アムジェン社は8月7日、第Ib相CodeBreaK 100/101試験の新しい肺がんデータを発表しました。それによりますと、KRAS標的薬Lumakras(ソトラシブ)と免疫療法を併用すると、ソトラシブ単独で以前に見られたよりも重篤な副作用、特に肝酵素上昇が高い割合で生じたことを明らかにしました。しかし研究代表者のBob Li氏は、「初めて(Lumakrasの)免疫チェックポイント阻害剤との併用により、前治療の免疫療法および未治療の環境において、持続的な奏効が得られることが実証されました」と述べています。
IASLC World Conference on Lung Cancer(WCLC)で発表された最新のレポートによると、KRAS p.G12C変異非小細胞肺がん(NSCLC)患者58人について、いくつかのコホートのいずれかに所属し、ソトラシブとロシュ社のテセントリク(アテゾリズマブ)またはメルク社のキイトルーダ(ペムブロリズマブ)を用量を変えて3週間ごとに、忍容性がなくなるか疾患進行が認められるまで同時投与したものです。
肺がん治療薬ソトラシブと免疫療法の併用で肝毒性が明らかに
半数のグループは「リードイン」コホートで、患者は免疫療法の初回投与の前に一定期間ソトラシブの単独投与を受け、その後テセントリクまたはキイトルーダとともに同剤を投与されました。およそ3分の2の患者が免疫療法の前治療を受けていましたが、試験に参加する前にKRAS阻害剤の投与を受けていた方はいませんでした。
※ 安全性への懸念のあるKRAS阻害剤「ミラティ社のKRAS阻害剤アダグラシブ、肺がんで43%のORRを示すも株価下落。安全性への懸念か?」
奏効率は全体で29%
アムジェン社によると、中央値12.8カ月の追跡調査後、全コホートの患者のうち17人が奏功を確認し、客観的奏功率(ORR)は29%であったということです。データによると、ソトラシブとキイトルーダの併用では、リードインとしてソトラシブを投与された患者と両剤を同時投与された患者のORRがそれぞれ37%と32%となり、より高い奏効が得られました。ソトラシブとテセントリクを投与されたリードイン群と同時投与群では、ORRはともに20%でした。
奏効例17名のうち、奏効期間(DoR)の中央値は17.9カ月で、8名が奏効を維持していました。さらに、全投与量群58名の全生存期間の中央値は15.7カ月であったということです。
ソトラシブの前途は多難
一方、グレード3-4の治療関連有害事象(TRAE)が34例(約59%)に認められ、その4分の3近くが肝毒性、特にALTとAST値の上昇に起因すると報告されました。
また、58名中22名(約38%)の被験者がTRAEを経験し、ソトラシブや免疫療法の中止を余儀なくされました。アムジェン社の治験担当社は「Hy’s law(FDAが重度の薬物性肝障害の可能性を評価する際に用いている予後指標)に該当する症例は発生しなかった」と述べています。
「このCodeBreaKの研究から得られた知見は、肝毒性事象は発生したものの免疫療法投与の2~3サイクル目以降に現れる傾向があり、いずれも適切な臨床措置により解決されたことを示しています 」とLi氏はコメントしています。また「ソトラシブの併用療法への先行投与により、DoRの中央値が17.9カ月となり、有害事象の発生率が低下したことは、ファーストライン治療における我々の継続的な検討のための参考となります」と述べています。
RMC-4630との併用療法
一方、CodeBreaK 101マスター試験の別の用量検討では、11人のNSCLCを含むKRAS G12C変異腫瘍患者27人にソトラシブの投与と実験的なSHP2阻害剤RMC-4630の用量漸増が行われました。患者は中央値で3ラインの前治療を受けている患者でした。
アムジェン社は、この併用療法は「有望な臨床活性」を示し、特にKRAS-G12c阻害剤未使用の患者において顕著であったと述べています。
11名のNSCLC患者のうち、3名(27%)が部分奏功を達成し、データカットオフ時点で2名が奏功中であり、7名(64%)が病勢コントロールを達成しました。KRAS-G12c阻害剤未使用の6名のORRは50%で、全員が病勢コントロールを達成しました。全体として、被験者の63%にTRAEが発生し、最も多かったのは浮腫と下痢でした。
ソトラシブの第2四半期の売上は7,700万ドルで、そのうち米国の売上は5,100万ドルでした。米国では2021年5月に、KRAS G12c遺伝子変異を有する成人の局所進行性または転移性NSCLCのセカンドライン治療薬として承認されています。またEUでは、今年1月に「ルマケラス Lumykras」というブランド名で承認されています。
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