田辺三菱製薬の新ALS承認薬Radicavaの価格戦略のリスク? 待望のALS治療薬も予測を上回る高価な治療費の影響は?

筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)の治療薬の承認。この病気の希少性、そして重篤性を考えた場合、ALSの患者にとっては大きな希望をもって待ち望んでいることは用意に想像ができます。このたびの田辺三菱製薬(販売はMT ファーマ アメリカ)のRadicava (edaravone)が米国FDAからALSの治療薬として承認されました。

ALS治療へ携わる関係者、特に患者は待ち望んだ新薬であるのですが、ひょっとすると同社は患者からのこの大きな期待、もしかすると同社の利益も失うかもしれません。それは、同社がおリスクを抱えたアグレッシブな価格戦略を取っているからです。

米国でも「アイスバケツチャンレンジ」などでALSに対する認識は高くなりつつあります。またALSはニューヨーク・ヤンキースの伝説的な選手、ルー・ゲーリックを1930年台に引退にまで追い込んだ病気としても知られています。

20年以上かかった新薬の承認

さて、時代は経て、多くの治療が開発され挑戦してきているものの、ALSの完治にはまだ遠いことは現実です。例えば、最近の大きな挑戦と失敗の一例がBiogenのdexpramipexoleが挙げられます。この開発品は2013年第三相まで進んでいながら最終的には開発を中止しております。

今回の承認の前の新薬承認は1995年のSanofi社のRilutek (riluzole)までさかのぼることになります。Rilutekは数ヶ月ではあるが患者の生存期間を延長することが出来るという効果が認められての承認でした。

このような背景もあり、ALSの患者グループは先週末のFDAの「田辺三菱製薬のRadicavaへのグリーンライト」のアナウンスを心待ちにしていたことでしょう。FDAの決断は「処方せん薬ユーザーフィー法」(PDUFA)の期限である6月16日よりも一ヶ月以上も早くされています。このことからもALSの効果のある治療薬が患者に投与されることの緊急性が分かります。

期待のALS治療新薬のRadicava、市場の反応は?

野村のアナリストMotoya Kotani氏は、以下のように肯定的なコメントを述べています。「今回のRadicavaは、私が想像していた以上に幅広い適用範囲となっています。このことでほぼ全てのALSの患者が投与対象となると考えられます。 」
さて、最も複雑で難しい課題はいかにしてこの新規治療薬Radicavaを患者の手まで届けるかということが言えるかもしれません。その理由としてはメディアが発表したリポートによると田辺三菱がRadicavaの一年間の治療費用として14万5000ドルという、以前にアナリストが予想していた9万から10万ドルの価格帯を大幅に上回る価格を設定していることが挙げられます。

前述のKohata氏は、このアグレッシブな価格設定は不安材料となると延べ、保険会社からの同薬剤の効果に対する大きな抵抗が考えられるとしています。

「臨床試験では、RadicavaはALSの進行を2ヶ月間遅らせることができています。その為、1千万円以上(約8万8000ドル以上)の年間治療費は、Radicavaが幅広くALSの治療薬として使われないリスクがあると言えます。つまり、中症から重症度の患者むけの治療薬としては投与されない傾向がある可能性を指摘しています。

はたして田辺三菱の価格戦略は?

田辺三菱社は歴史的に希少疾患やALSのような致命的な疾患に付与されたような何らかのエキストラを期待しているかもしれません。しかしながら、保険会社は 高薬価の医薬品に対しては厳しい対応をしてきている傾向が最近は見受けられます。例えば、BiogenとIonsの筋ジストロフィー向けの治療薬でSpinraza (nusinersen)が今年のはじめに承認されましたが、Anthem、Humana、UnitedHealthなどの保険会社は驚くほど厳しい制限つきのポリシーを突きつけています。

Spinrazaの様に上市後の3ヶ月間で予想以上の効果を出している場合など、このような保険会社からの制限ポリシーが投与の傾向、売上や利益にどのような影響を与えているのか未だに議論が別れます。ひょっとすると田辺三菱社はこのような保険会社やメディアからの批判を踏まえており、長期的には利益を最大化する、そのような戦術を取っているのかもしれません。

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