メナリーニ社の経口SERDエラセストラント、乳癌対象でFDAの優先審査を得る

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メナリーニ社が、8月11日、エストロゲン受容体陽性(ER陽性)/HER2陰性の進行性・転移性乳がん患者向け治療薬エラセストラントの承認申請に対し、FDAが優先審査に指定し、来年2月17日を目標審査日としたと発表しました。経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のエラセストラントは2018年に、FDAのファスト・トラック指定も受けています。

メナリーニ社は2020年に米Radius Health社からエラセストラントのグローバル権利を獲得しており、承認されれば、本剤は2次治療または3次治療のER+/HER2陰性の進行・転移性乳がん患者に使用できる初の経口SERDとなります。

なお、メナリーニ社は最近エラセストラントを欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)にも承認申請しています。

今回のFDA申請は、第3相臨床試験(EMERALD試験)の結果に基づいており、標準治療の内分泌単剤療法と比較して、全体およびESR1遺伝子変異を有する患者において、無増悪生存期間(PFS)の主要評価項目をいずれも達成しました。

1年後のPFSは、全例でelacestrantが22.32%、標準治療が9.42%でありました。ESR1遺伝子変異を有する患者さんでは、PFS率は26.76%、8.19%でした。
また、エラセストラントは、疾患進行または死亡のリスクを全患者で30%、ESR1遺伝子変異のサブグループで45%減少させたということも明かされています。

結果がまちまちな他社のSERD開発状況

経口SERDを開発している他の企業には、アストラゼネカ社、サノフィ社、ロシュ社などがあり、この分野では今のところ成果がまちまちで、最近ではG1セラピューティクス社がrintodestrantの研究を中止し、SERD開発競争から離脱しています。

今年3月にはサノフィ社が、ホルモン療法で進行した局所進行性または転移性ER+/HER2陰性乳がん患者を対象とした第2相試験で、同社の候補であるアムセネストラントのPFSを有意に延長できなかったことを発表しています。アムセネストラントの後期臨床試験は、ER+/HER2陰性転移性乳がんのファーストラインを対象にファイザー社のイブランス(palbociclib)との併用AMEERA-5試験、また早期乳がん患者のアジュバント設定を対象としたAMEERA-6試験などが進行中です。

一方、ロシュ社は4月に、ER+/HER2-転移性乳がんを対象としたgiredestrantの第2相試験についても、早期乳がん患者に対するネオアジュバント療法では成功を収めていたものの、主要評価項目であるPFSを達成できなかったことを明らかにしました。しかし、ロシュ社は、転移性乳がんのファーストライン患者および早期乳がん患者を対象とした試験で、引き続き本剤の評価を行うとしています。