FDAは、12月22日、ファイザーのパクスロビド(日本ではパキロビッド、一般名ニルマトレルビル/リトナビル)を新型コロナウイルス感染症の治療を対象に米国での使用を承認しました。新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス剤としては、米国で初めての承認薬となります。FDAは、入院や死亡を含む病状悪化のリスクが高い12歳以上の軽症から中等症の患者に抗ウイルス薬リトナビルと処方することで緊急承認されたことを発表しました。
FDA医薬品評価研究センター長のパトリツィア・カヴァッツォーニ氏(Patrizia Cavazzoni)は、以下のように述べています。
「今回のパクスロビド承認は、新型インフルエンザが出現するこの重要な時期に、新型コロナウイルス感染症と戦うための新たな手段を提供するものです」
経口の新型コロナウイルス治療薬パクスロビドとは?
パクスロビドは、抗ウイルス薬2種類の錠剤で構成される経口薬です。「プロテアーゼ阻害薬」としてウイルスが体内で感染を広げるのに必要なプロテアーゼという酵素の働きを阻む新たに開発された抗ウイルス薬「ニルマトレルビル」2錠と、既存の抗HIV薬「リトナビル」1錠をそれぞれ1日2回、計30錠を5日間かけて投与します。
対象となるのは既往症や肥満などで重症化リスクの高い12歳以上で、FDAは、パクスロビドを、新型コロナウイルス感染症の症状が現れてから5日以内のできるだけ早い段階で服用する必要があると、述べています。また、同剤は新型コロナウイルス感染症への曝露前または曝露後の予防には承認されていません。また、重症もしくは重篤なほかの疾患により入院を余儀なくされている人への使用も避けるべきであるとの禁忌事項も含まれています。
11月発表の臨床試験では入院・死亡リスクを89%削減している
今回の申請は、パクスロビドを症状発現後3日以内に服用した場合、入院または死亡のリスクをプラセボと比較して89%、5日以内に服用した場合は88%減少させたという第II/III相EPIC-HR試験のデータを参照しております。
治療による有害事象は両群間で同等であり、その程度も軽度でした。ファイザー社は、パクスロビドの臨床試験には18歳未満は含まれていないが、承認された投与法では、12歳以上の小児患者でも同等の血中濃度レベルが得られると推測されると述べています。
ファイザー、2022年の生産目標を上方修正
同社は、2021年から2022年にかけて米国政府に1000万件の治療コースを供給する53億ドルの契約を結んでおり、すぐにでも納入を開始できるとしています。また、2022年のパクスロビドの生産量は、従来の8000万個から1億2000万個に増加する見通しとしております。
パクスロビドは、欧州でも承認審査中であり、欧州医薬品庁は、正式な条件付き販売許可をまだ取得していないにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症への治療に一定の状況下で使用することを認可すると先週発表しています。
ファイザー社のCEOであるアルベール・ブーラ氏(Albert Bourla)は、以下の用にコメントを述べた
「この画期的な治療薬は、入院や死亡を大幅に減らし、自宅で服用できることが示されており、COVID-19の治療方法を変えるとともに、医療や病院のシステムが直面している大きな圧力の軽減に役立つことを期待しています」
同社は、2022年にパクスロビドのFDAによる完全承認を求める意向であると述べています。
経口の新型コロナウイルス感染症利用薬に、メルクも続く
メルク社は、自社の経口抗ウイルス剤候補であるモルヌピラビル(Molnupiravir)について、先月のFDA諮問委員会において、僅差で支持を得た後、リスクの高い患者への緊急使用認可を申請しています。モルヌピラビルはEUでも審査中であり、英国ではすでにラゲブリオ(Lagevrio)の名で認可されています。