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新型コロナワクチン 健康被害、誰が賠償?…途上国へのアクセスに懸念

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[ブリュッセル ロイター]低所得国の人々が新型コロナウイルスワクチンの予期せぬ副反応で健康被害を受けた場合、その賠償責任は誰が負うのだろうか。それはまだ明確になっておらず、新型コロナウイルスとの闘いにおいて大きな課題となっている。

ロイターがこの分野の議論に精通した6人とともに閲覧した機密文書によると、世界保健機関(WHO)は公平なワクチンの配分を優先しており、金銭的な補償の問題はこれまでのところ解決されていない。

こうした問題は、2009~10年に起こったH1N1豚インフルエンザのパンデミックでも生じている。当時も、潜在的な補償コストに対する懸念が、低所得国にワクチンを届けるWHOの取り組みを妨げた。一部の保健専門家は、今回も同じ過ちを犯す危険性があると懸念している。

COVAX 賠償責任はまだ不明確


WHOなどが主導する新型コロナウイルスワクチンの国際的な供給の枠組み「COVAX」では、92の低所得国が21年末まで無償または低価格でワクチンの供給を受けることになっている。しかし、健康被害が生じた際の賠償責任の条件は曖昧なままだ。

明確な条件が示されなければ、低所得国の人々は政府に賠償を求める可能性がある。このため、低所得国がCOVAXへの参加を見送り、結果的にパンデミックを長期化させるリスクがあると専門家は指摘する。

WHOとともにCAVAXを主導するGAVIアライアンスは、ロイターに対する声明の中で「AMC(Advance Market Commitment=ドナーからの拠出金によってワクチンを供給する仕組み)の対象国に課せられる可能性がある経済的な義務に対処しながら、責任と補償の問題を解決しようとしている」とコメントした。

COVAXのワクチンを無償または低価格で利用する資格を持つベトナムは、この国際的な枠組みから供給されるワクチンを利用する可能性は低いとしている。ベトナムの保健当局者は、製薬会社と個別に交渉した供給契約のほうがCOVAXより条件の透明性が高い、とロイターに語った。同じくAMCの対象となっているケニアのラシド・アマン保健省副長官は、潜在的な健康被害の責任を誰が負うべきなのかを述べるのは時期尚早としつつ、一部の責任はワクチンメーカーが負うことを期待していると話している。

COVAXは、WHOとGAVIが来年末までに必要だとしている160億ドルの資金のおよそ4分の1を受け取っている。しかし、このスキームでは、高・中所得国はワクチンの賠償責任を自力で解決しなければならない。ロイターが入手した文書によると、自ら資金を拠出して自国用のワクチンを確保する国は「自国で承認されたワクチンの配備と使用について、あらゆる責任を負うことになる」とされている。このグループには、欧州連合(EU)諸国や中国、アルゼンチン、イラン、イラク、南アフリカ、メキシコなどの中所得国が含まれている。

COVAXとの交渉に関わったEUの高官は「何か問題が起きた場合、この取り決めによって参加国が非常に高い賠償を支払うことになる可能性がある」とロイターに語った。この高官は、EUが製薬企業と個別に交渉している取引には、企業に潜在的な賠償責任を負わせる条項が含まれていると指摘。賠償の問題が拠出金は支払ってもCOVXからワクチンを購入しない理由の1つだとした。

アクセスの障壁に?


米国はCOVAXへの資金拠出を拒んでおり、代わりに製薬企業と個別に取り引きしている。その中には、メーカーに対する免責も含まれている。一方、中国は人口の1%分をCOVAXから購入すると発表した。

国際的に承認された新型コロナウイルスワクチンはないが、WHOは年内に接種が始まると見込んでいる。新型コロナウイルスワクチンの開発は急ピッチで進んでおり、予期せぬ事態によって多額の賠償が発生するリスクがある。

H1N1インフルエンザが大流行したときも、WHOは低所得国にワクチンを届けるのに苦労した。その理由の1つが、高所得国と同様に低所得国も賠償請求の対象とすることで製薬企業と合意していたからだと、WHOは2011年の報告書で認めている。その報告書は「一部の被援助国は、WHOの被援助国協定に含まれる賠償責任条項が、購入国が受け入れたそれと同じであることを十分に説明していないと感じていた」と締めくくられている。

H1N1で死亡した推定50万人のほとんどは低所得国の人々だった。新型コロナウイルスはこれまでに約3800万人に感染し、少なくとも100万人以上が死亡している。

現在、世界で200種類近くの新型コロナウイルスワクチンが開発されている。多くの政府は、製薬会社が大きな財務的リスクをとって前例のないスピードでワクチンの開発・製造に取り組んでいることを認めている(ワクチンが市場に出るまで、通常は10~15年かかる)。

そうしたコストの一部を納税者が負担することについては広いコンセンサスがあり、多くの高所得国は、健康被害が生じた際に賠償金を支払うことができる基金を持っている。しかし、COVAXのワクチン供給を受ける低所得国には、そのような補償制度や基金の原資がない。

これは、保険がないことで多額の支払いに直面したり、潜在的な被害がまったく保証されなかったりする可能性があることを意味している。国境なき医師団のディミトリ・エイニケル氏は「私たちは、このような仕組みが、健康被害への賠償責任を負うことができない、あるいは負うことができない低・中所得国におけるワクチンへのアクセスの障壁となるのではないかと懸念している」と話す。

関係者によると、WHOの最大の資金提供社の1つであるゲイツ財団も、9月に開かれた保健専門家との会合で同様の懸念を示したという。ゲイツ財団の広報担当者は、ロイターに対し「供給に影響を与える決定が可能な限り効果的に行われるよう、問題を解決することが財団にとっての最優先事項である」と述べ、そうした問題に対処するための作業が行われていると付け加えた。

課題は賠償費用だけではない。GAVIの機密文書によると、無償または低価格でワクチンの供給を受ける資格を持つ最貧国にも、ワクチン購入のための資金を出し合うよう求めている。来年は支払いが免除されるかもしれないが、ロイターが閲覧した機密文書のコピーによれば、そこには「経済を反映した段階的な拠出金によってワクチンを共同購入することが期待される」と書かれている。

最貧国からの拠出金は、世界銀行など国際的なドナーからの融資や助成金によって賄われる可能性がある。これらは、資金的なギャップを埋めるのに役立ち、来年末までに少なくとも20億回分のワクチンを購入するというCOVAXの目標達成を助けるだろう。

(FrancescoGuarascio、翻訳:AnswersNews)

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