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キイトルーダ、肺がん二次治療でも米国でオプジーボにシェア肉薄か?テセントリクを含めた3剤の併用療法の動向に注目

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米国においてPD-1強陽性進行非小細胞肺がんの一次治療適応でキイトルーダ( 一般名:ペムブロリズマブ、米メルク社、日本ではMSD社)が 承認されました。従来の条件付きではあるものの化学療法に加えてがん免疫療法が一次治療に加わりました。キイトルーダが一次治療で利用されることは、非小細胞肺がんの治療アルゴリズムと選択治療薬のシェアに与える影響は非常に大きいことが予想されます。

それでは、この承認によって非小細胞肺がんの治療実態が具体的にどのように変化するのか?そして、現状すでに非小細胞肺がん治療薬として適用を受けているオプジーボ(一般名:ニボルマブ、BMS社、小野薬品)、「テセントリク」(一般名:アテゾリズマブ、ロシュ社、中外製薬)を始めとする他のチェックメイト阻害剤への影響は具体的にどのようなものであるのでしょうか?

2016年にFirstWord社は断続的に非小細胞肺がんのがん免疫療法に対するオンコロジストに対する調査を実施してきました。インサイツ4では、この調査内容を元に、米国における非小細胞肺癌のがん免疫治療薬の2017年への影響を調べてみました。

  • PD-L1高発現の一次治療は化学療法からキイトルーダへ
  • 化学療法後のセカンドラインでの第一選択薬としてもキイトルーダの活用が増える。今後12ヶ月で二次治療においてオプジーボとキイトルーダの利用シェアは同率程度まで縮む可能性
  • 2017年、がん免疫療法市場は併用療法の治験結果に大きな注目

2016年10月、メルク社の抗PD-1抗体キイトルーダが PD-L1高発現(TPS≧50%)の転移性非小細胞肺癌患者の一次治療薬として、 FDAの承認を取得しました。このことは、非小細胞肺癌の抗PD-1抗体治療薬として最初で、競合品であるオプジーボ、テセントリクを差し置いて一次治療薬として承認を得、アメリカ市場において、少なくとも今後1年間は、承認されたただ1つの抗PD-1抗体 として新規患者の一次治療薬として投与されることを意味します。

大きな商業的な機会、すでに米国で肺がん一次治療ではキイトルーダの利用機会が増大

メルク社の発表した資料によると、アメリカ、ヨーロッパ、日本で毎年新規で非小細胞肺癌と診断される患者は約25万人でその患者の25〜30%の患者がPD-L1が50%以上の高発現の患者と推計されています。

キイトルーダの商業的な機会を見る場合に、メルク社の発表する患者が現実的にキイトルーダの治療対象となりうるかという疑問はありますが、非常に多くの新規の肺がん患者が治療の対象となり、大きな商業的な機会であることがわかります。今回のFIrstWord社の12月のサーベイでも、回答医師の70%以上が、すでにPD-L1高発現の患者に対してキイトルーダを投与しているとの回答が得られました。

重要ファクターであるバイオマーカーの普及

今回のファーストラインでの承認は条件があり、発現率に関しては50%以上のPD-L1の新規肺癌患者が適用対象です。抗PD-1抗体のファーストラインでの活用には、PD-L1抗体のバイオマーカーがどのくらい普及し、使用されるかは大切な要素です。メルク社がFDAの承認の直前に発表した資料によると、ESMO会議でのKeynote-024試験結果が発表された時期以降のデータではあるものの、米国において新規で診断された非小細胞肺癌患者においては、約40%の患者でPD-L1の発現が見られたと発表しています。

最近投資家向けに発表されたバーンスタイン社の資料では、 PD-L1の発現テスト(バイオマーカーテスト)は治療履歴の無い患者にとって今後ルーティンとなっていくとしています。この見解は、Columbia University Medical Center のDr. Naiyer Rizvi 氏の発表に基づくもので、非小細胞肺癌の治療において、バイオマーカーの診断プロセスはより普及するであろうとしています。なお、本センターにおいては現在すべての患者がこの発現テストを受けているとも発表しています。

分かれる見解、発現率50%

治療対象がPD-L150%以上の発現率ということに関しては、治療に携わる医師にとって、PD-L1のバイオマーカーテストの結果により、キイトルーダの利用を制限しなければならない可能性にも直面しています。

41%の医師は、バイオマーカーのテストの影響はそれほど大きいものではないとしているものの、全体では59%の専門医がなんらかの形でキイトルーダの投与に影響を与えると答えています。 発現率により、どのくらい厳格にキイトルーダの患者への投与をしない判断をするかという点では、意見が分かれています。

今回の一次治療でのキイトルーダのFDAからの承認前にFirstWord社が実施したオンコロジストへのサーベイによると、 医師によっては発現率が低くてもキイトルーダを治療に用いるべきとの見解もあります。

一方で、FirstWord 社がインタビューした複数のKOLはPD-L1出現率が50%未満の患者にはキイトルーダを投与するべきでは無いと主張しています。

「投与の判断は出現率によって厳しく仕切りを設けるべきです。50%以下に基準を設けることにより、がん免疫療法が適切ではない多くの患者まで治療対象にしてしまう懸念があります。研究されていない人口対象を推論することは有益であるという証拠は無く、その推論をしてしまうこと自体意味がないと言えます。患者が50%、51%のPD-L1出現率であればキイトルーダを、47%であれば化学療法を施すべきです。もし化学療法の後に出現率が上がる場合にはキイトルーダを投与するべきです。」

二次治療、高発現以外でもキイトルーダの利用が躍進する

米国の非小細胞肺がんの治療においては、オプジーボがセカンドラインで適用を受けていますが、この二次治療に関してもこの度の一次治療での承認の影響が大きく出てきそうです。

キイトルーダを用いた一次治療で効果が見られなかった場合について、45%の医師は、二次治療として、他の抗PD-(L)1抗体を使用しないと述べています。なお、その他の55%の医師は、その場合の治療選択薬として抗PD-(L)1抗体を用いた場合、オブジーボとテセントリクのいずれかを選択、2つのシェアは同率で両薬剤に差は見られませんでした。

化学療法後の二次治療でPD-1陽性の場合はキイトルーダが第一選択薬に

一次治療が化学療法であった場合の二次治療の傾向はどうでしょうか?調査によると、 76%の医師が二次治療において、PD-L1発現率により選択薬を決定すると述べています。二次治療において、患者がPD-L1陽性であった場合、キイトルーダの優位が調査結果では明らかになっています。

41%の医師が、キイトルーダを選択薬として使うと答えております。一方で、オブジーボは31%とテセントリクは10%でした。今調査時では、17%のオンコロジストが特定のPD-1阻害剤は無いと言っています。

また、二次治療において患者がPD-L1陰性であった場合、38%がオブジーボ、21%がオブジーボまたはテセントリクと、17%はテセントリクとして、オプジーボが選択薬としてシェアが高い結果でした。

オプジーボの治療市場での立ち位置の変化。今後12ヶ月間でセカンドライン治療薬のシェアは拮抗

今後一年間で二次治療としてどの抗PD-1阻害剤を活用するかという質問に対して、38%ずつでキイトルーダとオブジーボが同率との結果になりました。
この調査からも、非小細胞肺がんの治療薬としてキイトルーダが一次治療のみならず二次治療においてもシェアが拡大するものと見られます。

非小細胞肺がんの一次治療を対象とした臨床試験結果が2016年には断続的に発表されました。化学療法との比較試験で優位な結果を提示できなかったオプジーボに対し、PD-1発現率を高い患者に対象を絞たものの明らかな効果を出したキイトルーダとの今後の肺がん治療に与える影響は大きく、2016年の非小細胞肺がんの治療の一次治療としては、米メルク社のキイトルーダに軍配が上がったと言えます。

今後の関心は併用療法での試験結果に

2017年も非小細胞肺がん治療領域においては、がん免疫療法が話題の中心になることは間違いがなく、今後も治験結果の発表、新規申請、次世代の免疫療法の臨床試験なども発表など話題に欠きません。特に注目として、 非小細胞肺がんの一次治療を対象としたがん免疫療法の併用療法です。これらの結果は、今後の肺がん治療に大きな影響を与えるものとして注目されています。

オプジーボ、キイトルーダ、テセントリクに関して非小細胞肺がんの一次治療を対象とした第三相の臨床試験の結果が2017年中に発表となる予定です。

BMS社は、非小細胞肺がんの一次治療としてPD-1とCTLA-4の2つのがん免疫療法(オプジーボとヤーボイ)の併用療法の第三相試験の結果を2017年中に発表される予定です。同社は肺がん治療においての患者負担の大きい化学療法を治療選択から除く可能性を追求しています。

米メルク社、ロシュ社は、化学療法との併用療法での治療効果を追求します。この第三相の臨床試験結果はそれぞれ2017年中に発表の予定です。なお、 BMS社でも、オプジーボと化学療法との併用療法の臨床試験は実施しますが、結果は2018年以降の発表の予定です。

これらの臨床試験は今後の肺がん治療においてどのような患者セグメントに対してどのような治療が効果的であるかのより明確な基準を提供できるものとしても大きく期待されております。

2016年の非小細胞肺がんの治療の一次治療としては、米メルク社のキイトルーダに軍配が上がり、2017年の肺がん治療の中心はキイトルーダで回っていくことは間違いないものと思われますが、肺がんでの治療案メットニーズはまだまだ高く、併用療法の結果を始めとし、新たな開発品などにも大きな注目があつまるものと思われます。

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