近づくチクングニアウイルスワクチンの初承認。ワクチン市場への影響は?

2020年新型コロナウイルスの猛威に世界中が翻弄されています。新型コロナウイルスをはじめ、適切な治療方法、有効なワクチンがまだない感染症が実は多いことも事実です。一方で、新たなワクチン開発の技術もあり今後新しいワクチンの承認が増えることが予想されています。本記事で紹介するチクングニア熱も現在有効なワクチンは無いものの、現在新しいワクチン候補が複数後期臨床試験段階にあります。

ワクチン特化の英国の市場調査会社Vaczine Analytics社の調査によると米国において今後15年間で67の新規、もしくは画期的なワクチンが承認されると予測されている。(同社調査MasterVIEW; USAから)

同ワクチンを開発している企業には新型コロナウイルス感染症向けにワクチンを開発しているModerna社や米メルク(オーストリアのThemis社を買収)社も含まれおり、チクングニア熱むけのワクチンの承認のレースの中にいます。この日本ではあまり馴染みがないチクングニア熱ですが、今後の将来のワクチン市場を見る上で大きな波紋を投げかえる可能性を含んでいます。今回の記事はVaczine Analytics社のチクングニア熱ワクチンの最新調査レポート「MarketView チクングニア熱ワクチン」を参照に記事を構成致しております。

    • まだワクチンが無いチクングニア熱とは?
    • 2022年-2023年には新規ワクチン承認の可能性
    • チクングニア熱ワクチンの開発競争の行方と影響は?

まだワクチンが無いチクングニア熱とは?

チクングニアウイルスは、1952年から53年にタンザニアで起きた際に患者から分離されたもので、ヤブカ属のネッタイシマカとヒトスジシマカが媒介します。症状は、発熱、しばしば手と脚の激しい関節痛、頭痛、筋肉痛、関節の腫れ、発疹などであす。1週間くらいで症状は軽くなるものの、6割くらいの人は数年も続く再発性リウマチ性の関節痛に悩まされます。推定の死亡率は0.1%と死亡することはほとんどなく生命を脅かす疾患とはみなされていません。人から人への感染は無いため肌の露出する服装での野外の活動を控え、虫除け対策をすることが予防対策です。症状はデング熱と似ているものの鑑別は難しく、潜伏期間はデング熱よりも短いので旅行中に発症する可能性があるとのことです。(出典:厚生労働省検疫所HPより)

かつては、アジア、アフリカの熱帯・亜熱帯が流行地域でしたが、最近は中南米の各地に流行地が広がり、今も拡大を続けています。日本でも感染地域から帰国した旅行者の感染が確認されています。2016年、ブラジル保健省は200人以上の死亡を確認、2018年、2019年中にはさらに126人の死亡が確認されています。アメリカ、中国、パプアニューギニア、ラオス、ニューカレドニア、ブータンを含む多くの国で発症例が報告されています。

2022年-2023年には新規ワクチン承認の可能性

現在、さまざまなアプローチに基づくワクチン候補が現在、臨床試験を実施している中でEmergent BioSolutions社、Themis/Merck&Co社、Moderna社およびValneva社が開発の後期段階にあります。
これらの開発ワクチンは、高い医療ニーズに応える潜在性から米国とEUにおいてファストトラックの指定を受けています。また、CEPI(Coupition of Epidemic Preparedness Innovations)も候補品の臨床試験に対して資金を投入しています。FDAをはじめ規制当局は、Phase3の有効性試験を実施せずに、免疫原性(ICOP)に基づいて承認するという迅速な審査と承認プロセスを用意しています。

ワクチンとして大きな課題である安全性が証明されると、2022年から2023年には新たなワクチンが承認され、利用可能になると予想されます。チクングニアウイルスに対して感染リスクが高い地域の居住者、各国からの感染流行地への旅行者が投与の対象となる見込みです。

現在開発後期段階に入っているワクチンと開発を行っている企業は以下です。

社名 開発中の薬剤 フェーズ
Valneva VLA1553 Phase II
Moderna mRNA-1388 Phase I
Themis Bioscience/Merck & Co. MV-CHIK Phase II
Emergent BioSolutions PXVX0317 Phase II

 

チクングニア熱ワクチンの開発競争の行方と影響は?

過去20年間でFDAが承認をした「新規」のワクチンは7品目にとどまりますが、今後はその状況も大きく変わる可能性があります。新型コロナウイルス感染症に対する新規ワクチンで注目をされているmRNAワクチン技術は、未だにmRNAワクチンは承認されているワクチンは存在しないものの期待は大きく、チクングニア熱のワクチンとしても後期の開発段階にあります。

通常、mRNAは体内にそのまま投与するとウイルス成分とみなされて免疫系に排除されてしまいます。Moderna社の持つ技術はこの免疫反応を回避しうるmRNAヌクレオチド加工技術を有しています。
細胞に蛋白質を作らせるmRNA薬による病気の治療や予防への期待から、Moderna社は、2018年当時、バイオテック企業史上最大の6億0430万ドル($604 million)のIPO調達を達成し、時価総額70億ドル超のNasdaq上場企業となっています。

開発されているチクングニア熱ワクチン「mRNA-1388」のPhaseIの試験でも安全性にも問題ない臨床結果を示しております。新型コロナウイルスにおいて最初のmRNAワクチンとして承認された場合、チクングニア熱ワクチンの承認にも影響を及ぼすと思われます。そして、従来の開発方法でのワクチン開発を進めている企業にとっては大きな脅威となる含みをもちます。

日本ではあまり馴染みがないチクングニア熱ではありますが、後期開発品は当局からの迅速な申請の条件、CEPIなどの資金提供も受けて、新しいワクチンとしての承認が現実的に近づいてきています。新型コロナウイルスの全世界へ与えている影響から、感染症への関心が高まっています。そのような中でmRNAワクチンのような新たな技術による新たなワクチンの開発も進んでいます。

このような新たな技術によるワクチンの承認は、チングニア熱といった致死率が低く、感染者も少ない疾患ではあるものの、今後のワクチンの市場と開発に大きな影響を及ぼすものと考えられます。

参照の英文報告書

タイトル:【英文報告書】MarketVIEWチクングニア熱ワクチン: 2035年までのチクングニア熱ワクチンの商業的機会分析と予測
Title:MarketVIEW: Chikungunya virus vaccines

  • 発行月:2020年6月
  • 発行会社:VacZine Analytics社
  • リージョナルライセンス  10,995米ドル

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