ファイザー、遺伝子治療用AAVキャプシドでVoyager社と契約締結

ファイザー社は、Voyager Therapeutics社のRNA駆動のTRACERスクリーニング技術に由来するアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドへのアクセスを得るために、潜在的に6億ドル以上となりうる契約を締結したことを発表しました。ファイザー社の希少疾患研究部門のチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであるセン・チェン氏は10月6日水曜日、このキャプシドを神経疾患や心血管疾患の遺伝子治療薬の開発に使用することを検討、Voyager社のこれまでの成果に感銘を受けていると述べています。

Voyager社によれば、同社のプラットフォームに由来するAAVカプシドは、心筋へのトロピズムが向上し、血液脳関門を通過する能力を示しています。また、前臨床試験において、あるカプシド候補では、従来のAAV9と比較して、脳内での導入遺伝子の発現が1000倍以上に増加したことを示したとのことです。また、別のカプシド候補では、従来のAAV9と比較して、心筋への導入や後根神経節のデターゲティングが「著しく向上」したとしています。

より安全な遺伝子治療法とは?

アンドレ・テュレンヌ氏が6月に退任した後、Voyager社の暫定CEOを務めているマイケル・ヒギンズは、今回のファイザー社との取引について、「従来のAAV血清型よりも低用量で、オフターゲットのリスクが少なく、より特異的に目的の細胞や組織を標的とする新規AAVキャプシドを同定するための、当社のTRACERプラットフォームの可能性を強調するものである」と述べています。

今回の契約により、ファイザー社はTRACERプラットフォームから中枢神経系と心臓のトロピズムに合わせて選択されたカプシドを評価する権利を得ます。ファイザー社は、Voyager社の社内パイプラインで計画されているものとは異なる2つの未公表の導入遺伝子を組み込んだAAV遺伝子治療法の開発に独占的に使用するためのカプシドをオプションとして提供することができます。

ファイザー社はVoyager社に対し、契約一時金として3,000万ドルを支払うほか、2つのオプションの行使料として最大2,000万ドル、マイルストーンとして最大5億8,000万ドルを支払います。また、Voyager社は、一段階的な売上ロイヤリティを受け取ることになります。

挫折の後の朗報

今回の契約は、Voyager社にとって、ここ数年の一連の挫折の後に、ようやく届いた明るい話題です。ハンチントン病の遺伝子治療薬VY-HTT01の臨床試験は、昨年、化学、製造、管理に関する問題でFDAの臨床試験保留処分を受けましたが、現在は解除されています。

一方、パートナーであったNeurocrine Biosciences社は、8月にパーキンソン病の遺伝子治療プログラム「VY-AADC」の共同研究から撤退しましたが、これもFDAによる保留を受けてのことでした。また、アッヴィは、昨年タウおよびアルファシヌクレインのベクター化抗体の共同研究を中止しています。

残る安全性への課題

一方、遺伝子治療分野全体では、安全性に関する問題が多く発生し、開発の足かせとなっています。数週間前には、ファイザー社がデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬であるferdistrogene movaparvovecの臨床試験において、筋力低下の報告を受け、試験プロトコルの修正を余儀なくされました。アステラス製薬は、X連鎖性筋管性ミオパチー患者を対象とした実験的な遺伝子治療薬AT132の試験において、4人目の患者が死亡したことを公表し、BioMarin社は、前臨床試験において肝臓腫瘍が認められたため、遺伝子治療薬BMN307のフェニルケトン尿症の試験を保留せざるを得なくなっています。