ASCO2022の注目演題に関する記事のまとめです。ASCO2022が6月3日から7日にかけて開催しました。ASCOでは、毎回、多くの注目の最新データが発表され、それらの中には、今後のオンコロジー領域における画期的な変革を与える発表も多く、関心を集めます。
ASCO2022年次総会が2022年6月3日から7日にかけて開催されました。ASCO2022は、今年度の世界最大のオンコロジー関連の国際会議で、世界中からオンコロジーの専門家が集まります。今年は、対面式とオンライン式で開催され、グローバル大手の製薬企業から新興のバイオテクノロジー企業まで何千もの抄録や研究内容が発表される予定です。ASCO年次総会では、毎回、多くの注目の最新データが発表され、それらの中には、今後のオンコロジー領域における画期的な変革を与える発表も多く、つねに関心を集めます。今回の【特集: ASCO2022】では、注目の演題を選び、日本語で解説を致します。
ASCOとは?
ASCO(American Society of Clinical Oncology 米国臨床腫瘍学会)とは、1964年に設立され、現在、世界中に約45,000人の会員を有しているがん治療に関する専門家、医師を代表する専門組織です。オンコロジーの国際学会としては世界最大の学会です。ASCOが年に1回開く年次総会では、多くのがん専門医の参加に加え、5000以上にのぼる最新の研究結果が発表されます。
久しぶりに対面でも行われるASCO2022ですが、今回の多くの注目の演題が発表されました。特に注目されている研究結果や臨床試験結果は、オンコロジー領域の人々から高い関心が集まり、将来のがん治療に大きな影響を与えるような臨床結果が含まれます。発表する企業にとっては、最新の情報を専門家のみならず、報道関係者や投資家を含む、多くの関係者に発表する場でもあります。そのため、発表内容は製薬企業および関連企業の株価にも大きな影響を与えます。
Insights4では、ASCO2022で発表される多くの演題の中でも、特に注目される演題に関し、総会前から注視しております。この投稿では、これらの注目の演題や発表内容に関する投稿された記事を特集としてまとめてお知らせいたします。今年のASCO2022で、どの演題が注目を浴び、どのような発表がなされたのか、まとめておりますので、どうぞご活用ください。
ASCO2022年次総会プログラムサイト:ASCO2022 Annual Conference Program Guide
ASCO2022開催直前の注目演題5つ
ASCO2022の開催直前の記事ですが、注目の演題として以下の5つに注目をしておりました。
2000以上の発表がなされる中でも、開幕前から注目されていた内容です。それぞれ、注目の中での発表でしたが、発表直後の速報記事もつけてますので、併せてご活用ください。
■ HER2低発現乳がん対象の抗体薬物複合体のエンハーツ:アストラゼネカと第一三共
■ HER2陰性乳がん対象のトロデルビィ:ギリアド
■ 上咽頭がんを対象のモノクローナル抗体Tislelizumab:ノバルティス/Beigene
■ 抗HER3抗体薬物複合体パトリツマブ デルクステカン:第一三共とアムジェン
■ TIGIT免疫療法
※ この記事を読む「ASCO2022開催直前の注目演題5選。第一三共の抗体薬物複合体「エンハーツ」らに高い関心」
ASCO2022「乳がん」での注目演題のまとめ
ASCO2022の中でも特に注目を集めたのが乳がんに関する発表ではなかったでしょうか?まずは、乳がんでの発表された注目の演題をみてみましょう。開始直前、現地で毎日開催されるプレスブリーフィングで紹介のレイト・ブレーキング・アブストラクト(LBA)も含めて、以下の8つの演題に注目をしていました。
■ LBA 1001:TROPiCS-02試験、重度前治療のHR+/HER2-乳がん患者でトロデルヴィが主要評価項目を達成
■ LBA3:アストラゼネカ/第一三共のエンハーツのDESTINY Breast04試験、HER2低発現転移性乳がんに対する3相臨床試験
■ アブストラクト1022:サーモニクス社の経口SERMであるラソフォキシフェン
■ アブストラクト528:サノフィ社のAMEERA-4、閉経後ER+/HER2-原発性乳がん術前治療オープン試験
■ アブストラクトTPS1118: 米メルク、キイトルーダの第3相KEYNOTE-B49試験
■ アブストラクトTPS1121:ヴェルファーマ社のファーストインクラスの経口分子エノボサーム
■ アブストラクト1021:イーライリリー社のImlunestrant
■ アブストラクトTPS1130: 転移性乳がんにおけるCAR-T療法の臨床試験
ASCO2022「乳がん」関する開催直前の記事「ASCO2022「乳がん」で注目演題8選。とくに高い「エンハーツ」「トロデルヴィ」の発表に関心」でも、第一三共の2つのADCには注目が集まっていました。それでは、ASCO2022で発表された後の記事を纏めましたので、乳がんから始めます。
乳がんの55%を占めるHER2低発現という新しいカテゴリーでの効果を示したエンハーツ
第一三共とアストラゼネカの「エンハーツ」が、数千億円規模の売上を将来達成する可能性を示すデータが、ASCO2022で発表され、大きな注目になりました。乳がんの55%を占めるHER2低発現という新しいカテゴリーでの効果を示したエンハーツは、数ヶ月後「承認」と、数千億円規模の「マルチ」ブロックバスターに成長する可能性もあります。
HER3乳がん対象でパトリツマブ・デルクステカンが良好なデータを発表した
乳がん対象で続いて第一三共の発表ですが、第一三共が発表したパトリツマブ・デルクステカンは、HER3乳がん対象で良好なデータを示しました。エンハーツにならび注目だった抗体薬物複合体パトリツマブ・デルクステカンが、未だに承認薬がないHER3発現転移性乳がんを対象として良好な有効性と安全性をの正当性を示しました。
トロデルヴィ、HR+/HER2転移性乳癌対象で化学療法と比較してわずかな改善
ASCO2022の乳がん治療町域で注目だったギリアド社のトロデルヴィだが、化学療法と比較してPFS中央値を34%改善したとASCO2022年次総会で発表した。この第3相TROPiCS-02試験では、前治療歴のあるHR陽性/HER2転移性乳がん対象だったが、化学療法との改善はわずかであった。
術前の治療としての最初のSERD薬が大詰めに
サノフィがASCO2022で、自主的に終了したAMEERA-4試験の最新結果を発表しました。サノフィは、より大規模なAMEERA-6を開始して、術前の治療としての最初のSERD薬を目指していますが、ロッシュ、イーライリリーも開発中で大詰めを迎えています。
ASCO2022「肺がん」での注目演題のまとめ
ASCO2022で、発表され関心の高かった肺がんの記事を纏めました。直前の注目時記事と併せてご購読ください。
ASCO2022肺がんでの直前の関心は?ミラティ社のアダグラシブとTIGIT免疫療法チラゴルマブ
ASCO2022、「肺がん」での開幕直前で選んだ注目演題は、ミラティ社のアダグラシブとTIGIT免疫療法チラゴルマブでした。ASCO 2022では、多くの注目されている最新データが発表されます。2800以上の演題やプロジェクトが受付され、開催中は4万人以上の専門家が参加するASCO2022。ASCO2022の開催に先立ち、肺がん領域での注目演題をピックアップした記事を、お届けしています。
肺がんで抗TIGITへ暗雲?
ASCO2022では、ロシュが、小細胞肺がんを対象で行ったチラゴルマブの第3相SKYSCRAPER-02試験の詳細な結果を発表。同試験に関しては、数ヶ月前に、無増悪生存期間(PFS)の共同主要評価項目を達成できなかったトップライン結果を発表していましたが、今回ASCO2022で発表したデータでは、さらにチラゴルマブが全生存(OS)目標に対しても利益をもたらさなかったということも付け加える結果となりました。
小細胞肺がんは、急速な進行と生存率の低さが特徴の最も攻撃的な肺がんです。製薬企業がまだ次世代療法をあきらめていないことは明らかで、ロシュの抗TIGIT分子と並んで、他の多くの大手製薬会社も抗TIGIT分子に投資しています。しかし、最近の肺がんにおける後期臨床段階での失敗に対しては、投資家や医療関係者の間で懸念が高まっています、
第一三共のパトリツマブ デルクステカン、HER3発現で肺がんでも結果を示す
ASCO2022で、肺がんを対象としたパトリツマブ デルクステカンの臨床試験結果を第一三共が発表し注目を集めました。HER3発現は、多くの癌腫でみられますが、HER3の過剰発現の正確な機能は完全には明らかされておらずHER3阻害のFDA承認薬はまだありません。今回の発表で、パトリツマブ デルクステカンが、乳癌に続き、非小細胞肺癌でも有望な臨床活性を示したものです。
ASCO2022「血液腫瘍」での注目記事のまとめ
ASCO2022開幕直前、濾胞性リンパ腫対象での注目演題は?
ASCO2022開幕直前「濾胞性リンパ腫」の中で、ジェンマブとアッヴィのエプコリタマブと、Beigene社のBTK阻害剤に注目します。再発/難治性濾胞性リンパ腫に対するバイスペシフィック抗体の成果は、治療パターンのエンハンサーとなる可能性があり関心が高い分野です。
ASCO2022「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」、ロシュのグロフィタマブとシーゲン/武田のアドセトリスに注目
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は攻撃的な血液がんであり、非ホジキンリンパ腫(NHL)の最も一般的な形態で、ヨーロッパでは毎年約4万件のニュースが診断され、さらに米国では2万5000件が検出されています。DLBCLは、非ホジキンリンパ腫(NHL)の最も一般的な形態で、米国では2万5000人、ヨーロッパでは約4万件が、毎年新規で診断されています。ASCO2022の注目演題としてロシュのグロフィタマブとシーゲン/武田のアドセトリスに注目しています。
CAR-T療法「Carvykti」が多発性骨髄腫において「2年後」も奏効率を維持
ASCO2022年で発表されたデータによると、再発または難治性多発性骨髄腫患者におけるBCMA指向性CAR-T療法Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)の全奏効率(ORR)が、追跡期間中央値28カ月後も「一貫して」持続していることが示されました。本試験の担当医師 Saad Usmani 氏は、「2 年間の追跡調査で認められた奏効率は、(Carvyktiが)長期の病勢コントロールと生存を可能にする可能性を示しています」と述べています。
BMS社再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫対象治療薬ブレヤンジ第2相結果を発表
ASCO2022で、BMS社が、造血幹細胞移植の対象とならない再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫を対象とした第2相PILOT試験の良好な結果を発表しました。追跡期間中央値12.3カ月で、ブレヤンジの投与を受けた大部分で病勢が低下したことが確認されました。全奏功率80%を達成、54%の患者が完全奏功率を達成しています。
「ASCO2022」消化器系がんとその他のがん腫での注目演題
【ASCO2022】ネラチニブ、引き続きHER2陽性胆道がんに対する潜在的な治療オプションである
プーマ・バイオテクノロジー社のネラチニブは、緩やかな有効性ではあるものの、HER2陽性の胆道がんに対する潜在的な治療オプションであり続けており、同社は、より効果的な併用療法の探索を継続しています。ネラチニブは、2020年2月に、転移後に2種類以上の抗HER2ベースのレジメンを受けたことにある進行・転移性のHER2陽性乳がん対象でFDAより承認されています。
イムフィンジ併用療法が進行性胆道がんの新たな標準治療薬となる可能性
進行性胆道がんに対するイムフィンジ併用の第3相試験TOPAZ-1が発表となりました。予後特性の地域差はあるものの、アジアおよびその他の地域の登録患者において、イムフィンジ+ゲムシタビン併用がプラセボ併用よりも良好で、進行性BTCに対する新しい治療オプションとなる可能性を支持しています。