ASCO2022「乳がん」で注目演題8選。とくに高い「エンハーツ」「トロデルヴィ」の発表に関心

breast cancer asco

世界中のオンコロジー領域の専門家がシカゴに集まり、2022年のASCO年次総会が6月3日から、シカゴおよびオンラインで開催されます。ASCO2022では、多くの注目の最新データが発表されますが、本記事では、パートナー企業デルブインサイト社と共に、「乳がん」に関する演題の中から特に注目するべき演題をピックアップしました。これらは、今後の乳がんの治療領域において画期的な変革を与える可能性があります。

ASCO2020年次総会:注目の演題8選

乳がんに関して8つの演題をピックアップしております。その中でも、注目の2つは、「DESTINY Breast04試験」と「TROPICS2試験」です。DESTINY Breast04試験は、アストラゼネカ/第一三共のエンハーツが、HER2低発現低転移性乳がんに対して実施している臨床試験で、TROPICS2試験は、ギリアド社のトロデルヴィがHR+/HER2-乳がん対象で実施しています。これらの試験が成功した場合の乳がん治療への影響は非常に大きく、同腫瘍領域における治療での大きな変革が可能になるとしています。

上記の試験以外でも、乳がんにおけるCAR-T療法など新たな治療法への取組や最新データの発表、新たなクラスなどをはじめとした乳がんの注目演題をご紹介します。

LBA 1001:TROPiCS-02試験、重度前治療のHR+/HER2-乳がん患者でトロデルヴィが主要評価項目を達成

まず注目のトロデルヴィのTROPiCS-02試験ですが、本試験では、ギリアド・サイエンシズ社の抗Trop-2 ADC(抗体薬物複合体)トロデルヴィ(Trodelvy)が第3相試験で主要評価項目を達成し、病勢進行または死亡のリスクを30%減少させたことが明らかになっております。

第3相TROPiCS-02試験では、HER2陰性、ER陽性の3次治療の乳がんを対象に、トロデルヴィが化学療法と比較されました。すでに3次治療もしくはそれ以降のトリプルネガティブ乳がん、化学療法後/PD-(L)1の尿路上皮膀胱がんで承認されているトロデルヴィにこの新たな臨床結果は大きな前進となりました。

さらに、本試験では、副次評価項目である全生存期間についても引き続き評価を行っており、その結果は、ASCO2022のオーラルセッションで、6月4日に発表される予定です。なお、ギリアド社がトロデルヴィの臨床効果について肯定的な回答をしなかったことを考慮すると、学会での発表結果の内容に注目が集まります。

LBA3:アストラゼネカ/第一三共のエンハーツのDESTINY Breast04試験、HER2低発現転移性乳がんに対する3相臨床試験

DESTINY-Breast04 は、エンハーツ(トラスツズマブ・デルクステカン)のHER2低発現転移性乳がん患者を対象とした HER2陰性 治療薬の第 3 相試験で、従来療法と比較して、無増悪生存期間および全生存期間に統計的に有意で臨床的意義のある改善を示した試験です。

エンハーツは、転移性HER2陽性乳がんに対する3次治療薬として、すでに米国などで承認されています。アストラゼネカによると、主要評価項目および主要副次評価項目を満たしており、この結果はすべて2022年6月5日にASCO2022学会でPlenary Sessionとして発表される予定です。さらに、アストラゼネカ/第一三共と共同で、無作為第3相試験「DESTINY Breast03」の安全性追跡データも発表します(アブストラクト1000)。

アブストラクト1022:サーモニクス社の経口SERMであるラソフォキシフェン

次にデルブ社が注目したのは、サーモニクス(Sermonix)社の強力な経口選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるラソフォキシフェンです。これは、ER陽性進行性乳癌のプレシジョンメディシン治療において重要な役割を果たす可能性があります。

エストロゲン受容体変異に対するラソフォキシフェンのバイオアベイラビリティと作用は、転移性患者で多く認められています。アンメットニーズが高いESR1変異による内分泌抵抗性を発症した患者に有望である可能性を示唆しています。

ESR1変異による内分泌抵抗性乳がんを対象としたサーモニクス社のリード化合物ラソフォキシフェンは、現在、第2相試験段階にあります。ヴェルファーマ(Valpharma: Pharmaceutical)社のエノボサーム(Enobosarm)とともに、数十年にわたり使用されてきた承認薬のタモキシフェン以外に、二次治療および三次治療において新たな経口選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)となる可能性があります。

この第2相試験のデータが、6月6日のASCO2022国際学会でポスターディスカッションセッションとして発表される予定で、大変期待されています。

アブストラクト528:サノフィ社のAMEERA-4、閉経後ER+/HER2-原発性乳がん術前治療オープン試験

サノフィ社が期待しているAMEERA-4にも注目です。閉経後のER+/HER2-原発性乳がん患者を対象とした術前治療オープン試験の発表です。最近のAMEERA-3の失敗の後、AMEERA-4試験の終了を発表しましたが、サノフィが、AMEERA-4試験の術前治療オープン試験を2022年6月6日にASCO2022学会でポスターセッションで発表する予定です。

過去の同社の経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)が期待外れだったこともあり、今回発表のER+/HER2-原発性乳がんの閉経後患者におけるアムセネストラント(amcenestrant)またはレトロゾール(letrozole)の運命が気になるところです。

アブストラクトTPS1118: 米メルク、キイトルーダの第3相KEYNOTE-B49試験

米メルクの第3相KEYNOTE-B49試験は、注目ですが現在進行中の試験でもあり、大きなリードアウトは今回のASCOではあまり期待は出来ません。この試験では、キートルーダをHR+/HER2-の局所再発手術不能または転移性乳がん対象で実施している第3相臨床試験です。

キイトルーダは、転移性乳がん(KEYNOTE-355)や早期病変を含むトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において効果を示したことから、化学療法との併用によりHR+/HER2での治療予後が向上する可能性があります。しかし、これまでのPD-1阻害剤は、いずれも乳がん領域で成果を上げることができませんでした。

アブストラクトTPS1121:ヴェルファーマ社のファーストインクラスの経口分子エノボサーム

ヴェルファーマ社の AR+ER+HER2乳がんをターゲットとしたファーストインクラスのエノボサームのENABLAR-2試験
にも注目です。

ヴェルファーマは、イーライリリー社と共同で、同社のエノボサームとVerzenioの併用療法を第3相ENABLAR-2試験をしています。。ENABLAR-2試験では、AR+ER+HER2-転移性乳がんにおいて、palbociclibとエストロゲン遮断薬併用療法の一次治療を受けたことのある患者を対象に、エノボサームとabemaciclib併用療法の有効性と安全性を評価しています。

ER+転移性乳がんに対する第2相試験の結果が、6ヶ月放射線無増悪生存率が43.8%であったことを考えると、第3相試験結果でもポジティブなニュースが期待できます。

アブストラクトTPS1130: 転移性乳がんにおけるCAR-T療法の臨床試験

CAR-T療法は、いままでの臨床試験の成功に見られるように、血液腫瘍に有用であることが証明されています。固形がんよりも血液悪性腫瘍でのCAR-Tの成功率が高い中、乳がんに対するその歩みに注目したいところです。ミネルババイオテクノロジーズが2022年6月6日、ASCO2022のポスターセッションで第1相試験での知見を発表する予定で、デルブ社ではその発表内容に期待と注目をしています。

アブストラクト1021:イーライリリー社のImlunestrant

イーライリリー社のER陽性進行乳がんにおけるESR1変異を対象とした経口SERDのImlunestrantにも注目をしています。
リリー社は、EMBER試験のImlunestrant (LY3484356)単剤療法の結果を発表する予定です。

Imlunestrantは、ESR1変異体において抗腫瘍活性を含む良好な有効性と薬物動態(PK)特性を示しました。本試験の初期試験結果は昨年のASCO2021で発表され、本剤は良好な安全性プロファイルを有していました。

Imlunestrantの単剤療法は、2022年6月6日開催のASCO2022学会のPoster Discussion Sessionにて発表される予定で、良好な結果が得られると期待しています。

ASCO2022で注目の乳がん対象の演題一覧

会社名

演題

治験

適応

抄録番号

発表 

Gilead Primary results from TROPiCS-02: A randomized Phase III study of sacituzumab govitecan (SG) versus treatment of physician’s choice (TPC) in patients with HR-positive/HER2-negative (HR+/HER2−) advanced breast cancer. TROPiCS-02 III HR+/HER2-advanced breast cancer. LBA1001 (Oral Session)  

June 4, 2022

 

11:57PM GMT+5:30

Sermonix Pharmaceuticals Inc. Open-label, Phase II, multicenter study of lasofoxifene (LAS) combined with abemaciclib for treating pre- and postmenopausal women with locally advanced or metastatic ER+/HER2− ELAINEII II Advanced HR+/HER2- breast cancer Abstract: 1022 (Poster Discussion Session) June 6, 2022

10:56 PM GMT+5:30

Eli Lilly A Phase Ia/Ib trial of imlunestrant (LY3484356), an oral selective estrogen receptor degrader (SERD) in ER+ advanced breast cancer (aBC) and endometrioid endometrial cancer EMBER Ia/Ib (ER+) advanced breast cancer and endometrial endometrioid cancer Abstract: 1021 (Poster Discussion Session)  June 6, 2022

 

10:56 PM GMT+5:30

Merck A Phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled study of pembrolizumab plus chemotherapy in patients with HR+/HER2− locally recurrent inoperable or metastatic breast cancer KEYNOTE-B49 III Metastatic Breast Cancer Abstract: TPS1118 (Poster Session) June 6, 2022

 

06:30 PM to 09:30 PM

Veru Inc. Phase III ENABLAR-2 study to evaluate enobosarm and abemaciclib combination compared to an estrogen-blocking agent for the second-line treatment of AR+, ER+, HER2− metastatic breast cancer in patients who previously received palbociclib and estrogen-blocking agent combination therapy ENABLAR-2 III AR+, ER+, HER2- metastatic breast cancer Abstract: TPS1121 (Poster Session) June 6, 2022

 

06:30 PM to  09:30 PM

Minerva Biotechnologies Corporation Phase I/II first-in-human CAR T–targeting MUC1 transmembrane cleavage product (MUC1*) in patients with metastatic breast cancer. MUC1 I Metastatic Breast Cancer Abstract: TPS1130 (Poster Session) 6 June, 2022 06:30:PM- 09:30:PM
Sanofi AMEERA-4: A preoperative window-of-opportunity (WOO) study to assess the pharmacodynamic (PD) activity of amcenestrant or letrozole in postmenopausal patients with ER+/HER2− primary breast cancer AMEERA-4 II Primary Breast Cancer Abstract: 528 (Poster Session) June 6,  2022

06:30:PM to 09:30:PM

Astra Zeneca Trastuzumab deruxtecan (T-DXd) versus treatment of physician’s choice (TPC) in patients with HER2-low unresectable and/or metastatic breast cancer (mBC): Results of DESTINY-Breast04, a randomized, Phase III study DESTINY-Breast04 III Unresectable and/or Metastatic Breast Cancer LBA3 (Plenary Session) June 5, 2022 3:17 PM
Pfizer Overall survival (OS) with first-line palbociclib plus letrozole (PAL+LET) versus placebo plus letrozole (PBO+LET) in women with ER+/HER2− advanced breast cancer (ABC): Analyses from PALOMA-2 PALOMA-2 III ER+/HER2− Advanced Breast Cancer Abstract: LBA1003 (Oral Abstract Session) June 4, 2022 12:45 AM GMT+5:30

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