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コロナ禍の表現の型と価値観から、医療広告の可能性をさぐる

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本では2020年2月13日に初の死者が発生し、4月7日には7都府県に緊急事態宣言が発令され人々の生活は一変しました。
仕事やプライベートをはじめ、食事や消費活動、あらゆるコミュニケーションが変化せざるを得なくなり、広告表現もこの事態に対応する必要に迫られました。
そこで今回は、コロナ禍に適応した広告の事例を分析し、今後の医療広告の表現のヒントを模索していきます。

コロナ禍における、判断基準の変化

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が国内でも確認され、危機感が蔓延し始めた春頃、テレビCMや看板に空白が生まれるという事態が起きました。

東日本大震災のときと同様に、有事の際にはこれまでの広告が通用しなくなり、方向性を見直す必要性が生じます。状況の変化により人々の意識も変わり、良し悪しの判断基準が変わるからです。

コロナ禍では、三密(密閉・密集・密接)の回避が行動基準の最優先事項となり、外出が危険視され、できるだけ家で過ごそうという風潮が生まれました。

現段階(2020年8月)では、新型コロナウイルス感染症の感染実態解明ができているとは言えませんし、高齢者と若者、人命と経済、不安と安全、封じ込めと共存など意見も分かれ、良し悪しの判断基準が変わるというよりも、分断されているような空気さえあります。

具体的事例でみる、広告表現の決め方

良し悪しの判断基準が分かれ、行動制限がある状況下で、見る人にポジティブな印象を残す広告はどこが違うのでしょうか。

今回は、「共感の姿勢」「今を楽しむ」「問題提起」の3つの方向性に分類し、事例を紹介していきます。

1.「共感の姿勢」の方向性

ナイキCM「You Can’t Stop Us」

私たちがひとつになれば、誰も止めることはできない。

体さえあれば、誰もがアスリートである。
そしてアスリートである私たちはひとりではない。
スポーツには人々を前進させ、ひとつにする力がある。
たとえどんなどん底であろうと、私たちはもっと強くなってひっくり返す。

誰もスポーツは止められない。
私たちを止めることはできない。

公式ページから https://www.nike.com/jp/you-cant-stop-sport

 

「You Can’t Stop Us」「私たちがひとつになれば、誰も止めることはできない」は、スポーツブランドであるナイキの広告キャンペーンです。

24種の競技、53人の選手が登場しますが、1分30秒の動画で画面は左右に2分割され、異なる競技、異なる選手の動きが「ひとつ」の映像表現になっています。

ジムが閉鎖されたり、スタジアムから人がいなくなっても、どんな状況でも「ひとつ」になって前進しようとする力強さを、4000を超える膨大な映像ソースを使い、圧倒的に表現しています。

オリンピック中止という異例の事態や、大会でクラスターが発生する状況でも、ナイキの価値観は変わらず、強い意思と徹底したアスリートへのリスペクトが感じ取れます。分断ではなく統一、共感という明快な方向性です。

SOMPOホールディングスCM

「介護従事者にエールを」編
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響下で闘うSOMPOケア職員へのインタビュー」編

特設サイト「介護従事者にエールを」
https://www.sompo-hd.com/company/elderly/cheering

SOMPOグループは「介護の現場」にスポットを当てています。自社の介護施設での感染拡大防止対策の徹底を伝えると同時に、従業員へのエール、介護現場のリアルな声を複数の視点から表現しています。

印象的なのは「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響下で闘うSOMPOケア職員へのインタビュー動画」として、介護の現場に立つ職員のリアルな言葉を、そのまま映像で表現している点です。

不安定な状況下で、新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高い介護職の方々の実態と意識と、致死率が高い高齢者の現実を伝える貴重な情報としても機能していますし、現場での具体的な対応も映像化されており、誠実さと安心感と覚悟も伝わってきます。

2.「今を楽しむ」方向性

ポカリスエットCM「ポカリNEO合唱」

大塚製薬のスポーツ飲料、ポカリスエットのCMです。「渇きを力に変えてゆく。」というキャッチコピーで、TikTok上で応募した学生たちが自宅で自撮りした動画をつなげ、「NEO合唱」をつくるという表現が用いられました。

制限のある状況でも諦めず、今を楽しもうというポジティブな姿勢が、若者たちの姿を通じて表現されています。

従来のポカリスエットのイメージ通りの疾走感ある爽やかなイメージを保ちながら、4月の早いタイミングで発表されたスピード感も合わさり強い印象を与えました。

3.「問題提起」の方向性

サイボウズ 「がんばるな、ニッポン。」

テレワーク推進のCM

クラウドベースのソフトウェアを開発するサイボウズ株式会社のCMです。三密の状態と言える通勤時の様子を取り上げ、感染防止のためにもテレワークの必要性と選択肢を提示しています。

広告表現を控えるなかにあって「がんばるな」という明確な立ち位置の、強い表現が話題になりました。サイボウズはコロナ以前から、社会に対する問題提起の姿勢を一貫させています。

働き方に関する課題意識を、コロナというタイミングにあわせて、人々の意識にメッセージとして届けています。明確な立ち位置には当然、賛否が生まれますが、平時からの変わらない企業の価値観があるからこそ、強い表現を打ち出せた事例といえるでしょう。

番外編.「ライブ型」

コロナ禍において、リアルでのライブイベントは開催中止が余儀なくされました。そんな中で、オンラインでの新たな表現が模索されており、その動きはますます活発になると予測されます。

番外編として、ライブ表現の今後の参考として、新しいライブパフォーマンスを少しだけ紹介します。

劇団ノーミーツのオンライン演劇

https://www.youtube.com/channel/UCT7hZww9WW94UmkxXjVMCLg

劇団ノーミーツは、ビデオ通話の画面だけで演劇を作る、新しい試みです。先程挙げたポカリスエットのCMと同じように、リモートワークで当たり前になった、ビデオ通話でのコミュニケーションを表現手段とし、コンテンツを作り上げています。
これもコロナ禍の初期段階に発表され、非常に話題になりました。

ゲーム、フォートナイト(Fortnite)内での米津玄師ライブ

今大人気となっている、オンラインゲームのフォートナイトと音楽ライブのコラボレーションです。
音楽ライブが軒並み中止となる中、ゲームのVR空間でライブパフォーマンスが上演されるという演出が行われました。

数年前から話題になっているVRですが、リアルで集まれない今、回避策としてオンラインでの表現の追求が加速しています。
コロナが収束すればリアルでのイベントは息を吹き返すでしょうが、VRなどのオンライン表現もリアルとは違う価値として、当たり前に使われる様になるかもしれません。

遠隔医療の需要も高まり、プラットフォームも整い始めました。イベントだけでなく、リモートへの新しい可能性が模索されています。


通常時では、表現が伝わるのは「伝えたい相手」の「伝えたい相手の状況」に対して、表現の価値判断基準が定まっているのが前提です。

伝える側の価値観が土台となり、製品などを伝える表現方法や手段が決まり、結果的にデザイン表現やライティング表現に圧力や凄みや説得力が生まれます。

今回のように、状況が一変したり意見が割れたり、先行きが不安で見通しが曖昧な中で、何を言うか/言わないか、が、極めて重要な経営判断になリます。

明確な判断や、論理性だけにはとどまらない表現の解像度が求められます。企業の「価値観」×「表現手段」が一致する具体的事例からは、複数の表現の方向性が示唆され、非常に大きなヒントが得られます。


参考
がんばるな、ニッポン。——これからも、テレワークという選択肢を|サイボウズ
https://ganbaruna-nippon.cybozu.co.jp/

YOU CAN’T STOP US. Nike 日本
https://www.nike.com/jp/you-cant-stop-sport

介護従事者にエールを | SOMPOホールディングス
https://www.sompo-hd.com/company/elderly/cheering

ポカリスエット ギャラリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
https://pocarisweat.jp/cmgraphic/pocarisweat/
ポカリNEO合唱篇

劇団ノーミーツ
https://nomeets2020.studio.design/

Pokémon GO Fest 2020
https://pokemongolive.com/ja/events/fest/2020/

FORTNITEで、8月7日バーチャルイベント開催決定!! | 米津玄師 official site「REISSUE RECORDS」
https://reissuerecords.net/2020/07/31/fortnite%E3%81%A7%E3%80%818%E6%9C%887%E6%97%A5%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%A4%E

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