シーゲン社、HER2陽性転移性大腸がん対象の臨床試験でツカチニブ併用の良好なトップライン結果発表

colorectal cancer

シーゲン(Seagen)社が、治療歴のあるHER2陽性の転移性大腸がん(mCRC)対象とした、ツカチニブとトラスツズマブ併用試験、第2相臨床試験MOUNTAINEERにおいて良好なトップライン結果を発表しました。この試験で得られたデータは、FDAの迅速承認プログラムに基づいてFDAに承認申請するための新薬追加申請の基礎となります。

Seagen Announces Positive Topline Results of Pivotal Phase 2 Clinical Trial of TUKYSA® (tucatinib) in Combination With Trastuzumab in HER2-Positive Metastatic Colorectal Cancer

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シーゲンの臨時CEO兼最高医学責任者であるDr. Roger Dansey氏は、「治療歴のあるHER2陽性転移性大腸がんは、高いアンメット・ニーズから新しい治療が求められています。持続的な奏効を伴う優れた抗腫瘍活性と忍容性のある安全性プロファイルに基づいて、このツカチニブ併用療法が患者さんを支援する可能性に興奮しています」と述べています。

これらのデータに基づいて、大腸がんを対象としたツカチニブの新薬承認申請を行うべく、FDAと協議を行う予定です。

アンメットニーズが高いHER2陽性大腸がん

大腸がんは、米国におけるがん関連死亡原因の第3位であり、2022年には約52,580人が死亡していると予測されています。米国における大腸がん患者の約22%が進行期と診断されています

HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)は転移性大腸がん患者の3~5%で過剰発現しています。大腸がんのHER2を特異的に標的とする治療薬は、未だFDAから承認されていません。

ツカチニブ(ツキサ, TUKYSA, tucatinib)について

ツカチニブは、経口のHER2タンパク質のチロシンキナーゼ阻害剤です。In vitroでは、ツカチニブはHER2およびHER3のリン酸化を阻害し、MAPKおよびAKTシグナルと細胞の成長(増殖)を抑制、HER2発現腫瘍細胞において抗腫瘍活性を示しています。In vivoでも、ツカチニブはHER2発現腫瘍の増殖を抑制を示しています。ツカチニブと抗HER2抗体であるトラスツズマブの併用は、in vitroおよびin vivoにおいて、どちらかの薬剤を単独で使用した場合と比較して、抗腫瘍活性が向上していることが示されました。

ツカチニブは、2020年4月に米国FDAから、2021年2月に欧州医薬品庁および英国医薬品規制庁から承認され、現在世界36カ国で承認されています。米国、カナダ、欧州以外の地域では、メルク(MSD)社が、アジア、中東、中南米などの商業化の権利を有しております。米メルクは、米国、カナダ、欧州以外の地域での販売権を有しており、今回の結果について当局と協議しながら、その地域での申請を加速していく予定です。

MOUNTAINEER試験について

MOUNTAINEER試験では、米国および欧州で実施されている臨床試験です。標準治療歴のあるHER2陽性の転移性または切除不能な大腸がん患者117名を対象に、トラスツズマブ単剤またはツカチニブとトラスツズマブとの併用投与する多施設共同非盲検第2相臨床試験です。

Tucatinib Plus Trastuzumab in Patients With HER2+ Colorectal Cancer(clinicaltrial.gov)

主要評価項目は、ツカチニブとトラスツズマブの併用投与を受けた患者における客観的奏効率です。副次的評価項目として、奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間、併用レジメンの安全性と忍容性が挙げられています。

今回の臨床試験のトップラインでは、盲検独立中央審査(BICR)により、38.1%の客観的奏効率(cORR)[95%信頼区間(CI):27.7、49.3]が確認されています。BICRによる奏効期間(DoR)中央値は12.4カ月[95%CI:8.5、20.5]であった。ツカチニブとトラスツズマブの併用療法は概ね良好な忍容性を示し、最も一般的な(20%以上)治療起因性の有害事象は下痢、疲労、悪心、輸液関連反応であり、これらは主に低悪性度であった。

なお、MOUNTAINEER試験の全データは、2022年6月29日から7月2日までスペイン・バルセロナで開催されるESMO消化器癌世界会議で、発表する予定です。

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