武田薬品工業

2019年1月、6兆円を投じてアイルランド・シャイアーを買収した武田薬品工業。売上高は3兆円を突破し、世界トップ10入りを果たしました。一方、時価総額では中外製薬や第一三共に抜かれ、株式市場からの評価は冴えません。規模拡大を創薬力の強化につなげられるか、買収の真価が問われています。

基本情報
企業名 武田薬品工業株式会社
設立日 1925年1月29日
本社住所 〒540-8645 大阪市中央区道修町4−1−1
電話番号 06−6204−2111
株価情報
関連リンク
ウエブサイト https://www.takeda.com/jp/
ニュースリンク 日本語
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出所:finviz

シャイアー買収で世界トップ10入りも…問われる創薬力

2019年1月、6兆円を投じてアイルランド・シャイアーを買収した武田薬品工業。売上高は3兆円を突破し、世界トップ10入りを果たしました。一方、時価総額では中外製薬や第一三共に抜かれ、株式市場からの評価は冴えません。規模拡大を創薬力の強化につなげられるか、買収の真価が問われています。

国内企業初の世界トップ10入り

「われわれは日本ではかなう者がいないスケールになっている。こうした変革は当社にとっても初めてだったが、そうしたことができるということを示せたのを大変誇りに思っている」。5月に開かれた決算カンファレンスコールで、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長はこう語りました。

武田の19年度の連結業績は、売上高3兆2912億円(前年度比56.9%増)、営業利益1004億円(57.8%減)。シャイアー買収がはじめて通年で寄与し、日本の製薬企業として初めて世界トップ10入りするメガファーマとなりました。売上高では国内2位のアステラス製薬に2.5倍の差をつけた一方、買収費用がかさんだ影響で利益は大きく減少。20年度は売上高3兆2500億円(1.3%減)、営業利益3950億円(293.4%増)を見込んでいます。

そもそもシャイアーの買収の狙いは、▽海外販売の拡大▽希少疾患領域・血漿分画製剤への進出▽研究開発体制の強化――などでした。買収によって武田の海外売上高は大きく拡大し、19年度は前年度比76.8%増の2兆6984億円に達しました。海外売上高比率は前年度から9.2ポイントアップして82.0%に。米国が全体の約半分を占める一方、国内は18.0%と2割を切りました。20年度は海外の比率がさらに大きくなり、国内は1割を下回る見通しだといいます。

【武田薬品工業の地域別の売上高】 <2018年度>(海外売上高比率:72.8%) 国内27.2%/米国39.5%/欧・カナダ19.3%/成長新興国/13.9% <2019年度>(海外売上高比率:82.0%) 国内18.0%/米国48.5%/欧・カナダ19.6%/成長新興国13.9% |※武田薬品工業の決算資料をもとに作成/成長新興国はロシア・中南米・アジアなど

買収で獲得した希少疾患領域と血漿分画製剤領域の売上高は、それぞれ6348億円、3942億円。合わせて1兆円を稼ぎ出しており、従来の「がん」「消化器」「精神疾患」に続く柱となりました。遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「TAKHZYRO」は米国で予防治療としての使用が拡大して683億円を販売。血友病A治療薬「アディノベイト」は販売国が広がり、587億円を売り上げました。

【武田薬品工業の領域別の売上高】(領域名/19年度売上高(億円)/売上高に占める割合(%)/20年度見込み(億円)/前年度比(%)): がん/4,210/5.4/12.8/4,180 消化器系/6,979/29.4/21.2/― 精神神経/4,385/183.5/13.3/4,590 希少疾患/6,348/390.6/19.3/― 血漿分画製剤/3,942/327.1/12.0/― その他/7,047/▲/9.8/21.4/― 合計/32,912/56.9/100.0/32,500 |※武田薬品工業の決算資料をもとに作成。―/はいずれも数値では未公表。

創薬力向上は道半ば

一方、これから問われるのが創薬力です。武田は24年度までに承認の可能性がある12の新薬候補を「ウェーブ1」と呼び、ピーク時の売上高を合わせて100億ドル超と見積もりますが、この中で武田が創製したのはドラベ症候群治療薬とナルコレプシー治療薬の2品目にとどまります。ウェーブ1の品目では、好酸球性食道炎治療薬「TAK-721」や非小細胞肺がん治療薬「TAK-788」など4品目を20年度中に申請する予定ですが、いずれも買収や導入で獲得したものです。

【2024年度までの承認を目指している12製品】(2020年5月時点)(開発コード/適応症/目標時期): <がん> TAK-788/exon20挿入変異を有する非諸細胞肺がん(セカンドライン以降)/21年度 |TAK-788/exon20挿入変異を有する非小細胞肺がん(フロントライン)/23年度 |TAK-924/高リスク骨髄異型成症候群など/22年度 |TAK-924/移植非適応の急性骨髄性白血病/24年度 |TAK-007/再発・難治性のB細胞性悪性腫瘍/23年度 <消化器> TAK-721/好酸球性食道炎/20年度 <精神神経> TAK-935★/ドラベ症候群など/23年度 |Orexin2R-ag★/ナルコレプシー/24年度 <希少疾患> TAK-620/サイトメガロウイルス感染症/21年度 |TAK-609/ハンター症候群/21年度 |TAK-611/異染性白質ジストロフィー/23年度 |TAK-755/先天性血栓性血小板減少性紫斑病/23年度 <ワクチン> TAK-003/デングウイルスによるデング熱の予防/21年度 |※武田の発表資料をもとに作成。★が武田の創製品。

武田は長らく自社から新薬を生み出せない状況が続いています。ウェバー社長は15年の社長就任以降、研究開発の分野を絞り込み、拠点を再編するなどの改革を進めてきました。シャイアー買収によって研究開発費は5000億円規模になり、研究開発の体制は整いつつあります。真価が問われるのはこれからです。

進むノンコア事業の売却

武田はシャイアー買収によって抱えた負債を削減するため、最大100億ドル規模の資産売却を進めています。これまでに、欧州やアジア、南米などでノンコア事業を売却し、旧東京本社ビルや大阪本社ビルも売り払いました。買収にはシャイアーの収益力を取り込む狙いもありましたが、営業利益率はわずか3.1%にとどまりました。利益を押し下げたのは、買収に伴う統合費用1354億円と、4554億円の「製品に係る無形資産償却費及び減損損失」。統合費用は一時的なもので、20年度は営業利益率が12.2%まで回復する見込みですが、償却費と減損損失は20年度以降も続きます。

武田は海外の製薬企業とともに新型コロナウイルス感染症に対する免疫グロブリン製剤の開発に乗り出しましたが、これはシャイアー買収で血漿分画製剤を強化できたからこそ。メガファーマにふさわしい成果を示すことができるのか。これからが正念場です。

武田薬品工業の売上高と営業利益の推移

武田薬品工業は、国内最大手の製薬企業。18年にアイルランドの製薬企業・シャイアーを買収したことで、重点領域は「がん」「消化器」「精神疾患」「希少疾患」「血漿分画製剤」の5つとなりました。19年度の業績は、売上高が3兆2912億円(前年度比56.9%増)、営業利益が1004億円(前年度比57.8%減)の増収減益。シャイアー買収で獲得した製品が貢献し、売上高で世界トップ10入りを果たしています。

【武田薬品工業の業績推移】(売上高/営業利益): 16年度/17321/1559 |17年度/17705/2418 |18年度/20972/2376 |19年度/32912/1004 |20年度予想/32500/3950 |※武田薬品工業の決算資料をもとに作成

武田薬品工業の主要製品の製品別売上高

主要製品の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」は、米欧を中心にシェアが拡大して前年度比29.0%増の3472億円を売り上げました。シャイアー買収で獲得した製品のなかでは、遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「TAKHZYRO」、血友病A治療薬「アディノベイト」が特に売り上げを伸ばしました。TAKHZYROは前年度比601.8%増の683億円、アディノベイトは前年度比446.3%増の587億円を売り上げています。

【武田薬品工業の製品別売上高】(単位:億円、%)(製品名/19年度売上高/前年度比/20年度(予想)/前年度比): <消化器系疾患> エンティビオ/3,472/29.0/4,300/23.8 デクスラント/628/▲9.2/540/▲14.0 パントプラゾール/495/▲19.7/390/▲21.2 タケキャブ/727/24.8/820/12.8 Gattex/Revestive/618/384.7/660/6.8 ペンタサ/256/442.9/230/▲10.1 リアルダ/Mezavant/234/609.4/180/▲23.1 アミティーザ/281/▲14.7/230/▲18.3 Resolor/Motegrity/66/830.4/80/21.9 <希少代謝性疾患>/ エラプレース/679/350.3/680/0.1 リプレガル/513/348.1/510/▲0.5 ビプリブ/380/337.5/380/▲0.0 Natpara/136/92.2/40/▲70.7 <希少血液疾患> アドベイト/1,579/391.8/1,840/▲15.0 アディノベイト/587/446.3/ ファイバ/515/434.7/360/▲30.1 Hemofil/Immunate/Immunine/223/304.5/200/▲10.5 <遺伝性血管浮腫> フィラジル/327/409.1/210/▲35.7 Takhzyro/683/601.8/―/― Kalbitor/45/289.2/40/▲12.0 Cinryze/243/684.4/180/▲26.1 <血漿分画由来の免疫疾患> 免疫グロブリン/2,987/306.6/―/― アルブミン/672/446.5/―/― <がん> ベルケイド/1,183/▲7.5/920/▲22.2 リュープロレリン/1,090/▲0.9/1,060/▲2.8 ニンラーロ/776/24.7/850/9.6 アドセトリス/527/22.8/600/13.9 アイクルシグ/318/10.8/340/6.9 アルンブリグ/72/39.2/110/52.0 ベクティビックス/225/10.1/230/2.0 <ニューロサイエンス> バイバンス/ビバンセ/2,741/455.3/2,900/5.8 トリンテリックス/707/22.8/820/16.0 Adderall XR/243/349.7/230/▲5.4 ロゼレム/145/▲24.3/120/▲17.1 レミニール/173/4.1/80/▲53.9 インチュニブ/146/990.6/190/29.9 <その他> アジルバ/767/8.5/780/1.6 ネシーナ/580/5.8/570/▲1.7 ユーロリック/169/▲66.9/30/▲82.2 コルクリス/225/▲25.1/140/▲37.8 エンブレル/293/▲16.9/―/― ロトリガ/318/2.9/300/▲5.5 |※武田薬品工業の決算資料をもとに作成

武田薬品工業のパイプライン

武田薬品工業の重点領域は、「がん」「消化器」「精神疾患」「希少疾患」「血漿分画製剤」の5つ。シャイアーを買収して血漿分画製剤を強化できたことで、新型コロナウイルス感染症に対する免疫グロブリン製剤の開発にも乗り出しています。

【武田薬品工業のパイプライン】(フェーズ2以降、2020年5月13日現在): <がん> (フェーズ2) |ブリガチニブ【グローバル】ALK陽性非小細胞肺がん(第2世代TKI既投与) |ニンラーロ【米欧】再発・難治性の多発性骨髄腫(+デキサメタゾン) |ニンラーロ【グローバル】再発・難治性の多発性骨髄腫(+ダラツムマブ+デキサメタゾン) |ポナチニブ【米】慢性骨髄腫白血病(用量設定試験、TKI抵抗性) |mobocertinib【グローバル】エクソン20挿入変異非小細胞肺がん(2ndライン~) |TAK-007/再発・難治性のB細胞性悪性腫瘍 (フェーズ3) |ブリガチニブ【日中】ALK陽性非小細胞肺がん(フロントライン) |ブリガチニブ【グローバル】ALK陽性非小細胞肺がん(クリゾチニブ既投与) |ニンラーロ【米欧】移植後・初発の多発性骨髄腫(維持療法) |ニンラーロ【グローバル】移植未実施・初発の多発性骨髄腫(維持療法) |カボメティクス【日】腎がん(1stライン、+ニボルマブ) |ポナチニブ【米】フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病(フロントライン) |pevonedistat【日米欧】高リスク骨髄異形成症候群/慢性骨髄単球性白血病/低芽球比率急性骨髄性白血病 |pevonedistat【グローバル】移植非適応の急性骨髄性白血病 |mobocertinib【グローバル】エクソン20挿入変異非小細胞肺がん(フロントライン) |レルゴリクス【日中】前立腺がん (申請中) |アドセトリス【欧】末梢性T細胞性リンパ腫(フロントライン) |アドセトリス【中】再発・難治性のホジキンリンパ腫 |アドセトリス【中】再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫 |ブリガチニブ【米】ALK陽性非小細胞肺がん(フロントライン) |ブリガチニブ【日】ALK陽性非小細胞肺がん(ALK阻害薬既投与) |カボメティクス【日】肝細胞がん(2ndライン) |niraparib【日】卵巣がん(維持療法) |niraparib【日】卵巣がん(サルベージ療法) <希少疾患> (フェーズ2) TAK-755【米欧】免疫性血栓性血小板減少性紫斑病 |TAK-755【米】鎌状赤血球症 |TAK-607/早産児合併症 |TAK-609【米欧】ハンター症候群(中枢性) |TAK-611/異染性白質ジストロフィー |TAK-754/血友病A(第VIII因子遺伝子治療) |TAK-079/重症筋無力症 |TAK-079/全身性エリテマトーデス (フェーズ3) lanadelumab【日】遺伝性血管性浮腫 |lanadelumab【グローバル】遺伝性血管性浮腫(小児) |TAK-577【グローバル】フォン・ヴィレブランド病の予防 |TAK-577【グローバル】フォン・ヴィレブランド病(出血時補充 療法、小児) |TAK-672【米欧】先天性血友病A(インヒビター保有) |アディノベイト【欧】血友病A(小児) |TAK-755【米欧】先天性血栓性血小板減少性紫斑病 |maribavir【米欧】サイトメガロウイルス感染症(移植手術後) (申請中) |lanadelumab【中】遺伝性血管性浮腫

<ニューロサイエンス> (フェーズ2) TAK-831/統合失調症 |soticlestat/ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群 |soticlestat/CDKL5遺伝子欠損症 |soticlestat/複合性局所疼痛症候群 |WVE-120101/ハンチントン病 |WVE-120102/ハンチントン病 (申請中) |midazolam【日】てんかん重積状態 <消化器> (フェーズ2) エンタイビオ【グローバル】潰瘍性大腸炎、クローン病(小児) |TAK-906/胃不全麻痺 |TAK-954/術後消化器機能障害 |TAK-101/セリアック病 |TAK-018/クローン病(手術後および回腸炎) (フェーズ3) エンタイビオ【日欧】移植片対宿主病予防(造血幹細胞移植済) |エンタイビオ【日米】皮下投与製剤(クローン病) |タケキャブ【日】口腔内崩壊錠 |teduglutide【日】短腸症候群(小児) |teduglutide【日】短腸症候群(成人) |ダルバドストロセル【日米】難治性のクローン病に伴う肛囲複雑痩孔 |budesonide【米】好酸球性食道炎 (申請中) エンタイビオ【日】皮下投与製剤(潰瘍性大腸炎) |タケキャブ【中】酸関連疾患(逆流性食道炎の維持療法) |タケキャブ【中】酸関連疾患(十二指腸潰瘍) <血漿分画製剤> (フェーズ3) |TAK-616【日】遺伝性血管性浮腫 |TAK-771【米】原発性免疫不全症(小児) |TAK-771【米欧】慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 <ワクチン> (フェーズ2) TAK-214/ノロウイルス (フェーズ3) TAK-003/デング熱 |※武田薬品工業の決算資料をもとに作成

出典:AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央:武田薬品工業
発行日:2020/8/5

 

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