田辺三菱製薬の新ALS承認薬Radicavaから学ぶのALS治療薬開発の「傾向と対策」

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コロンビア大学医学部で神経内科教授と神経筋センター主任を兼任し、ALSケア委員会の役員も務めている三本 博教授へFirstWord がインタビューを実施しました。これは、田辺三菱社の最近承認となったRadicavaのALS治療市場へのインパクト、この新薬によりどのようにALSの患者が治療の傾向、そして同社の今回の臨床開発戦略から学ぶべきことはどのようなことなのかを伺いました。

三本教授は、Radicavaのリスクとベネフィットのプロファイルを踏まえ、本治療薬が幅広くALS治療薬として投与されるであろうとしています。この大きな理由としては、ALSの重篤性と治療選択薬の少なさを挙げています。そして、ALSの治療薬を開発している企業にとっても今回の成功は学ぶべき示唆が多く含まれているとも述べています。

2度めの第三相臨床試験で結果を導く

「製薬会社は臨床開発に多くの資金をつぎ込みます。この金額は巨大です。しかしながら多くの場合、第三相まで進んでもその時点で開発を止めてしまうことがあります。それは様々な理由がありますが、今回の田辺三菱社は諦めませんでした。最初のedaravoneの第三相試験では結果はネガティブでした、しかしながら二度目の分析を加えて、サブグループでの結果を精査しました。」

このサブグループの分析が功を奏します。ALSと診断、もしくはALSの可能性が高い診察された段階のアーリーステージの患者グループで、Radicavaの効果を表すことができました。

「田辺三菱社はこの情報を得て、効果が現れる見込みの高い患者グループに対してもう一度第三相試験を実施し、みごとにポジティブの結果を導き出しました。この結果をもって日本の当局、そしてFDAから承認を得るまでに至ったのです。」

Biogenの開発中止に関して

最初の段階のミスをもって開発を推し進めることをためらい、ストップしてしまった開発品の今までにはありました。
Biogenがその典型的な例でしょう。2013年にdexpramipexoleは第三相のEMPOWER試験で失敗、フォローアップの分析では潜在的なレスポンスが高そうな患者グループを特定できそうだったのですが、dexpramipexoleの開発は止まってしまいます。これはBiogenがフォローアップ分析をしている段階で今後の臨床開発は進めないという意思決定をしてしまっていたためです。

「二次的な分析ではdexpramipexoleはedaravoneが表していたのと類似した効果が見られていたにも関わらずです。もしBiogenがもう一度第三相試験を適切なサブグループを対象に実施していたらポジティブな結果が得られたかもしれません」

「田辺三菱の成功は、このサブグループを見つけたこととその重要性を認識していたからだと考えます。そしてすべての可能性を追求したからと言えます」

難しいALSの治療薬の開発

RadicavaのALSのどの部分に有効的に聞くのかメカニズムは未だに分かってはいません。 フリーラジカルの抗酸化物質が酸化ストレスを減少させるということが仮説で、これは三本教授が長い間研究をしてきたポイントで、今回の承認には教授も非常に喜んでおります。

「ALSの治療に対して多くの病理学的な考察、ALSのメカニズムが研究されています。残念ながら、なぜ運動ニューロンが侵されるのか、本当の真実はまだわかりません。実際のところ、様々な病気が組み合わさってALSという病気として認識されているのかもしれません。食事、心理的なストレス、外的環境要因などが体内の分子レベルにおいて酸化ストレスを発生させ、これが運動ニューロンが侵される原因となる。少なくともこれは私達の仮説ですが」と教授は続けます。

Radicavaへの期待

Radicavaは、規制当局からの支持を得て、同様の障害に対する酸化ストレスを標的とする、より新しくより優れた薬剤の同定への関心を高めなければなりません。

「1つの治療方法が承認されると研究者はそのメカニズムに集まってしまう傾向があります。」

実際に、Sanofi社のRilutek (riluzole)が承認された時もそうでした。グルタミン酸受容体への過度なフォーカスへの進んだ記憶があります。

残念ながらこのフォーカスと努力はALSの治療分野ではあまり成功事例は現れませんでした。しかしながら三本教授は、酸化ストレスへの注目は今後の新薬開発をよりプロダクティブにすると考えています。

RadicavaはALSの患者に幅広く使われるよう承認されており、このことから三本教授は、RadicavaがRilutekに比べてより効果的であることを今後証明できるのではないかと考えています。三本教授は、これらの2つの治療薬は併用での利用が可能で、これは田辺三菱社の第三相臨床試験でも併用での投与で実施されています。

「Rilutekは、短期間ではありますが生存期間の延長の効果がありますが、機能向上のインパクトはそれほどではありません。今までは治療薬の選択肢が無かったため、この程度のベネフィットでも多くの患者に投与されていたのが現状です。一方でEdaravoneは、ALSによる機能の悪化を緩やかにする効果があります。機能悪化を止めることは無いものの緩やかにしますが、機能が悪化するスピードは患者が非常に心配するポイントでもあります。」

田辺三菱社は、Radicavaが生存期間の延長への効果をデータでは明示するこはまだ出来ておりません。しかしながら三本教授は、この医薬品が今後生存期間の延長にも効果があることを証明するであろうと非常に自信をもっているようです。機能悪化のスピードを緩やかにし、かつ生存期間を延長することができればRilutekよりも非常に強い製品プロファイルとなるでしょう。

「多くの研究でALSFRS-Rが生存期間延長に影響を与えると発表されています。私もedaravoneを活用しつつALSFRS-Rの生存期間延長への影響に関して研究をしていきたいと思います。現時点では、まだデータが充分ではありませんが。」

「2つの治療選択肢があるということはとても重要なことです。これは患者が選択することが出来る自由とコントロールを得たことでもあります。副作用などがあった場合に患者がもう一つのオプションがあるということは重要な事です。そして、田辺三菱の試験で併用投与の安全性も示したことから多くの患者が両方の治療薬を投与されると考えられます。」

「ひとつ潜在的に面倒な点としてRadicavaの利用機会のスピードが一気には進まないことが考えられることがあります。これは年間の治療費が14万5000ドルもの非常に高い価格であることが挙げられます。これは、Radicavaを選択肢として選ぶためのハードルを上げるのではと心配をしています。」

「私は、この値段設定にはがっかりしています。保険会社、政府、そして製薬会社はともに協力してほしいと思っています。ALSの患者で、彼らが充分なお金が無いから希望する治療を受けることができないということが無いようにしてほしいと思います。これは我々のヘルスケアシステムの大きな、そして明らかな問題点です。しかしながら、保険会社、政府、そして製薬会社が協力をしてこの課題をよい方向にもっていってくれることを希望しています。」

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