BMSのマバカムテン、閉塞性肥大型心筋症対象で、米FDAがミオシン阻害剤として初の承認を発表

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ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が4月28日木曜日、成人の症候性閉塞性肥大型心筋症(NYHAクラスII-III)の機能と症状を改善する治療薬としてマバカムテン(Camzyos mavacamten)がFDAから承認されたことを発表しました。同社の発表によれば、マバカムテンは、閉塞性肥大型心筋症を対象とした根本的な病態生理を標的とした、アロステリックかつ可逆的な心筋ミオシンの選択的阻害剤でファーストインクラスの承認薬となるとのことです。閉塞性肥大型心筋症は、肥大型心筋症の一つで、限られた症状緩和法以外に有効な治療選択肢はありません。BMSは、2020年11月のマイオカーディア社を約131億米ドルで買収し、マバカムテンを取得、閉塞性肥大型心筋症を対象として2022年の承認を目指していました。

閉塞性肥大型心筋症とは

現在、症候性閉塞性肥大型心筋症は、米国とEU全体で約16万~20万人が診断されていますが、限られた症状緩和法以外に有効な治療選択肢はありません。患者は一般的に40~50代で診断され、治療は長期化することが予想されます。診断を受けたことがある人は、閉塞性肥大型心筋症を有する人の約25%、非閉塞性HCMを有する人の約10%に過ぎないと推定されています。

閉塞性肥大型心筋症は、心筋症の一つです。心臓の筋肉、心筋の異常が心臓の機能に異常をきたすのが心筋症ですが、高血圧や弁膜症などの病気がないにもかかわらず、心筋の肥大がおこる症状の場合があります。心筋が過度に収縮し、左室を拡張する能力が低下する慢性の進行性疾患で、衰弱症状や心機能障害の発症につながる可能性があります。心房細動、発作、心不全、心臓突然死のリスクの増加とも関連しています。

閉塞性肥大型心筋症とは、左室心筋の異常な肥大に伴って生じる、左室の左房から左室へ血液を受け入れる拡張機能の障害を主とする病気で、通常その分布が不均一であることが特徴的です。肥大の部位・程度や収縮の程度などにより収縮期に左室から血液が出ていく流出路が狭くなる症状があります。

診断には心エコー検査が有用で、左室肥大の程度や分布、左室流出路 狭窄 の有無や程度、心機能などを調べます。確定診断のため、心臓カテーテル検査、組織像を調べるための心筋生検なども行われることもあります。500人に1人が罹患していると推定されています。

治療は、症状を抑える、または、薬物療法に抵抗性がある場合など、侵襲的治療の対象となります。侵襲的治療は、中隔縮小治療(SRT:Septal Reduction Therapy)と呼ばれており、中隔心筋切除術と経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA:Percutaneous Transluminal Septal Myocardial Ablation)が外科的な治療がなれます。

筋肉の収縮に、ミオシンとアクチンというタンパク質が影響

筋肉の収縮に、ミオシンとアクチンというタンパク質が影響を与えます。筋肉に刺激が伝わるとミオシンでできた太いフィラメントの間にアクチンで構成される細いフィラメントが滑り込むことで筋肉は収縮します。そのため、ミオシンをコントロールすることで、アクチンに付着するミオシン頭部の数を調節することができ、ミオシンとアクチンタンパク質とのクロスブリッジ形成を制御するアロステリックかつ可逆的な効果が期待されます。ミオシン阻害剤マバカムテンが、治療薬として、ミオシンをエネルギーを浪費する超弛緩状態に移行させることで効果を発揮します。

BMS、2020年11月にマイオカーディア社の買収でミオシン阻害剤マバカムテンを取得

マイオカーディア社は、閉塞性肥大型心筋症対象のファースト・イン・クラス治療薬候補マバカムテンを保有していました。BMSは買収によって、この化合物を取得します。買収総額は約131億米ドルで、マイオカーディア社はブリストル マイヤーズ スクイブの100%完全子会社となりました。20年11月の買収完了時に、マバカムテンに関して、閉塞性肥大型心筋症対象としての承認を22年に目指すとともに、非閉塞性肥大型心筋症を含む追加適応症についても同化合物の可能性を最大限追求したいと述べています。なお、マイオカーディア社の買収によって、臨床段階治療薬であるdanicamtiv(旧MYK-491)とMYK-224、前臨床段階のACT-1とLUS-1も取得している。
BMSは、2022年四半期の業績報告でも,早速マバカムテンの承認に関して報告をしている。

BMS業績発表記事:BMS第1四半期業績発表。レブロジルのジェネリック侵食速度速く、今年の売上横ばいと見通し変更

第3相EXPLORER-HCM試験に基づいたマバカムテンの承認申請

今回の申請は、NYHAクラスIIまたはクラスIIIの閉塞性 HCM 患者 251 名を対象とした第3相EXPLORER-HCM試験(NCT03470545)のデータに基づいています。参加者は全員、測定可能な左室駆出率(LVEF)が55%以上、ベースライン時の左室流出路(LVOT)ピーク勾配が50mmHg以上でした。

30週目の結果では、マバカムテン投与群の37%が主要評価目標を達成したのに対し、プラセボ投与群では17%であった。主要評価項目は、ピーク酸素消費量(pVO2)の1.5mL/min/kg以上の増加とNYHAクラスの少なくとも1つの低下、またはNYHAクラスの悪化なしにpVO2の3.0mL/min/kg以上の増加のいずれかの複合であった。

心不全に関する強調警告

LVEFを低下させるマバカムテンは、収縮機能障害による心不全を引き起こす可能性があり、添付文書には、そのリスクに関する強調警告が記載されています。EXPLORER-HCM試験において、30週間の治療期間中、ベースラインからのLVEFの変化量の絶対値の平均は、マバカムテン群で-4%、プラセボ群で0%であった。また、本試験において、LVEFが 50%未満に低下した患者は、プラセボ群の 2%に対し、カムジオス群の6%であった。BMSは、これらのマバカムテンを投与された患者は、治療を中断した後、LVEFが回復したと述べています。

この申請に関するFDAの決定は当初、今年の初めに予定されていたが、提案されているリスク評価緩和戦略(REMS)に関連する情報を評価する時間を与えるため延期されていました。21年末のICERの報告書では、一部の患者における本剤の作用機序の長期的な臨床的影響について懸念が示されていました。一方、BMSは、最近、マバカムテンが重度の症状を有する閉塞性肥大型心筋症を対象とした第3相VALOR-HCM試験(NCT04349072)において、中隔縮小療法(SRT Septal Reduction Therapy)の必要性を有意に減少させたと発表している。VALOR-HCM試験の結果は、今月初めに開催された米国心臓病学会(ACC)の年次学術集会で発表されました。マバカムテンの承認申請は、欧州でも申請され、現在審査中です。

第3相VALOR-HCM試験の発表記事:BMSのマバカムテン、FDAによる承認審査決定が4月末に迫る中で、更にポジティブな臨床試験データを発表しました

参照記事

U.S. Food and Drug Administration Approves Camzyos™ (mavacamten) for the Treatment of Adults With Symptomatic New York Heart Association Class II-III Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy (HCM) to Improve Functional Capacity and Symptoms
マイオカーディアの買収を完了。業界をリードする心血管系事業を一層強化

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