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武田社、シャイアー社買収でグローバルメガファーマトップ10へ仲間入り。今後の継続的な成長が課題に

Takeda

武田社、5月8日アイルランド製薬大手シャイアー社の6兆8000億円での買収を正式に発表

武田薬品工業は5月8日、アイルランド製薬大手シャイアーを総額約460億ポンド(約6兆8千億円)で完全子会社化すると発表した。この買収は両社の取締役会によって承認されており、今後は株主総会などを開き、両社株主の2/3の同意を得る必要があるが、2019年の上半期には買収は完了する見込みだ。買収により武田社の株主は統合後の会社の約50%を保有することになる。

シャイアー社の各株主はシャイアー社株式1株当たり30.33米ドルの現金、ならびに0.839の当社新株式もしくは1.678の武田社のADRのいずれかを受領する権利を有する。

日本企業による海外企業の買収として、2016年ソフトバンクグループがARM(アーム)社を約240億ポンド(3.7兆円)で買収した規模を超え、過去最高の買収となる。武田社は、この買収で、全世界での売上高が3兆4000億ドル(出典;AnswersNews 武田薬品 シャイアー買収で合意 「6.8兆円」で得るもの、失うもの)と見込まれ、これにより日本の製薬企業にとっても念願であったグローバルメガファーマトップ10の仲間入りを果たすことになる。

武田社のCEOクリストフ・ウェバー氏は就任以来積極的に買収・アライアンス戦略を進めてきた中で、今回のシャイアー社の買収では自社と同規模の製薬企業の買収でメガファーマトップ10入りの第一歩を踏んだ形であるが、今後の安定した継続的な成長が求められており、注力する領域戦略、買収の話題になった当初から懸念されている財務問題の課題も含め、同社の今後の一手へ注目があつまる。

消化器系疾患、ニューロサイエンス、オンコロジー、希少疾患領域への注力

武田社の代表取締役社CEOのクリストフ・ウェバー氏は、「シャイアー社の高度に補完的なポートフォリオとパイプライン、さらには経験豊富な従業員の方々が加わることにより、さらに強いタケダへの変革が加速します。統合後は、消化器系疾患領域、ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域、オンコロジー(がん)領域、希少疾患領域および血漿分画製剤におけるリーディングカンパニーとなります。」と述べている。

シャイアー社の会長である Susan Kilsby氏は、「今回の統合により、当社は、さらに強靭な、豊富な研究開発パイプラインと世界各地に広範な拠点を有するバイオ医薬品企業誕生の一翼を担うことになります。」また、シャイアー社のCEOであるFlemming Ornskov氏は、「真に革新的なポートフォリオとパイプラインを得て、今回の2社の統合は株主に最善の利益をもたらし、さらに世界中の希少かつきわめて特異的な症状を有するより多くの患者さんに、人生をよりよくする機会を提供できるものと考えています」と述べている。

買収・アライアンス戦略、クリストフ・ウェバー氏率いる「新」武田

グラクソ・スミスクライン社のワクチンビジネスの責任者であったクリストフ・ウェバー氏は、2013年にCOOとして武田社に入社、長谷川氏の後任としてCEOに2015年11月就任した。就任後2週間後には、ImmunoGen社とがん領域におけるコラボレーションの契約を締結するなど、積極的な買収、アライアンス戦略を進めていている。

2015年12月には2つのアライアンス契約を発表。テバ社との日本におけるジェネリックビジネス新子会社を設立、アストラゼネカ社には5億7500万ドルでの呼吸器領域の売却をした。このことで、武田社の重点領域が、消化器系領域、オンコロジー領域、そして中枢神経系領域であることを明確にしている。

買収とアライアンス戦略は更に継続する。2016年には、買収には至らなかったものの、当時経営問題が浮上していたスペシアリティファーマValeant社に対してプライベート・エクイティ会社TPGと共に買収を仕掛ける。2017年には、オンコロジー領域に強いアリアド社を2017年初頭に52億ドルで買収した。この買収はそれほど驚きを与えるものではなかったが、オンコロジー領域に対してプレミアム価格を準備するなど武田社がオンコロジー領域の強化をしていることも業界内に示した形だ。

2017年にも、てんかん領域でOvid Theraputics社と、バイオ新薬の開発でサムスンバイオエピス社と、そして、パーキンソン病治療領域におけるアストラゼネカ社との提携などアライアンス戦略を積極的に進めている。今年2018年初頭にも、Denali Therapeutics社と神経変性疾患治療薬の共同開発の発表、さらに6億2800万ドルで消化器系疾患領域における開発後期パイプライン強化を進めるTiGenix社の買収など買収・アライアンス戦略を次々と実践してきた。

「新」武田、グローバルメガファーマトップ10へ

武田薬品はシャイアー買収で世界8位に
出典;AnswersNews 武田薬品 シャイアー買収で合意 「6.8兆円」で得るもの、失うもの

ではこの合併で新たな武田薬品は、グローバルでどのようなランキングになるのか気になるところである。AnswersNewsが、最新の製薬企業世界ランキングから「新」武田薬品の売上の予測値を参照したい。現在、武田薬品は売上高1.75兆円(18年3月期見込み)で19位、シャイアーは1.70兆円(17年12月期)で20位である。これを単純に合算すると3.45兆円で、世界8位に躍り出る見通しとなるAnswersNewsでは、「日本から初めて世界トップ10に入るメガファーマが誕生」すると述べている。(出典;AnswersNews 武田薬品 シャイアー買収で合意 「6.8兆円」で得るもの、失うもの

「新」武田社は全世界での売上が3兆4000億ドルと見込まれ、メガファーマトップ10としての規模とポジションを手に入れることになるが、果たして今後の成長のための戦略はどのように舵取りをするのであろうか?

メガファーマトップ10入りを果たし、規模は手に入れた。では今後の安定した成長と課題は?

重点領域?

武田社は発表において、今回のシャイアー社買収で、消化器系疾患及びニューロサイエンスにおいて相互に補完することなり、さらに希少疾患と血漿分画製剤におけるリーディングカンパニーとなり、オンコロジーやワクチンにおける強みを補完するとしている。

発表によると、希少疾患領域と血漿分画製剤への本格的な参入を試みることになるのだが、希少疾患領域、その中でも血友病市場ではシャイアー社が大きなハードルに直面している。希少疾患に注力するシャイアー社は、Baxalta社の買収によって得た血友病の血漿分画製剤ポートフォリオであるが、強力な競合品であるHemlibraがロシュ社から上市され、苦戦を強いられている。希少疾患領域は、競合が少ないメリットももあるが、開発、製品化でのリスクも高い。今回のシャイアー社のBaxalta社の買収による血友病市場でのケースは、競合の出現という脅威にさらされている。

財務、キャッシュフローへの懸念、払拭はできるのか?

今後武田社が債務の縮小も大きな課題だ。クリストフ・ウェバー氏は、シャイアー社の年間営業利益は、60億ドルで武田社の3倍にあたり、キャッシュフローへの肯定的な効果があるとしている。ウィーバー氏が債務圧縮のスピードを上げることに対しては自信を持っている。

現在のシャイアー社の利益の大部分はオーファンドラッグ領域でのリーディングプレーヤーであることが主な理由である。武田社の希少疾患領域への注力は、迅速に進めたいコスト削減の範囲を狭めるとの懸念もある。武田社が発表した今後3年間のコストセービングの効果を14億ドル、またはそれ以上としているが、クレディ・スイスのアナリストFumiyoshi Sakai氏は、想定するデータを上回っているともコメントをし、コストセービングの効果に懸念を示している。

今回の買収により、日本を本社とするメガファーマが誕生することになるが、武田社は全世界で52000人(武田社30,000人、シャイアー社22,000人)の従業員を日本、米国(ボストン)、スイス、シンガポールを中心に抱えることになるが、オペレーション部門の統合でのコスト削減、そして6-7%ほどの従業員の削減が見込まれている。研究開発部門においては、40%以上のコスト削減のシナジー効果が期待されると武田社は発表している。

現在の両社の開発品を概観してもブロックバスターになる候補の治験薬は1つしかない。今後合併した会社にとっては、不足ではないだろうか?大型の買収は、多くの場合研究開発活動への大きな支障を来たすケースは少なく、シャイアーの買収で、開発品のポートフォリオが潤沢になるわけではない。両社のここ数年の買収・アライアンス戦略により資金調達を外部融資に依存している。財務体質への懸念も大きい。明らかな課題としてはキャッシュフローだ。コストセービング、売上の数値が期待された数値を達成できず出せず弱くなったときである。その時に、新会社はどのような手をうつのだろうか?
日本本社のグローバルトップ10の「新」武田薬品の誕生の第一歩ではあるが、規模を手にした一方で、安定した継続的な成長への戦略の実践が更に求められる。

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