ベーリンガー、経口PDE4B阻害剤の第2相でIPFの進行を遅らせる有望な中間データを発表

IPF

ベーリンガーインゲルハイムが、特発性肺線維症(IPF)を対象とした最新の臨床試験の「有望な」中間データを発表した。同社の経口PDE4B阻害剤BI 1015550の第2相試験の初期データで、IPF患者の肺機能低下速度を遅くすることが示すデータが、すでに承認されているIPF対象の治療薬の投与を受けている患者と、服用をしていない患者双方において得られたとしています。

特発性肺線維症(IPF)とは

IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)とは、肺胞に「傷」ができ、その修復のためにコラーゲンなどが増加して間質が厚くなる病気です。

そのため、咳が出たり、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなります。特発性肺線維症は次第に進行し、肺が固くなり膨らみにくくなるため、呼吸が維持できなくなる場合もあります。初めの頃は安定していても、ある時期から進行しはじめることもあります。

一般に肺線維症の約半数は、発症原因がわかりません。このような肺線維症を「特発性肺線維症」と呼びます。しかし、喫煙が、特発性肺線維症を発症する危険因子であると考えられています。50歳以上で発症することが多く、男性に多い傾向があります。

特発性肺線維症は、「特発性間質性肺炎」の一種で、国の指定難病に指定されています。一定の条件を満たせば、医療費助成制度が受けられます。(参照:塩野義製薬:特発性肺線維症(IPF)について

PDE4B阻害剤BI 1015550とは?

経口ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤として、抗線維化効果と抗炎症効果を併せ持つ効果が期待されているBI 1015550は、2022年2月 にFDAから画期的治療薬の指定を受けてベーリンガーインゲルハイムが開発中です。今回発表の第2相臨床試験(NCT04419506)では、PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素の働きを阻害することで、IPF患者の肺機能低下の抑制効果を評価しています。

IPFの病態には炎症性サイトカインと呼ばれる物質の働きが深く関わるとされ、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)という酵素が過剰に発現しています。PDE4はcAMPという物質をAMPへ分解する酵素として働き、cAMPの分解が亢進し細胞内のcAMP濃度が低下することで免疫細胞からの炎症性サイトカインの産生を亢進します。

米国胸部疾患学会(ATS)で発表の予定

このデータはNEJM誌に掲載(Trial of a Preferential Phosphodiesterase 4B Inhibitor for Idiopathic Pulmonary Fibrosis)され、月曜日に開催される米国胸部疾患学会(ATS)でも発表され、今年後半には第3相臨床試験が開始される予定となっています。

「PDE4Bサブタイプの優先的な阻害は、PDE4阻害の既知の抗炎症および抗線維化特性を利用できるため、IPFの治療において有益である可能性がある」と、研究者はNEJM誌で述べています。

肺機能悪化を送らせている第2相の中間結果

第2相試験では、成人IPF患者147名を対象に、BI 1015550またはプラセボを1日2回、12週間投与する群に無作為に割り付けられています。抗線維化薬を含むIPFの標準的な薬剤を服用している患者は、試験期間中、それらの薬剤を継続して服用することが可能です。主要評価項目は、12週目における強制換気量(FVC)のベースラインからの変化でした。

ベーリンガーインゲルハイムによると、BI 1015550を投与された患者は、12週間後にFVCの「わずかな改善」を達成したのに対し、プラセボ群ではFVC値が減少したとのことです。具体的には、BI 1015550を投与された患者のFVCの変化の中央値は、承認された抗繊維症薬を使用していない場合は+5.7mL、抗繊維症薬のバックグラウンド使用では+2.7mLであった。プラセボ群における対応するFVCの変化は、それぞれ-81.7mLと-59.2mLでした。

さらに、同社は、「BI 1015550は、IPF患者の肺機能悪化を遅らせることにおいて、プラセボより優れている確率が98%以上である 」と述べています。

安全性と有害事象等の事例

BI 1015550は、12週間にわたりIPF患者において「許容できる」安全性と忍容性を示し、本試験は副次的評価項目も満たしたと述べています。

下痢は最も頻度の高い副作用で、10%以上の患者に発現し、すべての事象は「非重篤」と報告されたという。しかし、研究者らは、投与中止に至った有害事象はすべてBI 1015550の投与を受けた患者で報告されており、この13人の患者のうち10人はバックグラウンドで抗線維化療法を受けていたことを指摘しています。

また、研究者らは、PDE4阻害剤は前臨床毒性試験において血管炎と関連していることを指摘した。この試験では、「IPFの増悪を疑い、血管炎を疑った 」という未確認の症例が1例報告されています。

この症例は、バックグラウンドで抗線維化療法を受けていた患者におけるもので、本試験における2つの致命的な有害事象のうちの1つで、もう1つはCOVID-19に関連した肺炎であった。著者らは、「BI 1015550の第3相試験において、特に注目すべき有害事象として血管炎を評価することが重要であろう 」と述べています。

IPF、その他の肺線維症での後期試験について

ベーリンガーインゲルハイムのCarine Brouillon氏は、第2相の結果について、「BI 1015550に対する自信を強化し、重要な第3相試験プログラムにむけて加速していく」と述べています。これらは、IPF患者642人を対象とした第3相試験と、進行性線維性間質性肺疾患(PF-ILD)患者694人を対象とした第3相試験で、いずれも8月に開始される予定です。

参照記事

Boehringer Ingelheim’s latest investigational treatment slowed lung function decline in people living with idiopathic pulmonary fibrosis [PR Newswire]
Trial of a Preferential Phosphodiesterase 4B Inhibitor for Idiopathic Pulmonary Fibrosis [NEJM]

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