通院通学、大型施設いつもどおりで大丈夫?対策徹底施設での感染率が家庭より低い

最近の研究で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの際、家に閉じこもっていることで、かえって感染の拡大を招いていたことが示されました。この研究は、シカゴ大学と全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)が発表したもので、会社や学校が感染対策を適切に実施することで、一般家庭での感染率を下回っており感染拡大がすすんでいる際に、一般市民が巣ごもりを徹底し、しっかりとした感染対策を施している組織や施設を閉鎖することは感染増加を防ぐという意味で逆効果の可能性もあったことを示唆している。

感染対策で職場や学校での感染率が大幅に低下

2018~19年にホワイトハウス経済諮問委員会の主任経済顧問であったシカゴ大学の経済学教授Casey Mulligan氏は、パンデミック時に学校、病院、老人ホーム、食品加工工場、美容室、航空会社から収集したデータを分析しました。同氏は論文で以下のように述べています。

「公衆衛生政策の提言では、職場、学校、病院などの施設での安全性が低いことを前提としていることが多いが、パンデミック発生後の1ヶ月以内に、経営者の方々は、スクリーニングの実施やマスク、空気の流れの改善などの予防策を実施しました。これらの迅速な対応により、当初、職場などでの感染率は一般的に家庭での感染率を大幅に上回っていたものの、大幅に低下しました。これらの施設が感染予防対策を導入することで、職場や学校に行く方が家にいるよりも感染対策として安全であると言えます。」

パンデミック時の個々の感染対策についても同様です。大規模な組織は、より効果的な空気ろ過装置や除菌装置などを投資する資金を持っており、社会的距離を置くことやマスクをすることなど、感染対策として守るべき手順の遵守を徹底することが一般家庭より出来ることも指摘しています。

学校、企業、その他の施設は、空気の流れの調整、感染予防対策のアクリル板の設置、遵守状況の監視、独自の検査サービスの実施など、家庭では行わない、あるいは行うことができないさまざまな予防策を実施しております。その一方で家庭は、「独房のような感染ゼロの場所」ではないため、家庭での感染率が非常に高くなっています。

例えば、小中学校の生徒や職員の感染は、地域社会からの感染が学校内での感染より20倍も高かったデータもあります。同様に、大学生や航空会社のパイロットの学校、職場での感染率は、一般の人々の感染率よりも明らかに低いものでした。

2020年の「自宅待機命令」は、革新的で効果的な感染拡大防止戦略で後手に回った可能性

デューク大学の医療従事者の感染率は、ロックダウン中の緩和策を導入する前は、一般社会の感染率よりも高く、167%であったが、その後、感染率は一般に比べ31%に低下しました。ノースカロライナ州の学校では、対面式の生徒とスタッフの感染率は一般の23%、ウィスコンシン州の学校では、一般の18%でした。

デューク大学の医療ネットワークでは、すべての患者とスタッフに対するユニバーサルマスキングの有効性を確信していると述べ、研究に参加した病院では、ランチルームの閉鎖、握手の禁止、目の保護の義務化、物理的なバリアの設置など徹底されています。

多くの施設や組織が、感染の可能性のある人をスクリーニングしたり、隔離したり、部門間の接触を制限したりしています。また、一部の企業(特に航空会社や病院)では、ウイルスを根絶するか、少なくともウイルスの存在を減らす効果のある空気ろ過システムを導入しています。

このような予防策が家庭に浸透していないことから、同氏は「遠隔学習や医療機関への通院を控えることは、感染の拡大を遅らせることにはならない。むしろ、そのような施設や組織が何らかの感染予防措置をとっている場合は、逆効果になっているのではないでしょうか?学生は通常の学校の校舎で、医療機関の患者は通常の予約した場所に行くべきです。学校や医療分野では、感染率が非常に低いという最高のデータがあります」と指摘しています。

同氏は更に、従業員が健康であるにもかかわらず、施設や会社を閉鎖したいと思う経営者はいないはずで、予防策を徹底することで、感染の拡大を遅らせることができるとして、政策立案者は少なくともその可能性を認めるべきだと述べています。

家庭ではほとんど行われない経営者の予防措置が、感染拡大抑止に対し最も大きな違いを生みます。これは、感染率が高い場合に特に当てはまります。感染対策として、感染率の高いエリアで過ごす時間を、感染がほとんど起こらない環境にシフトすることで、感染を減らすことができるのは明らかです。病気の流行が高いときに、学校や会社を閉鎖するというのは逆効果であると同氏は強調しています。

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