市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。製薬大手の後期開発パイプラインをまとめました。
パイプラインは調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
米アッヴィ
スイス・ロシュと共同で開発しているBCL-2阻害薬ベネトクラクス(製品名・ベネクレクスタ/Venclyxto)は、多発性骨髄腫や骨髄異形成症候群で臨床第3相(P3)試験を行っています。日本では急性骨髄性白血病への適応拡大を申請中です。
BCL-2に加えてBCL-XLを阻害するnavitoclax(開発コード・ABT-263)は、骨髄線維症への効果が期待されています。PARP阻害薬veliparib(ABT-888)は、卵巣がんや乳がん、肺がんでP3試験を実施中です。
抗体薬物複合体(ADC)も開発の後期段階に入っています。抗EGFR ADCのdepatuxizumab mafodotin(ABT-414)は日本で神経膠腫のP1/2試験、抗cMet ADCのtelisotuzumab vedotin(ABBV-399)はグローバルで非小細胞肺がんのP2試験が進行中です。
米ギリアド・サイエンシズ
17年に米カイトファーマを買収して獲得した2つのCAR-T(キメラ抗原受容体発現T細胞)療法axicabtagene ciloleucel(Yescarta)とbrexucabtagene autoleucel(Tecartus)の開発を行っています。Tecartusは、20年7月に再発・難治性のマントル細胞リンパ腫を対象に米国で承認を取得。欧州でも申請を済ませているほか、急性リンパ性白血病の適応でピボタル試験を実施中です。
Yescartaは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(セカンドライン)でP3試験を実施中。同適応では、ファーストラインやサードラインの併用療法でもP2試験が行われています。日本では第一三共がB細胞リンパ腫を対象に今年3月に申請しました。
細胞療法以外では、20年上期に米アーカスと、同社のがん免疫パイプラインを10年間にわたって共同で開発することで提携。A2aR/A2bR 拮抗薬etrumadenantや、抗TIGIT抗体domvanalimabが現在P2試験段階に入っています。
米イーライリリー
19年の米ロキソオンコロジー買収で獲得したRET阻害薬selpercatinib(Retevmo)は20年5月、米国でRET遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんと甲状腺がんで承認されました。欧州でも申請中です。BTK阻害薬LOXO 305もP2段階に入りました。
抗VEGFR-2抗体のラムシルマブ(サイラムザ)は、米欧でEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する一次治療への適応拡大が承認。日本でも申請中です。
16年に欧米で進行軟部肉腫を対象に迅速承認を受けた抗PDGFR-α抗体olaratumab(Lartruvo)は、検証的P3試験で臨床的優位性を示すことができず、米欧での販売を取りやめました。現在、膵がんでP2試験を行っています。
米アムジェン
T細胞のCD19とB細胞のCD3を標的とする二重特異性抗体ブリナツモマブ(ビーリンサイト)は、小児の急性リンパ芽球性白血病でP3試験が行われています。多発性骨髄腫治療薬カルフィルゾミブ(カイプロリス)は、ダラツムマブとデキサメタゾンとの3剤併用療法で今年8月に米国で承認を取得。レナリドミドを含む3剤併用療法でもP3試験を行っています。
中国では19年10月、ベイジーンとがん領域で戦略的提携を締結。中国で申請中のブリナツモマブやカルフィルゾミブの商業化を加速させる考えです。
KRAS阻害薬としてファースト・イン・クラスを目指すsotorasib(AMG510)は、非小細胞肺がんと大腸がんを対象に開発を進めています。
(AnswersNews 亀田真由)