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世界に先駆け接種へ ロシア・中国の新型コロナワクチンへの懸念

Russia China Coronavaccine Eye

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[トロント/シカゴ ロイター]ロシアと中国で開発された新型コロナウイルスワクチンには潜在的な欠点がある――。これらのワクチンは、多くの人が一度は感染したことがある一般的な風邪のウイルスをベースに作られており、それがワクチンの効果を限定的なものにする可能性があると、一部の専門家は指摘している。

中国のカンシノ・バイオロジクスが開発しているワクチンは、アデノウイルス5型(Ad5)をベクターとして用いたもので、中国では軍事使用が承認されている。ウォール・ストリート・ジャーナルは8月28日、同社が大規模な治験を完了する前に複数の国で緊急承認を得るための協議を行っていると報じた。

モスクワのガマレヤ研究所によって開発されたワクチンは、限られた小規模の臨床試験しか行っていないにも関わらず、8月11日にロシアで承認された。このワクチンは、2種類のアデノウイルスベクター(Ad5とAd26)を用いている。

「何のための戦略か」

ジョンズ・ホプキンス大のワクチン研究者であるアンナ・ダービン氏は「Ad5は多くの人が免疫を持っており、気がかりだ」と話す。「40%の有効性はあるかもしれないが、おそらく70%はないだろう。ほかのワクチンが出てくるまでの間、何もないよりはマシかもしれないということだが、これでは何のための戦略なのかわからない」

Ad5を使ったワクチンは、これまで何十年にもわたってさまざまな感染症を対象に研究されてきたが、どれも広く使われていない。ウイルスベクターワクチンは、無害なウイルスをベクター(運び屋)として利用し、標的ウイルス(今回は新型コロナウイルス)の遺伝子をヒトの細胞に運んで免疫反応を促す。

しかし、多くの人はすでにAd5に対する抗体を持っているため、免疫がベクターを攻撃してしまい、ワクチンの効果が低下してしまう可能性がある。

新型コロナウイルスワクチンの開発では、複数の研究者がAd5とは違うアデノウイルスや送達メカニズムを選択している。オックスフォード大とアストラゼネカは、チンパンジーのアデノウイルスをベースに開発し、Ad5の問題を回避。ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、比較的珍しい型であるAd26を使用している。

カナダ・マクマスター大のZhou Xing博士は、2011年にカンシノと共同で結核向けにAd5をベースとした初のワクチンを開発した。Xing博士のチームは現在、Ad5を使った吸入型の新型コロナウイルスワクチンを開発しており、これによってAd5の免疫の問題をクリアできる可能性があると考えている。Xing氏は「オックスフォード大のワクチン候補は、カンシノのワクチンよりもかなり有利だ」と指摘。加えて、カンシノのワクチンに含まれる高用量のAd5ベクターによって発熱が起こり、ワクチンへの懐疑心を煽る可能性があることも懸念していると話した。

「彼らのワクチンに抗体を持っていない人は良い免疫を得るだろうが、多くの人はそうではない」。フィラデルフィアのウィスター研究所ワクチンセンターでディレクターを務めるヒルデグント・エルトル博士はこう話す。

専門家によると、中国や米国では人口の約40%がAd5の抗体を高いレベルで持っており、アフリカではそれが80%に及ぶ可能性があるという。

2つのベクター

ガマレヤ研究所のワクチンは2つのベクターを組み合わせたもので、1回目はJ&Jのワクチンと同じAd26をベースとしたものを接種し、2回目にAd5をベースとしたものを接種する。同研究所のディレクターであるアレキサンダー・ギンツブルグ氏は、2つのベクターによるアプローチが免疫の問題を解決すると話した。エルトル氏も、2つのアデノウイルスのうち片方にしか感染したことのない人には十分効果があるかもしれないと指摘している。

ロシア政府は、大規模なピボタル試験のデータがないまま、10月にも高リスク集団を対象にワクチンの接種を開始する計画だ。こうした動きを受け、多くの専門家がロシアのワクチンに対して懐疑的な意見を表明している。

「ワクチンの安全性と有効性を証明することは非常に重要だ」。J&Jの新型コロナウイルスワクチンの設計に関わったハーバード大のダン・バルーシュ博士はこう話し、「大規模試験は、期待された結果や要求された結果をもたらさないこともよくある」と指摘した。

(Allison Martell/Julie Steenhuysen、翻訳:AnswersNews)

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