アストラゼネカ、乳がんにおけるSERD「camizestrant」とAKT「カピバセルチブ」それぞれ有用性を示す

breast cancer asco

2022年12月6日(火)~10日(土)に開催された第45回サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された調査結果によると、アストラゼネカ社の2つの乳がん治療薬候補が、進行乳がん患者を対象としたそれぞれの試験で無増悪生存(PFS)を改善したということです。

同社は、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、前治療歴のあるER+乳がん患者において進行または死亡を最大42%遅らせることを示した第2相SERENA-2試験と、AKT阻害剤capivasertibをFaslodexに追加することによりHR+乳がん患者の進行リスクを40%低減することを示した第3相CAPItello-291試験を実施したと発表しました。

第2相SERENA-2試験は、進行性疾患に対する内分泌療法の前治療を受けたER+の局所進行性または転移性乳がん患者240人の閉経後患者を対象に、アストラゼネカ社のSERD薬camizestrantと標準治療のFaslodexの比較評価を行うものです。

最高医学責任者のCristian Massacesi氏は、10月に発表された本試験の結果から

「ESR1遺伝子変異の有無やCDK4/6阻害剤による治療歴にかかわらず、camizestrantがこれらの患者に最良の結果をもたらす可能性がある」ことが示唆されたと述べています。

SERDの有効性は、ESR1遺伝子変異を有する患者群によって左右されるか?

アストラゼネカ社は、すでにcamizestrantの75mgと150mgの両用量で主要評価項目であるPFSが達成されたことを明らかにしており、また12月8日には、第2相SERENA-2試験被験者全体における疾患進行または死亡のリスクは、Faslodexと比較して2つの用量でそれぞれ42%および33%低下したと発表しています。

またPFS中央値は、低用量のcamizestrantで7.2カ月、高用量で7.7カ月であり、FaslodexのPFSは3.7カ月となりました。

アストラゼネカ社によると、このコホートの分析では病勢進行または死亡のリスクが75mg投与で67%低下し、PFS中央値は6.3カ月、150mg投与では45%低下し、PFS中央値は9.2カ月であったということです。ESR1遺伝子変異を有する患者がFaslodexを投与された場合、病勢が悪化するか死亡するまでの生存期間は中央値で2.2カ月でした。

同社は「ESR1遺伝子変異が検出されない患者においても有効性が認められ、75mgと150mgの用量レベルでは、疾患進行または死亡のリスクがそれぞれ22%と24%減少しました」と発表しました。

このESR1野生型コホートにおいて、camizestrantの低用量におけるPFS中央値はFaslodexと同じ7.2カ月であり、高用量では5.8カ月であったと発表しています。さらに、CDK4/6阻害剤による前治療を受けた患者のサブグループでは、75mg投与時のPFS中央値は5.5カ月で、150mg投与時よりも2カ月近く延長し、いずれもFaslodexより高かったということです。

AKT阻害薬「capivasertib」との併用でPFSが2倍に延長

アストラゼネカ社のもう一つの試験は、AKT阻害剤のファーストインクラス候補capivasertibを評価する第3相CAPItello-291試験です。

本試験には、HR陽性、HER2低値または陰性の乳がん患者のうち、CDK4/6阻害薬併用の有無にかかわらずアロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または進行した成人患者、進行がんに関しては化学療法1ラインまでの成人患者計708人が登録されました。

CapivasertibをFaslodexに追加した場合、全試験対象者のPFS中央値は7.2カ月であり、PFS中央値がわずか3.6カ月だったプラセボ+Faslodexと比較して、疾患進行または死亡のリスクが40%低くなることが確認されました。

AKT経路のバイオマーカーが変化した集団では、capivasertibとFaslodexの併用により、プラセボとの比較で疾患進行または死亡のリスクが50%低下し、両群のPFSはそれぞれ7.3カ月と3.1カ月でした。アストラゼネカ社は、本試験では、腫瘍の約40%にPI3K/AKT/PTEN遺伝子変異が認められたと述べています。

一方、確認された客観的奏効率(ORR)は、試験全体ではcapivasertibとFaslodex併用で22.9%、Faslodex単独では12.2%、バイオマーカー変更群ではそれぞれ28.8%と9.7%となりました。アストラゼネカ社は全生存期間(OS)の結果は未熟であるものの、初期データは「有望」であり、本試験では主要な副次評価項目としてOSの評価を継続する予定であると述べています。

同社オンコロジー研究開発責任者Susan Galbraith氏は

「Capivasertibは治療ギャップが生じている領域にも重要な進展をもたらすもの。全患者集団およびバイオマーカー陽性集団に有用性を示した今回の結果で、HR陽性乳がん治療の形が変わる可能性があることを信じます」と述べました。

参照

Capivasertib plus Faslodex reduced the risk of disease progression or death by 40% versus Faslodex in advanced HR-positive breast cancer

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