アイオバンス・バイオセラピューティック(Iovance Biotherapeutics)社が、来週末に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会に先立ち、腫瘍浸潤リンパ球製剤Lifileucel(リフィレウセル)の進行性メラノーマ対象の第2相C-144-01試験コホート4データを発表しました。この発表では、コホート2において36.6%であった奏効率(ORR)が、今回のコホート4では29%と下がっていることから、アイオバンスの株価が、木曜日の時間外取引で15ドルであった株価が7ドル程度まで50%も下落しています。
Iovance Biotherapeutics Announces Positive Clinical Data for Lifileucel in Advanced Melanoma
転移性メラノーマを対象としたC-144-01試験
C-144-01試験(NCT02360579)では、抗PD-1/L1療法による治療後に進行した切除不能または転移性メラノーマ患者178名を対象としており、BRAF陽性の場合はBRAFまたはBRAF/MEK阻害剤による前治療も行っています。今回の発表したコホート4では、87名の患者が登録され、客観的奏効率(ORR)は29%、3名の完全奏効と22名の部分奏効を示しました。奏効期間(DOR)中央値は10.4カ月、追跡期間中央値は23.5カ月と発表しています。
コホート2の試験結果
同社によると、本試験のコホート2における66名の患者データによっても裏付けられておりlifileucelによる1回の治療で、「重度の治療を受けた患者に有意義な利益をもたらす」ことが示唆されたしています。2020年のASCOで発表されていたコホート2のデータでは、ORRは35%であり、完全奏効5例、部分奏効18例でした。このグループのDOR中央値は、中央値36.6カ月フォローアップで中央値に到達しませんでした。
コホート2との比較。ORRと奏功持続期間
今回発表されたデータを2020年に発表のコホート2のデータと比較すると、コホート4では、奏効率が下がり、奏功持続期間も短くなっていることがわかる。コホート2では奏効率36.4%であったがコホート4では29%、奏効持続期間は、コホート2では中央値36.6か月間奏効持続中央値に到達して至いなかったのがコホート4では10か月でした。
リフィレウセルの進行性メラノーマ対象C-144-01試験 (NCT02360579) | |||||
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N | ORR (%) | CRs | PRs | DOR | |
コホート 2 | 66 | 36.4 | 5 | 18 | 36.6か月で到達せず |
コホート 4 | 87 | 29 | 3 | 22 | 10.4か月 |
ORR = 全奏効率 CR = 完全奏効率 PR = partial response. DOR = 奏効持続期間. ソース:企業リリース Evaluate Pharma Insights4が翻訳編集 |
Lower – and shorter – efficacy add to serious doubts about the TIL therapy’s future.
疾患負荷が高かったコホート4
アイオバンス社は、この結果に対して、コホート2比較して、コホート4の患者はベースラインの疾患負荷が高く、予後不良因子として知られるLDH値が上昇している割合が「かなり高い」こと、また、腫瘍病変の数が多いこと、さらに、コホート2では、lifileucel投与前の抗PD-1療法の累積投与期間が約半分であったことを指摘しています。
このことから、「抗PD-1療法の前治療期間の短縮は、lifileucelに対するDORの増加と関連することが示されました」と同社は述べています。
アナリストの評価は?
同社は昨日の電話会議で、10.4カ月の効果持続期間は非常に有意義であり、単剤または2剤併用化学療法では「3カ月半と低い」奏効期間を得られると主張しています。
Stifel社のアナリストによると、持続期間が短くなったことは「特に驚くべきこと」であると書いています。彼らは、この新しいデータによって、このプロジェクトの承認の可能性は変わらない(成功の確率は65%)と考えていますが、市場に出たとしても、ほとんど利用されないと見ています。ピーク時の市場浸透率を30%から15%に引き下げた。
アイオバンス社は現在、メラノーマ、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌の患者を対象とした第2相試験で、より良い結果が得られるという希望を持っていますが、そのうちの1つのアームでは、lifileucelとキイトルーダの組み合わせが試験されています。この併用療法がきちんとした効果を示せば、まだ商業的な魅力を持つかもしれません。
しかし、この試験はすでに肺がん患者において、耐久性に関しても期待はずれのデータを出しています。
アイオバンス社はFDA承認申請を進める
アイオバンス社は、新しいがん新免疫療法である腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)療法の開発・商品化に注力する米国バイオテクノロジー企業です。この新しい免疫療法では、ジェネレーション2(Gen 2)と呼ばれる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法の製造プロセスを短縮し、凍結保存されたTIL製品を活用します。転移性黒色腫を対象として開発を進めているLifileucelは、転移性子宮頸癌を対象としているLN-145とともに同社の主要開発品です。転移性黒色腫と転移性子宮頸がんに加えて、頭頸部扁平上皮がん、非小細胞肺がん、慢性リンパ性白血病の治療に対してもTIL療法と末梢血リンパ球療法を研究しています。
アイオバンス社ホームページ www.iovance.com
アイオバンス社は現在、5億1600万ドルの資金を保有しており、lifileucelを発売するのに十分な資金あると主張しています。しかし、株価は5年ぶりの安値であり、今回の発表による株式市場のネガティブな反応にもかかわらず、暫定CEOのFrederick Vogt氏は、コホート4の「ポジティブな結果を報告できることを嬉しく思います。この結果に加え、コホート2の支持となりうる結果を用いて」8月のFDA申請に向けて前進していると述べています。同社はどうしてもこのプロジェクトを成功させる必要があります。なお、経営陣は資金調達が控えていることを否定しています。
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