ギリアド・サイエンシズ社は、再発・難治性多発性骨髄腫の患者を対象としたアーセルクス社のCART-ddBCMAについて、傘下のカイト社とアーセルクス社が共同開発することを目的とした提携で合意したと12月9日に発表しました。この提携契約は2023年の第1四半期に締結される予定で、2億2500万ドルの契約一時金と1億ドルのアーセルクス社への出資、さらに最大で総額39億ドルの条件付対価が付されます。
CART-ddBCMAは、免疫原性リスクを低減するために設計された新規のDドメイン結合剤を含むBCMA特異的CAR修飾自己T細胞療法です。現在、主要な試験であるiMMagine-1試験において、第2相試験が行われています。アーセルクス社は今年初め、CART-ddBCMAが100%の全奏効率(ORR)を示し、12ヶ月に達した患者の81%が完全奏効(CR)を達成したという第1相試験結果を発表しました。12月9日に発表された最新の結果でも、中央値15カ月のフォローアップ後に100%のORRを示し、71%の参加者がCRを達成したことが盛り込まれています。
新領域への足がかり
ギリアド社傘下のカイト社CEOであるChristi Shaw氏は「細胞療法は、患者さん自身のT細胞から治療可能な治療法を生み出すことにより、がん治療のあり方を変えられることを証明してきました」と述べ、今回の提携により「アンメットニーズの高い新しい領域に進出し、クラス最高の細胞療法を多くの患者さんのために提供することができます」と述べています。
カイト社は現在、非ホジキンリンパ腫のCAR-T細胞療法イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)と、マントル細胞リンパ腫と急性リンパ性白血病に処方される第2世代のCD19標的CAR-T療法テカルタス(brexucabtagene autoleucel)を販売中です。一方、今年初めには、J&J社とパートナーのレジェンド・バイオテッ社のBCMA指向性CAR-T療法Carvykti (ciltacabtagene autoleucel)が、再発・難治性の多発性骨髄腫の成人を対象に米国と欧州で承認取得しています。
目次
次世代プログラムを対象とした契約
カイト社とアーセルクス社は、CART-ddBCMAの開発、臨床試験、商業化の費用を分担します。両社はまた、CART-ddBCMAが承認された場合、共同で商業化することに合意しており、米国での利益を等分し、カイト社は米国外で本製品を販売し、アーセルクス社は売上から10%台半ばのロイヤリティを受け取ることになる予定です。ギリアド社は、共同商業化されなかった提携製品の開発・販売費用を負担し、技術移管完了後の製造も担当します。
一方、カイト社とアーセルクス社は、ddBCMAを用いた自己および非自己の次世代プログラムについても共同開発を行う予定です。また、カイト社は、Arc-SparXプラットフォームに基づく骨髄腫の特定のプログラムへのオプトインも可能となります。
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