【コラム】JMDC COOに聞く!リアルワールドデータでのアウトカムの考え方

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(株)JMDCのCOO杉田氏が、製薬企業におけるリアルワールドデータ(RWD)などデータ活用のヒントをお伝えする本コラム。

製薬企業とリアルワールドデータの議論をさせていただいていると、レセプトデータで処方の履歴はわかるのですが、その結果どうなったかというアウトカムのデータはないのでしょうかという質問が多々あります。今回はRWDにおけるアウトカムの考え方・可能性を考えます。

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杉田:JMDCのCOOの杉田と申します。今月は「リアルワールドデータでのアウトカムの考え方」というテーマでお話したいと思います。アウトカムというのは治療の結果、疾患がどうなったかという臨床経過を指しますが、それがリアルワールドデータにて補足可能なのか、今後どうなっていくのかという点に関して考察してみたいと思います。

穴吹:製薬本部マネージャーの穴吹と申します。本記事では私がインタビュワーとなって、進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。アウトカムデータは、製薬企業の皆様も非常に関心が高い部分ですよね。臨床試験データではもちろん試験のコアなデータとしてしっかり収集、活用されていますが、リアルワールドではまだまだ整備されきれていない部分ですね。このあたりまずはなぜ整備されきれていないのか、からお考えを教えていただけますでしょうか。

杉田:そうですね。さまざまな理由があると思いますが、大きい2点だけ触れますと、まず一つ目はそもそもアウトカムとなる指標が一定でないケースがたくさんあることです。

例えば、うつ病などは典型的でしょうか。診断基準はある程度定まったものがありますが、それに対する薬剤の投与基準やその結果の評価はかなり医師によってブレがあります。薬剤を投与した結果、よく眠れるようになった、食事が取れるようになった、落ち込む度合いが減った、というのは良いアウトカムだと思いますが、それは定性的であり過去や他の患者さんと比較がしづらいですし、医師によっても判断がずれてくるでしょう。それをなるべく標準化するための抑うつの尺度なども存在しますが、それを外来で定期的に取るということもリアルワールドではあまりやられていないと思います。

結果として、アウトカムはあるけれども一定ではなく、他者と比較しづらいものになります。

―精神疾患などは確かにそういう疾患が多そうですね。そして疾患の重症度が複数の症状や検査値に基づくスコアによって定義されている場合も、臨床上のプラクティスとしては忙しい医師は必ずしも常には計算しないかもしれませんね。そうするとデータとしてあったとしても年に1回などになり、アウトカムがどう変化したかという分析には使いづらいことになりますね。
アウトカムが整備し切れていない理由の2点目はいかがでしょうか?

杉田:2点目はアウトカムデータとして存在はするけど、データベース化しづらいという点になります。アウトカムデータは、血液検査の結果であったり、CTやMRIでの画像上の腫瘍の大きさであったり、または血管や腹部エコーなどでの所見の変化であったりしますが、これらは医療機関では全て異なるデータベースに入っていますし、医療機関によってデータの持ち方が違ったりします。

例えば、血液検査の結果は数値や陰性/陽性といったものでありデータベース化しやすいですし、JMDCでも100万人分の血液検査結果は保有していますが、それでも一部の特殊な検査結果は医療機関も紙でしか持っていなかったりするため、データベース化することはほぼ不可能に近いです。また、画像検査やエコーなどの生理学的検査に関しても、画像自体をデータとして匿名化して保有するのはかなりハードルが高く、また読影レポートをデータとして保有するのも不可能ではないですが、文章という定性的な情報を分析できるような形に整えるのは困難です。

以前大手の電子カルテベンダーの方と個人的にお話したことがあるのですが、その方が言うには、電子カルテにフリーテキストで記載されている情報から意義のある情報を抽出して、ある程度整理してデータベースに格納するということはできなくはないが、確実にROIに見合わないコストがかかるためにやりたくない、とのことでした。読影レポートの整頓も同様のロジックでなかなか難しい領域だと思います。

―まだまだアウトカムデータの整備までには時間がかかりそうですね。では今後も当分製薬企業がアウトカムデータを活用できる未来は来ないのでしょうか?

杉田:そうですね。リアルワールドデータ業界は毎年の進歩が凄まじい領域ですので、アウトカムデータが活用される世界はそこまで遠くないと思います。

JMDCを含めて一般血液検査のデータをもつ企業は出てきていますので、それでアウトカムがなんとか測れる疾患はすでに分析可能と思います。自己抗体やリウマトイド因子などの膠原病周りのバイオマーカーやKL-6など間質性肺炎周りのマーカー、腫瘍マーカーなどはすでにデータとして存在しますので、疾患を選びますが、現時点でもすでに分析に活用可能です。

一方でアウトカムの測定に特殊な検査データが必要であったり、希少疾患のように患者数が限定されている疾患に関しては、レジストリのように特化したデータベースが構築されないと厳しいかもしれません。アウトカムデータベースを構築するにしても、データベースベンダーとしてはどうしてもまずは効率性の観点から、なるべく多くの検査項目が多くの患者で集められる方法を検討しますので、上記のような疾患は優先順位としては少し下がってしまう領域になります。

―オンコロジーの領域はどうでしょうか?領域としてはかなり大きく、アウトカムデータが最も必要とされている領域だと思うのですが。

杉田:おっしゃる通り、最も求められている領域だと思います。この領域の分析で最低限必要とされるのは、がんのタイプを判別するために行われている遺伝子検査の結果のデータと、アウトカムとしての画像検査の結果だと思います。このデータを現状保有しているリアルワールドデータベンダーはないのですが、ここは近い将来徐々に使えるようになっていくのではと思っています。

がん患者は、がん拠点病院やがんセンターといった中核病院にかなり集中していますので、いくつかの医療機関と連携できて、画像データなどを抽出できる環境が作れれば、コアとなるデータがある程度の量が集まると思います。すでにそういった取り組みを始めている医療機関も散見されますし、自身の持つデータをもっと患者のために活用したいという医療機関もどんどん増えていますので、医療機関とデータベンダーが連携すればオンコロジー領域のデータの整備は進むのではと思います。

―ありがとうございました。最後に何かございますでしょうか。

杉田:アウトカムデータが整備されることによって、臨床試験の一部がデータで代替できることになりますし、それが試験コストの低減、試験の効率化、ひいては薬剤の上市までの短縮化、患者の健康に寄与することにつながります。また、上市後の薬剤とアウトカムを分析することで、薬剤が効果的な患者像や有害事象が起きがちな患者像など、有効性や安全性に関する新たなアンメットメディカルニーズが見つかるかもしれません。

そういった観点から、個人的にも日本のヘルスケアの将来のために、アウトカムデータの充実は進めていきたい重要な領域と思っています。そのためにも製薬企業の皆様には、現状項目や量共に理想とは程遠いデータしか存在しませんが、分析可能な中で血液検査データのアウトカムとしての活用を進めていただきたく思っております。これまでも製薬業界での利活用が進むことによって、このリアルワールドデータの業界は進歩してきましたので、アウトカムデータにおいても同様のことが起きていけば良いなと願っております。

―ありがとうございます。それでは今回もこのあたりで終了とさせていただければと思います。次回もよろしくお願いいたします。

出典

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