6月3日土曜日のASCO(米国臨床腫瘍学会)2022年次総会の発表によると、ギリアド・サイエンシズ社のトロデルヴィ(Trodelvy) (サシツズマブ ゴビテカン)は、第3相TROPiCS-02試験において、前治療歴のあるHR+/HER2転移性乳がん対象で、化学療法と比較してPFS(無憎悪生存期間)中央値を34%改善させました。PFS中央値は、化学療法は4カ月であるのに対し、トロデルヴィは5.5カ月でした。

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トロデルヴィ、HR+/HER2転移性乳癌での効果を示すも、化学療法に比べわずか改善
ギリアド社は3月、同試験が主要評価項目を達成し、トロデルヴィは化学療法に対して生存期間が有意に改善したと発表したが、この結果が臨床的に意義のあるものかという点では、特にこのグループにおいて「臨床的に意義がある」と考えるかどうかについては、「幅広い見方がある」との見解を示し、疑問を投げかけました。
ギリアド社の見解を裏付けるべくTROPiCS-02の結果が公表された直後に行われたFirstword Pharma社による調査によると、調査対象の腫瘍学者の4分の3が、2カ月未満のPFSベネフィットではあるが、臨床的に意味があると考えていることが判明しました。
ASCOでは、1.5ヶ月のPFS中央値の改善とともに、6ヶ月後のPFSレートがトロデルヴィで46%、化学療法で30%、12ヶ月後ではそれぞれ21%、7%であったことが示されました。
トロデルヴィが効くという原則が証明できた。薬は使用されるでしょう
ASCOの最高医学責任者であるJulie Gralow氏は、「本当に臨床的に意味のある差が現れたのか、という意見もあることでしょう。ここで本当に重要なのは、この薬が効くという原則が証明できたことです。この薬は、使われるでしょう。」と述べました。
1年後に進行していない可能性が5分の1ある治療法
このデータについて、ASCOの乳がん専門家Jane Lowe Meisel氏は、「PFSの中央値の差は、臨床的には有意ではないように見えるかもしれませんが、このようなランドマーク解析に注目することは重要です。」と述べています。
「前治療を重ねた患者さんがクリニックに来院した際に、1年後に進行していない可能性が5分の1ある治療法の選択肢を提供できるということは、臨床の観点から考えると非常に大きな意味があります。」とMeisel氏は述べています。また、この結果は、トロデルヴィが奏効した患者に対しては、より良くより長く奏効するようであることを示しています。
「有意差のない」生存率の傾向
全生存期間(OS)に関しては、ASCOで発表されたデータによると、最初の中間解析では、化学療法が12.3カ月であるのに対し、トロデルヴィが13.9カ月と「有意差のない」傾向が見られました。一方、全奏効率は、ギリアド社のトロデルヴィが21%であるのに対し、化学療法は14%で、両群の臨床効果率はそれぞれ34%、22%でした。さらに、奏効期間の中央値は、トロデルヴィが7.4カ月であったのに対し、化学療法は5.6カ月でした。
ギリアド社のCEOであるDaniel O’Day氏は、今回の結果について、すぐに規制当局との協議を開始することを示唆しました。「我々は、議論を進めるための、非常に強力な結果を得ているが、FDA及び、その他の機関がこの試験の最終的な生存データを待つことを望んでいるかは不明です。私達はデータの熟成期間を待つ必要があります。(OSの)最終解析は2024年になる可能性が高いですが、それ以前に何が解明されるかを見ていきましょう」と述べました。
第3相TROPiCS-02試験の結果
第3相TROPiCS-02試験では、内分泌療法、CDK4/6阻害剤、及び、2〜4種類の化学療法を受けたHR+/HER2転移性乳がん患者543名が参加しました。半数以上の患者が3つ以上の療法を経験していました。
ASCOで発表された結果によると、トロデルヴィを投与された患者の74%がグレード3以上の治療起因性有害事象(AE)を経験し、化学療法群の60%と比較して、好中球減少がそれぞれ51%と39%、下痢がそれぞれ10%と1%で発生しました。一方、投与中止に至ったAEは、トロデルヴィ投与群では6%、化学療法群では4%に認められました。また、トロデルヴィ投与群では、死亡に至る事象が6件発生しましたが、本剤との関連性が評価されたのは1件のみでした。
ギリアド社は2020年にイミュノメディックス社(Immunomedics)を210億ドルで買収することで、2種類以上の前治療を受けたことのある転移性トリプルネガティブ乳がんに対して承認されているトロデルヴィを獲得ています。
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