抗アミロイドβ抗体アドヘルム(アデュカヌマブ)承認の余波。門戸が大きく広がるのか?

6月7日、FDAが、臨床的有用性(臨床症状の悪化抑制)の予測可能性が高いバイオマーカーであるアミロイドβプラークの減少に対してのADUHELMを実証臨床試験のデータに基づいて迅速承認をした。このアドヘルム(アデュカヌマブ)と同様に、アルツハイマー病の主要バイオマーカーであるアミロイド脳プラーク減少を示している開発品は他にもあり、この承認の余波は大きな波紋を呼びそうである。

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18年ぶりのアルツハイマー病治療薬の承認とのことで、アドヘルムの承認は大きな話題となっている。この承認では、メカニズム的なバイオマーカーを認めていることで、今後のアルツハイマー治療薬に関して大きく門戸が開かれたとも言える。ただ、アドヘルムに続く開発品は、真の意味での新規性はなく、規制面でのサポートも得られないかもしれないこともあり、アドヘルムほどの熱量は持つべきではなく、冷静さは必要です。

臨床症状の悪化抑制の予測可能性が高いバイオマーカー、アミロイドβプラークの減少

米国FDAは、ADUHELMの米国での早期承認を、脳内のアミロイドβプラークを減少させるバイオマーカーという証拠を挙げて正当化した。この新しいエンドポイントは、物議を醸す動きがあるが、いくつかの企業は急いで、自社のアミロイドベータMAbsの失敗した研究を調べているはずである。

2012年に中止をしたバピネウズマブ(Bapineuzumab)/ファイザー/ジョンソン・エンド・ジョンソン

ファイザー/ジョンソン・エンド・ジョンソンのバピネウズマブですが、いくつかの第3相試験に失敗して2012年に開発を中止していますが、発表されたデータを調べてみると、確かにバピネウズマブは脳のアミロイド負荷に効果があり、ある大規模試験ではプラセボに対して名目上の統計的有意性を示しています。

2つ目の試験でも、プラセボに対して数値的な差が認められましたが、これはp=0.159でした。NEJM誌に掲載された結果によると、残りの2つの第3相試験では効果が認められなかったものの、血漿中のアミロイドβがプラセボに対して強く増加したことから、少なくとも脳内のアミロイドが除去されたことが示唆されています。

Lilly社のソラネズマブ(solanezumab)とドナネマブ(donanemab)

Lilly社のソラネズマブは、12週から80週の間に血漿アミロイドβの上昇を促し、Expedition試験とExpedition-2試験では、脳脊髄液中のアミロイドβの減少において、プラセボに対して統計学的に有意な結果が得られましたが、Expedition-3では、既存のアミロイドプラークに対する効果は認められませんでした。

Lilly社は、ソラネズマブの開発の復活よりも、ドナネマブ(donanemab)に注力するでしょう。ドナネマブは、すでにこの脳内のアミロイドβプラークを減少というバイオマーカーに対して素晴らしい効果を示しています。しかし、これは比較的小規模な試験であり、同社は第3相プログラムを開始している。

ロシュ社の抗アミロイドβ抗体の開発

多くのアミロイドβを標的としたプロジェクトが、その言葉通りの結果を出していることは事実である。ロシュ社のクレネズマブ(Crenezumab)だけが脳内アミロイドベータ活性の証拠を欠いているように見えるが、これは2019年にCread試験とCread-2試験が急遽中止された後、発表されたデータがないためであるといえる。

同社のガンテネルマブ(Gantenerumab)も、高用量でのオープンラベルの延長で、第3相試験ではないにもかかわらず、アミロイドベータを低下させることが示されている。注意点としては、このバイオマーカーの測定方法が異なるため、アドヘルムのラベルに記載されている効果との直接比較が難しいことが挙げられる。

注目される今後の試験結果とバピネウズマブの米国特許切れ

Evaluate Pharma社によると、上記の抗アミロイドβ抗体の動きに加え、今後発表されるであろう試験結果とバピネウズマブの特許状況に注目が必要としている。

今後、記憶喪失患者を対象としたsolaのA4試験や、早期アルツハイマー型認知症を対象としたエーザイ/バイオジェンのlecanemabの試験であるClarity ADが来年中に終了する可能性があり注目されます。さらに、バピネウズマブの主要な米国特許が今年から切れることにも注目が必要です。

数年間のデータ独占権の恩恵を受けることができますが、正式な知的財産権がないことは、アドヘルムの年間費用が56,000ドルであることに悩む医療機関にとっては興味深いことでしょう。近年、EQRX社とCoherus社の少なくとも2社が、低価格の医薬品を発売することを目的として設立されています。まだまだ目が話せない状況が続きそうです。

抗アミロイドβ抗体(選択)
臨床試験 被験者数 対象患者 効果のサマリー
バピネウズマブ Bapineuzumab
Study 3001 1,100 軽度・中等度のApoE4キャリア 71週目のPIB-PETによるSUVRのベースラインからの変化が、0.5mg/kgでは-0.05、プラセボでは+0.02(p=0.159)
Study 3000 901 軽度・中等度のApoE4非キャリア PIB-PETによるSUVRのベースラインからの変化が、71週目のプールされた用量で-0.01であったのに対し、プラセボでは+0.01であった(p=0.654)
Study 302 1,121 軽度・中等度のApoE4キャリア 71週後のPIB-PETによる脳内アミロイド蓄積量が、プラセボ群の+0.1に対し、0.5mg/kg群ではベースラインから0.0増加(p=0.004)
Study 301 1,331 軽度・中等度のApoE4非キャリア 71週後のPIB-PETによる脳内アミロイド蓄積量は、0.5mg/kgおよび1.0mg/kgともにプラセボと比較して差がなかった(p=0.19および0.47)
ソラネズマブ Solanezumab
Expedition 1,000 Mild-moderate AD 80週時点でのCSF Aβ40総量のベースラインからの変化が-1,902.1pg/mlであったのに対し、プラセボでは+1,325.4pg/mlであった(p=0.002)
Expedition-2 1,040 Mild-moderate AD 80週後のCSF Aβ40総量のベースラインからの変化が-876.4pg/mlであったのに対し、プラセボでは+3,033.1pg/mlであった(p=0.001)
Expedition-3 2,129 Mild AD No effect on preexisting amyloid plaques
アデュカヌマブ Aduhelm
Emerge 1,638 Early AD 78週目におけるAβPET複合SUVRのベースラインからの変化が、プラセボ群の+0.014に対して、高用量群では-0.264(p<0.0001)
Engage 1,647 Early AD 78週後のAβPET複合SUVRのベースラインからの変化が、プラセボ群の-0.003に対して、高用量群は-0.235であった(p<0.0001)
Prime (ph1) 197 Prodromal or mild AD 54週目のAβPET複合SUVRにおいて、プラセボ群の+0.014に対し、10mg/kg群はベースラインから-0.263の変化(p<0.0001)
ガンテネルマブ Gantenerumab
Scarlet Road 799 Prodromal AD 最高用量での非盲検延長試験では、1年後および2年後にAβ陽性の閾値を下回った患者は、ベースライン時の37%に対し、58%および50%
Marguerite Road 389 Mild AD 最高用量での非盲検延長試験では、1年後および2年後にAβ陽性の閾値を下回った患者は、ベースラインでは14%であったのに対し、33%および55%
クレネズマブ Crenezumab
Cread/BN29552 813 Prodromal-mild AD 中止, no published data on Aβ levels
Cread-2 806 Prodromal-mild AD 上記試験のため中止
ドナネマブ Donanemab
Trailblazer-Alz (ph2) 266 Early symptomatic AD 76週目のアミロイドプラークレベルのベースラインからの変化が-85.06センチロイドであったのに対し、プラセボは+0.01センチロイド
SUVR=standard uptake value ratio; all studies ph3 except where indicated. Source: scientific publications. Evaluate Pharma

関連情報

Why not bapineuzumab?/Evaluate Pharma

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