【新型コロナウイルス感染症】インドでの感染状況とインドにおけるワクチンの開発状況

DelveInsight Business Research LLPによる市場調査レポート「COVID-19 (CoronaVirus) – Pipeline Insight, 2020(COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) – パイプラインの考察:2020年)」では、インドにおける新型コロナウイルス感染症ワクチン市場のトレンドを紹介しています。今回の記事では、注目されるインドのワクチン開発企業と未だに感染が拡大するインドにおける感染状況と対策、さらにインド特有の感染対策における課題を紹介いたします。(翻訳・校正:販売代理店 株式会社グローバルインフォメーション)

全世界で進む新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発

今日、世界中が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して有効性を示すワクチン候補を求めています。コロナウイルスに対する唯一の予防法として考えられているのがワクチンです。複数の製薬企業とバイオテクノロジー企業が、コロナウイルスとの戦いにおいて有効性があり、かつ安全性が担保されるワクチンの開発、製造を行っています。世界で150前後の開発プロジェクトが進行している中で、世界的に期待値が高いワクチン開発プロジェクトには、モデルナの”mRNA-1273”、カンシノ・バイオロジクスの”Ad5-nCoV”、アストラゼネカとオックスフォード大学連合の”ChAdOx1 nCoV-19 /AZD1222”、アイノビオ・ファーマスーティカルの “INO-4800”、シノバク・ライフサイエンスの”CoronaVac”などがあります。

インドにおけるワクチンの開発と開発状況

インドの製薬業界でも同様のワクチン開発は行われています。感染状況の悪化を受け、インド政府は、COVID-19向けの薬品が研究所から製薬市場まで素早く提供できるようにするため、”Task Force on Repurposing of Drugs for COVID19” (TFORD-COVID19)”プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、進化を続ける候補製剤の開発状況に関する最新情報を常に把握し、同時に候補製剤に関して多方面からの評価、および組織内での評価を実施することを目的としています。多くのインド国内の製薬企業、バイオテクノロジー企業が独自に、または他社、他組織と共同でのワクチン開発を行っています。

現在、インドでは25社以上がCOVID-19ワクチン開発競争へ投資を行っています。WHOはフェーズが異なる世界のワクチン開発の状況把握を常に行っている中、インドでも同様に大手7社が単独、または共同で異なるフェーズでの臨床実験を行っています。

今回ご紹介するインドの製薬企業とワクチンは以下のとおりで、これらの新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発状況と開発企業、企業連合の情報はDelveInsight Business Research社発行の市場調査レポート「COVID-19 (CoronaVirus) – Pipeline Insight, 2020(COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) – パイプラインの考察:2020年)」に詳細が掲載されておりますが、本記事ではその中の一部を翻訳し、ご紹介いたします。

  • Bharat Biotech International Limited (BBIL)・インド医学研究評議会(ICMR)・国立ウイルス研究所 (NIV) (COVAXIN)
  • Serum Institute of India  (SII)・アストラゼネカ/オックスフォード大学連合
  • Zydus Cadila (ZyCoV-D)
  • Mynvax
  • Biological E Ltd.
  • Indian Immunologicals Limited・グリフィス大学(オーストラリア)連合
  • Panacea Biotec・Refana Inc. 連合
  • Bharat Biotech International Limited (BBIL)・インド医学研究評議会(ICMR)・国立ウイルス研究所 (NIV) (COVAXIN)

Bharat Biotech社(BBIL)

1996年設立のBharat Biotech社(BBIL)はインドを代表するバイオテクノロジー企業の一つです。160件以上の特許を保有する同社はインドでのCOVID-19ワクチン競争で先頭を走っています。

BBILはインド医学研究評議会(ICMR)および国立ウイルス研究所 (NIV)と共同で、インド初の国産ワクチン候補”COVAXIN”を開発しています。

同社はフェーズ1およびフェーズ2のヒト臨床試験実施の実施許可をインド医薬品管理局(DCGI)から既に受けています。フェーズ1は7月17日にハリヤナ州ロータクにある政府系医療機関PGIMSで開始されました。また、7月24日には、デリーの全インド医科大学(AIIMS)に入院した30代男性に初めてCOVAXINが投与されました。

Serum Institute of India  (SII)・アストラゼネカ/オックスフォード大学連合

イギリスとスウェーデンを本拠とする製薬会社アストラゼネカと、オックスフォード大学のジェンナー研究所は、Covid-19ワクチン”ChAdOx1 nCoV-19 /AZD1222”を共同開発しています。両者は既に、このワクチンのフェーズ1およびフェーズ2臨床実験において有望な結果が得られたことを公表しており、現在フェーズ3に入っています。

世界屈指のワクチン製造企業のひとつであるSerum Institute of India(SII)は、アストラゼネカ/オックスフォード連合とCOVID-19ワクチンの製造において提携を結び、同社は8月中にヒト臨床実験を行う予定です。同社のCEO、Adar Poonawalla氏によると、年末までにワクチンの提供体制が整う可能性が高いとのことです。同社は約10億本のワクチン製造・提供を行うことができる施設建設のため、1億米ドル以上を投資しています。治験が成功した場合、同社はインド国内と中所得以下の国々へワクチンを提供する予定です。

Zydus Cadila (ZyCoV-D)

アフマダーバードに本社を構えるZydus Cadila社は、インドの製薬業界でトップクラスの企業の一つです。同社はプラスミドDNAを元に製造されたCOVID-19ワクチン”ZyCoV-D”を開発中で、既にヒト臨床実験を開始しています。

社内のワクチン技術センターで実施された非臨床実験は既に終了していますが、その中で、複数の実験動物種の体内で”ZyCoV-D”の免疫反応生成を確認しています。

”ZyCoV-D”のフェーズ1およびフェーズ2の臨床試験を行うため、同社はインド国内の複数の臨床試験施設を通じて1,000名以上の被験者の登録を目指しています。また、臨床試験を実施に向けて、臨床用GMPバッチの製造を開始しています。

Mynvax

Raghavan Varadarajan氏とGautham Nadig氏が2017年に設立したMynvax社は、バンガロールにあるバイオテクノロジーのスタートアップ企業で、現在、COVID-19用の国産ワクチンを開発中です。同社はインド理科大学院で生まれた「大学発ベンチャー」ですが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援も受けています。COVID-19以外では、ヒトインフルエンザの組み換えワクチン開発プログラムにも参画しています。

同社はこれまでに複数の免疫原候補を開発しており、初期の動物試験も完了しています。今後18か月以内に安全性が確保され、かつ効果の高いワクチンの提供がなされる予定です。ワクチン開発のプロセス拡大のため、同社はバイオテクノロジー産業研究支援協議会(BIRAC)からの1億5,000万ルピーの財政支援の申請を行っています。

Biological E Ltd.

1953年設立のBiological E社は、インドで最初の民間バイオ製剤企業の一つで、ジェネリックのワクチンや治療薬の製造と提供を行っています。ワクチンは100以上の国へ輸出されています。

同社はインドでのCOVID-19ワクチン開発における主要7企業の一つでもあり、現在、同社の候補ワクチンは非臨床実験の段階にあります。

Indian Immunologicals Limited・グリフィス大学(オーストラリア)連合

ハイデラバードに本社を構えるIndian Immunologicals Limited社(IIL)は、オーストラリアのグリフィス大学と共同研究に関する合意を結び、ワクチン候補の開発を行っています。このウイルスはコドン最適化解除技術(codon-deoptimization technology)に基づいて作製されるもので、新型コロナウイルスに感染した細胞を直接狙うものです。現在は非臨床の実験・研究段階にあります。

Panacea Biotec・Refana Inc. 連合

2020年6月10日、デリーに本社を構えるバイオテクノロジー企業であるPanacea Biotec社がアメリカのRefana Biotec社との間で提携を発表しました。この提携は、アイルランドで設立予定の合弁会社がCOVID-19ワクチンの開発を行うものです。

提携合意書によると、Panacea Biotec社が製品開発と商業生産を担当し、合弁会社が臨床開発と各国の規制当局への申請業務を担当することになります。Panacea Biotec社は、COVID-19候補ワクチンを約5億本生産する予定で、そのうち2021年初めまでに4,000万本の提供を予定しています。臨床試験や臨床研究に関する詳細は、数週間中に発表される予定です。

インド固有の問題: 人口過密と医療インフラ

複数の製薬企業がワクチン候補の開発、評価を行っているものの、ワクチンの開発は非常に難易度が高く、多くの時間を要するものであることを忘れてはなりません。COVID-19ワクチンに関する一連の臨床や研究が進行中ではありますが、安全でかつ効果の高いワクチンが誕生するまでには、想定を超える時間を要する可能性もあります。

また、インドには、コロナウイルスとの戦いだけでなく、インド固有の課題が多く存在します。人口の過密はその一つです。デリー、コルカタ、ムンバイ、アフマダーバードそしてバンガロールといった大都市圏の人口密度は非常に高い状態にあります。様々なデータを総合すると、これらの大都市における新型コロナウイルス感染者と死亡者の報告数は、インド国内全体の大半を占めており、その他の重要な課題としては、貧弱な医療インフラと医療施設の問題等があります。感染症の流行以前から、医療提供システムが十分ではなかったところに、COVID-19が更に追い打ちをかける形となりました。

インドにおいても大きいロックダウンの経済に対するマイナスの影響とブラジル、アメリカに次ぐ感染の悪化傾向

2020年1月30日、インドのケララ州でインド初のCOVID-19の感染者が確認され、その後、感染者数は上昇傾向にある中で、インド政府は、新型コロナウイルスの拡大阻止を目的としたガイドラインと予防措置を発表しました。さらに、世界各国の感染状況が非常に悪化する中、3月25日、インド政府は全土封鎖(ロックダウン)を実施しました。全ての飛行機は運航停止となり、公共交通のサービスも停止され、企業や市場も閉鎖となりました。その一方、インド政府は無償の食料配給サービスや、玄関前までの日用品配達が可能となる措置を採りました。さらには、新規感染者の感染源追跡をスムーズに行うため、”Aarogya setu”と呼ばれるアプリの提供が始まりました。このアプリによって、個人は自らの感染リスクを確認できます。

しかしながら、数々の行動規制とロックダウンにより、インド経済の成長に急ブレーキが掛かりました。インド政府は、感染阻止と経済再生の厳しい板挟みの中、ロックダウンを解除し、低迷する経済を成長軌道に戻そうとしましたが、国内のCOVID-19感染者数がさらに増加する結果となりました。2020年6月1日の時点で確認されたインド国内の感染者数は97,008人でしたが、7月29日現在、感染者数は153万人以上にのぼり、死者数は3万人を超えています。7月29日までの数日間で、1日あたりの新規感染者数は平均4万人を超えており、インドの感染状況、アメリカ、ブラジルに次いで悪い状況となっています。

インドにおける新型コロナウイルスの治癒率は上昇傾向にある

ウイルス拡大を一時的に抑止する手段の一つとしてロックダウンは有効であることが証明されましたが、その後、ロックダウンは徐々に解除され、人々はマスクや除菌剤の使用、ソーシャルディスタンスの順守などの予防策を行いながらも、日常生活を再開しました。そのような中、治療薬および予防製剤の開発競争は今も続いています。

インドにおける新型コロナウイルスに関する見通しは依然として暗いようにも感じますが、治癒率は上昇傾向にあり、7月末時点で64.5%に達しています。これはウイルスの打撃を受けた国々の中でも最も高い値であり、多少は安心できる材料です。

それでもなお、承認済みの一般治療薬がインドの製薬市場に投入されるまでは、ソーシャルディスタンスを守り、手洗いや口と鼻をマスクで覆うなどの基本的な感染対策を実施することが、ウイルスを拡大させないための唯一の手段かもしれません。

期待が高まるワクチンの開発

インドの製薬業界でもワクチン開発は行われ、インド政府はも、COVID-19向けの薬品が研究所から製薬市場まで素早く提供できるようにするために策を講じております。現在、インドでは25社以上がCOVID-19ワクチン開発競争へ投資を行っていますが、今回はその中から注目する7つのワクチンをピックアップ、レポートの中から日本語にしてご提供いたしました。未だに世界中で猛威をふるい、行動の制限と経済活動の停滞、低下に大きな影を落としている新型インフルエンザです。経済の回復、上昇傾向に大きく舵を切る国や地域が増える中で、収束に向けた治療薬、そしてワクチンの開発が待たれています。

出典:インドのCOVID-19ワクチン候補 (出典:DelveInsight Business Research LLP)DelveInsight Business Research LLPの市場調査レポート「COVID-19 (CoronaVirus) – Pipeline Insight, 2020(COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) – パイプラインの考察:2020年)」
販売代理店 株式会社グローバルインフォメーション

参照の英文報告書

タイトル:【英文報告書】COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) – パイプラインの考察:2020年
発行月:2020年4月1日

  • 発行会社:DelveInsight Business Research LLP社
  • シングルライセンス  2,000米ドルから
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