ロシュ社が、6月1日、ATR阻害剤カモセルチブ(camonsertib RP-3500)のグローバルでのライセンス契約をRepare Therapeutics(以下リペア社)と締結、1億2500万ドルを前払いすることに合意したと発表しました。リペア社は、カモセルチブに関連するマイルストーンとして、最大12億ドルを受け取る可能性があります。この発表でリペア社の株価が時間外取引で20%も上昇しました。
Repare Therapeutics shares rise 18% after news of Roche deal [MarketWatch]
リペア・セラピューティクス社について
リペア社は、プレシジョン・オンコロジーのエリアで、独自の合成致死性アプローチを活用、がんの治療薬を開発しています。CRISPR対応のSNIPRx®プラットフォームを活用し、DNA損傷修復を含むゲノムの不安定性に焦点を当てた標的がん治療薬を系統的に発見・開発しています。
カモセルチブは、現在第1/2相において開発中のATR阻害剤で、同社のリード化合物の一つです。その他に、第1相臨床開発中のPKMYT1阻害剤RP-6306、Polθ阻害プログラム、そしていくつかの前臨床プログラムを保有しています。詳しくは、リペア社のホームページ、reparerx.comをご参照ください。
SNIPRxプラットフォームについて
SNIPRxプラットフォームは、独自のアイソジェニック細胞株を利用したゲノムワイドなCRISPRベースのスクリーニング手法で、新規および既知の合成致死遺伝子ペアと、腫瘍の遺伝子プロファイルに基づいて治療から最も恩恵を受ける可能性が高い対応患者を特定することを目指します。
スクリーニングによって特定された1つ以上のゲノム変化を腫瘍に持つ患者を対象に精密治療薬の開発を可能にし、その結果得られる製品候補から臨床利益を得る可能性が最も高い患者の腫瘍を選択的に標的化するものです。なお、SNIPRx®はリペア社の.の登録商標です。
ATR阻害剤カモセルチブ
ATR阻害剤カモセルチブは、前臨床モデルにおいて単独療法およびPARP阻害剤との併用療法での有効性が示されています。
生化学的および細胞ベースのアッセイにおいて、IC50 値がそれぞれ 1.0 および 0.33 nmol/L と、高い活性を有しており、ATRに対して高い選択性を有し、mTOR(mammalian target of rapamycin)に対して30倍、ATM(ataxia telangiectasia mutated)、DNA-PK(DNA dependent protein kinase)およびPI3Kαキナーゼに対して2000倍の選択性を有しています。
カモセルチブは、現在、進行性固形がん患者を対象とした初期試験を実施中です。AACR(米国癌研究会議)年次総会で第1/2相TRESR試験の結果を発表しています。
単剤療法では、腫瘍の種類やゲノム変化にかかわらず、持続的な臨床的有用性を示すことを発表しています。同社の発表では、全患者の臨床的有用性は43%であり、PARP阻害剤治療が無効であった患者では47%に上昇したと述べています。特に進行性卵巣がんにおいて有望な結果が得られたとしています。
また、同社のCRISPR対応SNIPRxプラットフォームにより予測されたBRCA1およびBRCA2の遺伝子変異を有する腫瘍の患者さんにおいても臨床的有用性が確認されたと述べています。
ロシュ社とのライセンス契約締結
ロシュ社の医薬品提携担当グローバルヘッドであるJames Sabry氏は、「ロシュ社は、プレシジョン・オンコロジーへの新たなアプローチとして期待されるDNA損傷応答領域に注目しています。様々な種類の腫瘍でアンメットメディカルニーズの高い患者に対する新しい治療選択肢としてカモセルチブの開発をさらに進める予定です」と述べました。
今回のロシュとのライセンス契約により、リペア社は全世界の売上高に対して1桁台後半から10桁台前半のロイヤリティを受け取ることが可能です。また、この契約により、リペア社は米国での共同開発および利益分配を50対50で行うことを選択でき、FDAの承認が得られれば米国での共同販促に参加することができます。オプション行使を選択した場合、米国外でのロイヤルティ全額に加え、一定の臨床、薬事、商業、販売のマイルストンを引き続き受け取る資格があります。
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