世界中のオンコロジー領域の専門家がシカゴに集まり、2022年のASCO・米国臨床腫瘍学会年次総会が6月3日から、シカゴでおよびオンラインで開催されます。今回のASCO2022では、2,800以上の演題が、オンラインでは2,400以上の追加の演題が受付されています。これらの多くの演題は200以上の発表に分散され、4万人以上の専門家が出席します。
ASCO 2022では、多くの注目の最新データが発表され、それらの開発品の中には、今後のオンコロジー領域における画期的な変革を与える影響を持つものも少なくありません。
ASCO 2022で注目の演題5選。今年最大のがん領域での国際学会が6月3日から開催
製薬業界特化のリサーチ会社デルブインサイト社(DelveInsight社)では、ASCO2022の開催に先立ち、注目の演題を領域ごとにピックアップ、レポート販売で提携をしているInsights4 Pharmaが、同社発表情報を日本語に翻訳、編集してお届けいたします。今回は、婦人科がんでの発表演題に注目をします。
Delveinsight: ASCO 2022 PREVIEW GYNECOLOGIC CANCER
婦人科がんの中でも、卵巣がんは、最も死亡率の高いがんであり、ほとんどの疾患が進行した状態で診断されるため、卵巣がんを治療することは困難です。婦人科がんは、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、腟がん、外陰がんの5種類がおもに女性に発生する婦人科系の悪性腫瘍ですが、稀な腫瘍として卵管がんがあります。現在、クロヴィス・オンコロジー社やシーゲン社などが、卵巣がんに関する様々な有望な臨床結果やデータを発表する機会として注目しています。
アブストラクト5544:クロヴィス社のルカパリブ。HRD陰性患者への維持療法データ
デルブインサイトでは、卵巣がんにおいて、クロヴィス・オンコロジー社がプラチナ感受性再発卵巣がん患者におけるルカパリブの維持療法の有効性と安全性に対する演題に注目しています。
ASCO2022では、クロヴィス・オンコロジー社が、PARP阻害剤ルカパリブのプラチナ製剤感受性の再発卵巣癌で、相同組み換え欠損症を伴わないHRD陰性の患者に対する維持療法を評価した第3相ARIEL3試験の結果を公表する予定です。
2017年9月、クロヴィス社が、ルカパリブの第3相ARIEL3試験において良好な結果を発表、この結果のデータに基づき、2018年4月、ルカパリブは、相同組換え欠損(HRD)陽性状態を有する再発上皮性卵巣がんの維持療法としてFDAから承認を取得しました。
ルカパリブは、白金製剤感受性患者における白金製剤ベースの化学療法後のスイッチ維持療法として試験中であり、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成しております。BRCA変異癌患者における無増悪生存期間中央値は、ルカパリブ群16.6カ月、プラセボ群が5.4カ月でした。
スイッチ維持療法へのアンメットニーズ
現在までのところ、スイッチ維持療法として使用されているFDA承認のPARP阻害剤は3剤(オラパリブ、ニラパリブ、ルカパリブ)のみです。これら3つのPARP阻害剤は、HRD陽性患者におけるスイッチ維持療法として承認されていますが、HRD陰性患者はベバシズマブによる維持療法を受けなければならないため、大きなアンメットニーズに直面しています。
プラチナ感受性再発卵巣がんにおいては、PARP阻害剤によるスイッチ維持は、ベバシズマブと比較してより大きな効果をもたらしています。そのため、ASCO2022で発表予定の、クロヴィス社の、PARP阻害剤ルカパリブのプラチナ製剤感受性の再発卵巣癌で、HRD陰性に対する維持療法を評価した第3相ARIEL3試験の結果に注目しています。
アブストラクトLBA5500:ATHENA-MONO試験。クローヴィス社のルカパリブ単剤維持療法
クローヴィス社が、第3相ATHENA-MONO試験の結果を発表します。この試験は、卵巣がんにおける白金製剤ベースの一次化学療法奏効後の維持療法としてルカパリブ単剤を評価しています。
2022年3月、クローヴィス社は、進行性卵巣がん患者を対象に、バイオマーカーの状態に関係なく、白金系化学療法による治療後の初回維持療法として、プラセボと比較したATHENA-MONO試験の結果を発表しました。PFS(mPFS)中央値は、ルカパリブ群で20.2カ月、プラセボ群で9.2カ月でした。HRD陽性のサブグループのmPFSは28.7カ月で、プラセボ群では11.3カ月でした。
同社は、本試験のデータが、2022年第2四半期にFDAに提出されるラベル拡大のための新薬追加申請(sNDA)のサポートとなることを明らかにしています。また、ATHENA-MONO試験のLBA(Late Breaking Abstract)がASCO 2022カンファレンスで発表され、先に発表されたトップラインデータを補完する本試験の追加第3相データを発表する予定です。
アブストラクト5507: チソツマブ ベドチンの再発・転移性子宮頸がんのファーストライン
チソツマブ ベドチンは、ジェンマブとシーゲンが共同開発している医薬品で、化学療法(セカンドライン/サードライン)中または施行後に病勢進行した再発・転移性子宮頸がんの成人患者を対象に承認されています。チソツマブ ベドチンの単剤療法は、GOG-3023/ENGOT-cx6/innovaTV204試験で報告された臨床的に意味のある腫瘍応答率および応答期間(DoR)に基づき、前治療歴を有するr/mCCに対して米国の加速承認を受けています。
再発・転移性子宮頸がんのファーストラインで評価をしているinnovaTV 205試験
シーゲン社は、チソツマブ ベドチン(Tivdak)と他の抗がん剤を併用した再発転移性子宮頸がん患者を対象としたinnovaTV 205試験の用量拡大コホートの中間結果を発表する予定であることを明らかにしています。今回、再発・転移性子宮頸がん患者のファーストラインおよびセカンドライン治療に焦点を当て、innovaTV 205試験の用量拡大コホートの中間結果を発表する予定です。
innovaTV 205は、再発・進行子宮頸がん患者のファーストライン治療およびセカンドライン治療のための単剤および他の特定の抗がん剤との併用の第1/2相試験として評価を行っています。2021年9月、欧州腫瘍学会年次総会において、第Ib/II相inovaTV 205試験の2つのコホートからの中間結果が発表されています。両組み合わせとも、有望で持続的な抗腫瘍活性を示し、管理可能で許容可能な安全性プロファイルを実証しています。
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