マイクロサテライト安定性BRAF V600E変異大腸癌でビラフトビ併用にオプジーボ追加で高い奏効率

colorectal cancer

極めて予後も悪いBRAF V600E変異転移性大腸癌患者に対して、ファイザーが、2021年9月、BRAF阻害薬ビラフトビ(Braftovi、encorafenib)、MEK阻害薬ビニメチニブ(メクトビ、Binimetinib)および抗EGFR抗体薬セツキシマブ(Erbitux、cetuximab)3剤併用に米FDAから承認を得ています。22年2月、BMSとファイザーが新たに発表したデータでは、ビラフトビとセツキシマブに、免疫療法であるPD-1阻害剤オプジーボ(Nivolumab、ニボルマブ)を加えた3剤併用をマイクロサテライト安定性のBRAF V600E変異転移性大腸癌に対する臨床試験結果を発表、良好な奏効率が示されています。

なお、承認されているビラフトビ+ビニメチニブ+セツキシマブの3剤併用も、マイクロサテライト安定性での適用は含まれておらず、同対象での臨床試験が継続しています。これまでは、マイクロサテライト安定性大腸癌に対して免疫療法は無効であったが、今回の結果から、今後の治療薬の関心は、マイクロサテライト安定性のBRAF V600E変異転移性大腸癌への効果と安全性に向かっているといえます。

予後も極めて悪いBRAF V600E変異陽性大腸癌とは

BRAF V600E変異陽性大腸癌は、進行再発大腸癌の約5%で見られ、アンメットメディカルニーズが非常に高い大腸癌のサブタイプと言えます。BRAF V600E変異陽性大腸癌は、BRAF遺伝子変異の中で最も多いV600タイプの転移性大腸がんで、遺伝子変異のない患者さんに比べて、死亡リスクが2倍以上に登ると言われています。極めて予後が不良で、急速に増悪をきたす患者も多くことで、二次以降の治療への移行する割合が低いことや、二次治療以降で特に奏効を期待できる治療方法がないことも課題です。

21年9月、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブが承認(BEACON CRC試験)

エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブの承認は、BEACON CRC試験にもとづいています。同試験は、国際多施設共同ランダム化オープンラベル第3相臨床試験(NCT02928224)で、前治療後に増悪したBRAF V600E変異陽性大腸癌患者が組み入れられ、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ併用群(3剤併用群)とエンコラフェニブ+セツキシマブ併用群(2剤併用群)、イリノテカン+セツキシマブもしくはFOLFIRI+セツキシマブ併用群(対照群)で、対照群と客観的奏効割合(ORR)および全生存期間(OS)を比較する試験において、主要評価項目を達成しています。

この試験結果に基づき、がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の大腸癌に対して、承認を取得しています。

ビラフトビ+セツキシマブにオプジーボを加えた試験で全奏効率が50%

今回、BMS/ファイザーがNCIと共同で実施している第1/2相臨床試験(NCT04017650)では、転移性大腸がんで投与されている化学療法の1種類、2種類以下治療を受けた後のマイクロサテライト安定転移性大腸がんに対してのビラフトビ+セツキシマブ+オプジーボ3剤併用療法を評価しています。

2022年2月のデータカットオフで、毒性で評価可能な患者26名、奏効で評価可能な患者23名の全例が登録されています。年齢中央値は60歳(範囲:32-85)、16名(62%)が女性でした。グレード3以上の治療関連有害事象(AE)は15%の患者に発生しています。全奏効率は50%で、病勢コントロール率は96%でした。無増悪生存期間(PFS)の中央値は7.4カ月でした。

奏効した11名の患者の奏効期間中央値は7.4カ月。全生存期間(OS)中央値は15.1ヵ月。追跡期間中央値は11.4ヵ月、奏効期間中央値は7.4ヵ月でした。E-slicesでは、X線写真の奏効例と細胞生存率の低下、非奏効例と細胞生存率の上昇の間に一致がみられました。なお、同じ患者層でビラフトビ+セツキシマブ併用またはニボルマブ非併用を評価する別の第2相試験(SWOG2017)が進行中です。

新たな免疫療法の役割とマイクロサテライト安定性大腸癌対象での効果に焦点が移る

極めて予後も悪く、しばしば急速な進行を経験し、標準化学療法に反応しないことが示されているBRAF V600E変異転移性大腸癌患者に対して、ビラフトビ+ビニメチニブ+セツキシマブ併用が昨年承認されましたが、今年2月、ビラフトビ+ビニメチニブに抗PD-1抗体オプジーボを追加して、マイクロサテライト安定性大腸癌を対象とした臨床試験で良好な奏効率という結果が出ました。このことは、これまで免疫療法が無効であったマイクロサテライト安定型転移性大腸がんでの新しい免疫療法の役割を示しているといえます。現在承認されているビラフトビ+ビニメチニブ+セツキシマブ併用も、引き続きマイクロサテライト安定型BRAF V600E変異転移性大腸癌を対象に臨床試験が続いており、今後は、マイクロサテライト不安定性のBRAF V600E変異転移性大腸癌への治療効果と安全性が求められる結果として焦点が移っていくことが考えられます。

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