サビザブリン「圧倒的な有効性」で新型コロナ重症者対象試験早期中止。ヴェル社株価200%急騰。

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ヴェル(Veru)社は4月12日月曜日、サビザブリンが、新型コロナウイルス感染症で入院中の重症患者を対象とした第3相試験において、プラセボと比較して死亡を55%減少させたと発表した。CEOのMitchell Steiner氏は、本試験がこの集団において臨床的・統計的に意味のある生存率の向上を実証した初めての試験であるとし、「抗ウイルス作用と抗炎症作用を併せ持つサビザブリンは、入院中の新型コロナウイルス感染症の中・重症患者様が必要としている経口治療薬になると強く信じています」と述べています。

ヴェル社は、「圧倒的な」有効性のため、独立データモニタリング委員会の助言により、試験を早期に中止したと発表し、このニュースにより同社の株価は203%以上急騰しました。

オンコロジーを主要開発領域とするヴェル社

米国マイアミに本社があるバイオテック企業であるヴェル社は、1980年に創業し、2009年にNASDAQ市場に上場をしています。新型コロナウイルスをはじめとするウイルス性疾患や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、乳がんや前立腺がんの治療薬開発に主眼を置く一方で、セクシュアル・ヘルス部門においては、FC2 Female Condom®(女性用コンドーム)を持ちます。このFC2は、意図しない妊娠と性感染症を防ぐ二重のプロテクションとしてFDAから承認され、米国で販売されています。(同社ホームページ www.veruhealthcare.com

「微小管」を阻害する細胞骨格破壊因子「サビザブリン」

サビザブリンはチューブリン重合阻害剤(Tubulin polymerisation inhibitor)で、「微小管」を阻害する細胞骨格破壊因子で、抗炎症作用と抗ウイルス作用を併せ持つファースト・イン・クラスの新規化合物です。

「微小管」というのは、細胞の中のウイルス複製工場にウイルスを効率的に運ぶ役割を持っており、微小管からウイルスが輸送され、複製され、組み立てられ、細胞から放出されます。この「輸送」のはたらきをおさえることでウイルスの複製が始まらないようにします。また、微小管は、サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム)を含む炎症過程にも関与しています。

この働きから、サビザブリンは、新型コロナウイルス感染症、ARDS、サイトカインストーム(新型コロナウイルスで死に至る原因)、敗血症性ショック、前立腺がんの治療に効果が期待されています。

サビザブリンは、以前はVERU-111として知られていましたが、前立腺癌を対象としたフェーズ3試験も実施されており、転移性乳癌の3次治療として、特定の患者様を対象としたフェーズ2b試験も計画されています。FDAは、サビザブリンに対して、2022年1月にファストトラックの指定を行っています。

サビザブリンの第3相臨床試験概要

サビザブリンの新型コロナウイルスの治療薬としての第3相臨床試験は、二重盲検プラセボ対照無作為試験で、ARDSと死亡のリスクが高い中等度から重度( WHO 4)の新型コロナ入院患者を対象として実施されました。

米国、ブラジル、コロンビア、アルゼンチン、メキシコ、ブルガリアで実施され、扱われた新型コロナ感染症は、デルタ型とオミクロン型の変異体によるものでした。患者は、1日1回9mgのサビザブリンまたはプラセボに無作為に割り付けられ投与されました。 また、患者は、ギリアド・サイエンシズのレムデシビル、デキサメタゾン、抗IL6受容体抗体、JAK阻害剤などの新型コロナウイルスに対する標準治療も受けることができます。主要評価項目は、投与60日目までに死亡した患者の割合です。

圧倒的な有効性により治験は早期中止

最初の150名の患者を対象に行われた解析では、サビザブリン投与群の死亡率が20%であったのに対し、プラセボ投与群では45%でした。なお、副次的な有効性評価項目については、現在も解析中です。一方、サビザブリンの忍容性は良好であり、プラセボと比較して臨床的に重要な安全性への所見は認められませんでした。

同社は、今後、緊急時使用承認(EUA)の申請を含む次のステップについてFDAと協議する予定であると述べている。サビザブリンは、ARDSのリスクが高いコロナウイルス感染症患者の治療薬として、1月にFDAにより迅速承認されていますが、ヴェル社によると、FDAがEUAを承認した場合、需要に応じた十分な量の薬剤を製造できるよう、製造工程の規模を拡大しているとのことです。また、米国政府との事前購入契約に向けても協議を進めています。

変異株にかかわらず薬理活性が期待されるサビザブリン

同社の最高科学責任者のGary Barnette氏は、「今回の結果は、サビザブリンの薬理活性が新型コロナウイルスの変異株に関わっていないことを意味しています。この治療オプションがすぐに利用可能となり、次の臨床的に重要な感染症の波が来たときに備えることができます」と述べています。

抗ウイルスと抗炎症効果、両方が期待できる経口治療薬サビザブリン

新型コロナウイルスの治療薬としては、大きく3つに分類されます。ウイルスそのものの侵入を防ぐ抗体医薬品、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス治療薬、そしてウイルスによる炎症を抑える抗炎症薬です。サビザブリンは、細胞への「微小管」を阻害する細胞骨格破壊因子で、抗ウイルス作用だけではなく、抗炎症作用を併せ持つユニークな特長を持ちます。

新型コロナ治療薬、経口薬への期待

ワクチンのブースター接種もすすみ、徐々にコロナ以前の生活様式に戻りつつある中でも、新規感染者の数以上に指標として大事なのが、病床の使用率、重症者数と死者数です。そのため、効果の高い治療薬、院内、自宅でも服用が可能な経口薬への期待は大きいといえます。当初はギリアド社のレムデシビルが治療薬として承認されたが、レムデシビルは静注投与であった。現在、ファイザーのパクスロビッド(ニルマトルビル)とメルクのモルヌピラビルの2種類が「経口薬」として承認されている。日本では、塩野義製薬が経口治療薬を承認申請中です。



 

これらの経口治療薬は軽症から中等症の患者が対象で、病状悪化のリスクがある患者に適応承認されています。サビザブリンは、これらの経口治療薬と併せて投与されることで、中・重症度の患者の死亡リスクを下げる効果が期待されています。

日本で利用されている主な新型コロナウイルス治療薬

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出典:AnswersNews「新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】」から抜粋編集

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