬市場は引き続き拡大すると予測されています。
Grand View Researchは2026年の世界市場を283億ドル、Fortune Business Insightsは367.6億ドルと推計しています。また、DelveInsightは米国、欧州5カ国、日本の主要7市場について、2036年まで年平均約2%の成長を見込んでいます。
市場拡大の背景には、関節リウマチ患者の疾病負担、既存治療では十分に対応できないアンメットニーズ、新たな治療薬の開発があります。
一方、バイオシミラーの普及は、患者の治療アクセスを改善する可能性がある反面、既存薬の売上や市場全体の成長率に影響を及ぼします。
本記事では、2026年の市場調査レポートを中心に、患者数、アンメットニーズ、現在の市場規模、将来予測、期待される新薬という5つの観点から、関節リウマチ市場の最新動向を整理します。
関節リウマチ市場の現状|患者数・アンメットニーズ・市場規模


関節リウマチの患者数|世界約1,800万人、日本約70万~80万人
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、免疫系の異常によって関節に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患です。
患者数は世界で約1,800万人と推計されています。世界保健機関(WHO)の公開データによると、2019年時点で約1,800万人が関節リウマチに罹患していました。
日本については、国立長寿医療研究センターが2026年5月に公開した資料で、患者数を約70万~80万人と紹介しています。
ただし、これらは2026年の実測患者数ではなく、それぞれ異なる時点・方法による疫学推計です。
関節リウマチは女性に多く、加齢に伴う患者構成の変化も重要な特徴です。
DelveInsightが2026年9月6日に公開した市場分析では、患者の約70%が女性、約55%が55歳を超えていると紹介されています。また、米国の成人患者数を約130万人と推計しています。
日本でも高齢発症の関節リウマチが注目されています。
こうした患者構成の変化は、治療薬市場にも影響します。高齢患者では併存疾患や感染症リスクを考慮した治療選択が必要となり、有効性だけでなく安全性や投与のしやすさも重要になるためです。
主な情報ソース
- DelveInsight:Rheumatoid Arthritis Market、2026年9月6日公開
- WHO:Musculoskeletal Health
- 国立長寿医療研究センター:高齢化時代における関節リウマチ診療、2026年5月1日
アンメットニーズ|寛解維持と治療抵抗性が課題
関節リウマチでは、メトトレキサートなどの従来型抗リウマチ薬に加え、生物学的製剤やJAK阻害薬など、多くの治療選択肢が利用できるようになりました。
しかし、すべての患者が十分な治療効果を得られているわけではありません。
2026年1月に学術誌『Pharmaceuticals』に掲載されたレビューでは、治療法が進歩した現在でも、治療抵抗性の関節リウマチや高齢発症例などへの対応が課題とされています。
また、2026年に発表された『Nature Reviews Rheumatology』のレビューでも、持続的な寛解を達成できる患者は一部に限られ、診断の遅れや治療選択の精度が課題であると指摘されています。
現在の主なアンメットニーズは、次のように整理できます。
- 治療抵抗性:既存の生物学的製剤やJAK阻害薬で十分な効果が得られない患者への対応
- 持続的な寛解:病勢を長期にわたり抑制し、関節破壊を防ぐ治療
- 安全性:感染症リスクや併存疾患を踏まえた長期的な薬剤選択
- 個別化医療:治療開始前に薬剤への反応を予測できるバイオマーカーの確立
- 治療アクセス:薬剤費や医療制度による治療選択の制約
こうした課題は、新たな作用機序を持つ治療薬や、患者ごとに適切な薬剤を選択するための技術への需要を生み出しています。
市場調査会社Clarivateも、2026年版の「TNF阻害薬不応性関節リウマチ」を対象とするアンメットニーズ調査を公開しています。
同調査では、米国60人、欧州30人のリウマチ専門医への調査を通じて、既存治療の評価、新薬に求められる特性、治療上の課題などを分析しています。
製薬企業にとって、アンメットニーズの把握は新薬の開発目標や差別化戦略を検討する際の重要な出発点となります。
主な情報ソース
- Pharmaceuticals:Frontiers in Rheumatoid Arthritis、2026年1月27日
- Nature Reviews Rheumatology:Diagnostic, Prognostic and Therapeutic Biomarkers、2026年
- Clarivate:TNFi-Refractory Rheumatoid Arthritis Unmet Need、2026年版
関節リウマチ治療薬の市場規模|2026年の最新推計
2026年に発行・更新された市場調査レポートによると、世界の関節リウマチ治療薬市場は数百億ドル規模に達しています。
ただし、調査会社によって対象薬剤や市場の定義が異なるため、市場規模の推計には差があります。
| 調査会社 | 2026年世界市場規模 | 発行・更新 |
| Grand View Research | 283億ドル | 2026年8月 |
| Fortune Business Insights | 367.6億ドル | 2026年10月12日 |
Grand View Researchは2025年の市場規模を269億ドルと推計し、2026年には283億ドルに拡大すると予測しています。
2025年の市場ではバイオ医薬品が売上の88.5%を占め、北米が世界市場の51.8%を占めています。
一方、Fortune Business Insightsは2026年の世界市場を367.6億ドルと推計し、生物学的製剤の構成比を84.45%と予測しています。
同社は日本の関節リウマチ治療薬市場についても、2026年に18億ドルに達すると見込んでいます。
両社の推計は一致していませんが、生物学的製剤が関節リウマチ治療薬市場の売上の大部分を占めるという点は共通しています。
また、生物学的製剤の高い市場構成比は、今後のバイオシミラーの普及によって競争環境や売上が変わる可能性を示しています。
製薬企業が市場を評価する際には、患者数だけでなく、薬剤クラス別の市場規模や価格動向、既存製品の競争状況を確認することが重要です。
主な情報ソース
- Grand View Research:Rheumatoid Arthritis Therapeutics Market、2026年8月
- Fortune Business Insights:Rheumatoid Arthritis Therapeutics Market、2026年10月12日更新
関節リウマチ市場の将来予測|2030年代の成長と期待される新薬


将来市場|2033~2036年までの成長予測
2026年に発行された主要市場調査レポートでは、関節リウマチ治療薬市場は2030年代に向けて引き続き成長すると予測されています。
ただし、今後の成長率については調査会社によって見方が異なります。
| 調査会社 | 基準市場規模 | 将来予測 | 年平均成長率 |
| Grand View Research | 2026年:283億ドル | 2033年:452億ドル | 6.9% |
| Fortune Business Insights | 2026年:367.6億ドル | 2034年:466.6億ドル | 3.53% |
| DelveInsight(主要7市場) | 2025年:約310億ドル | 2036年まで成長予測 | 約2% |
Grand View Researchは2026年から2033年まで年平均6.9%の成長を予測しています。
これに対してFortune Business Insightsは、2034年までの年平均成長率を3.53%と見込んでいます。
また、DelveInsightが2026年9月に公表した市場分析では、米国、欧州5カ国、日本の主要7市場の2025年市場規模を約310億ドルとし、2036年まで年平均約2%で成長するとしています。
DelveInsightの予測は世界全体ではなく主要7市場を対象としているため、他の2社の予測と同一条件では比較できません。
これらの市場予測を考えるうえで重要なのが、バイオシミラーの普及です。
生物学的製剤の先行品は特許満了後にバイオシミラーとの競争に直面し、価格や市場シェアが変化します。
一方、新たな作用機序を持つ治療薬の上市や、既存薬で十分な効果が得られない患者への治療拡大は、市場成長を支える要因となります。
つまり、今後の市場では、新薬による売上拡大と、既存薬のバイオシミラー競争による売上への圧力が同時に進むと考えられます。
今後の市場成長を評価するには、市場全体の予測に加えて、治療薬別の売上、患者シェア、競争状況を分析することが必要です。
主な情報ソース
- Grand View Research:2026–2033 Market Forecast
- Fortune Business Insights:2026–2034 Market Forecast
- DelveInsight:Rheumatoid Arthritis Market Outlook 2026–2036
期待される新薬|新規作用機序と開発パイプライン
関節リウマチの新薬開発では、既存治療で十分な効果を得られない患者への対応が重要なテーマとなっています。
2026年に公表されたDelveInsightの市場分析では、既存の生物学的製剤やJAK阻害薬に加え、複数の新規作用機序を持つ開発品が取り上げられています。
主な開発品は以下の通りです。
| 開発品 | 開発企業 | 注目点 |
| TAS5315 | 大鵬薬品工業 | BTK阻害による新しい治療選択肢 |
| AZD1163 | AstraZeneca | 新規の免疫・炎症経路を標的とする開発プログラム |
| AZD6912 | AstraZeneca | 既存治療との差別化を目指す初期開発品 |
| Ocadusertib | Eli Lilly | 新たな治療選択肢として開発中 |
| R-2487 | Rise Therapeutics | 免疫調節を狙った開発プログラム |
これらは2026年版の市場分析で紹介されている開発品であり、すべてが承認に近い段階にあるわけではありません。
DelveInsightが公表した情報では、TAS5315はメトトレキサートに十分反応しない患者を対象に、日本で第II相試験が進められていると紹介されています。
また、AstraZenecaのAZD1163とAZD6912については、2025年の開発資料に基づく第II相および第I相の情報が掲載されています。
開発中の新薬が市場に与える影響は、承認の可否だけでは決まりません。
既存の生物学的製剤やJAK阻害薬と比較した有効性、安全性、投与方法、価格、保険償還などが市場浸透を左右します。
特に治療抵抗性の患者に対して有効性や安全性で明確な利点を示すことができれば、新たな市場機会につながる可能性があります。
今後は、新規作用機序の治療薬がどの患者層や治療ラインに導入されるかが、関節リウマチ治療薬市場の重要な注目点となります。
主な情報ソース
