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2017年の医薬品業界の展望:がん免疫療法、期待の治験と新薬、高い医療ニーズの疾患など注目の17品目をピックアップ

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はじめに

2016年、米国FDAの新薬承認は一昨年に比べて半分の22品目とのことで、2010年以降では最小とのことです。FDAにより非承認や審査の延長が有ったとのことです。果たして2017年はどのような年になるでしょうか?

そこで2017年の医薬業界を占うと言う意味でも今年注目となる医薬品に焦点を当ててみたいと思います。全世界の医薬品業界で2017年注目を集める、そして注目するべき医薬品はどのようなものがあるでしょうか?

標準的な療法を大きく変化する可能性のある医薬品、将来に渡って影響を及ぼす臨床試験の結果、アンメットニーズが高い領域での期待される開発品の動向、そして昨年から承認時期が延長になっている医薬品など、様々なファクターがを踏まえ、 弊社の提携企業であるFirstWord社とタイアップし、2017年注目の医薬品17品目をピックアップ致しました。

  • デュピルマブ(Dupixent:サノフィ/リジェネロン: アトピー性皮膚炎ほか)
  • オクレリズマブ (ロシュ社:Ocrevus、多発性硬化症)
  • レパーサ(エボロクマブEvolocumab アムジェン社、アステラス社)
  • プラルエント(アリロクマブAlirocumab サノフィ社/リジェネロン社)
  • ヌシネルセン(Spinraza、バイオジェン/Ionis Pharmaceuticals、脊髄性筋萎縮症)
  • オプジーボ(BMS,小野薬品、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、 ニボルマブ)
  • キイトルーダ(米メルク,MSD、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、ペムブロリズマブ)
  • テセントリク(ロシュ 中外、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、アテゾリズマブ)
  • デュルバルマブ(アストラゼネカ、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がん他)
  • CTL019(ノバルティス社/急性白血病/、CAR-T細胞療法)
  • KTE-C19(カイトファーマ。 非ホジキンリンパ腫(NHL)CAR-T細胞療法)
  • Rubraca(Clovis Oncology社の卵巣がん治療薬PARP阻害剤)
  • Niraparib(Tesaro社、卵巣がん治療薬PARP阻害剤)
  • ピマバンセリン(Nuplazid、Acadia社)
  • エピディオレックス(GWファーマシューティカルズ社、レノックス・ガストー症候群とドラベ症候群)
  • Verubecestat(米メルク社:BASE阻害剤、アルツハイマー病)
  • パージェタ: ペルツズマブ ロシュ社・中外製薬 乳癌)

期待高まるアトピー性皮膚炎治療候補薬「デュピルマブ」。22年には40億ドル以上との予測も

  • デュピルマブ(Dupixent:サノフィ/リジェネロン:アトピー性皮膚炎)

デュピルマブは、アトピー性皮膚炎治療薬として開発されており、2022年での全世界の売上は40億ドル以上とも予測されている大型の新薬候補です。

同剤は 、アトピー性皮膚炎の主な原因とされている2型免疫反応を引き起こす2つの重要なサイトカインであるIL-4およびIL-13のシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体です。また、成人のアトピー性皮膚炎に加え、小児のアトピー性皮膚炎、喘息、鼻茸および好酸球性食道炎の治療薬としても検討中です。

昨年10月にSOLO1、SOLO2の効能と安全性の臨床結果の発表後FirstWord 社が実施した専門医向けのサーベイにおいても50%以上の医師が、効能と安全性に対し、期待感と安心感がさらに高まったと期待されるデータも発表されています。

同剤は、欧州医薬品庁(EMA)および米国FDAに承認申請をし、受理されております。米FDAは、同薬剤を優先審査品目の指定を受けており、 2017年にずれ込んでいます。審査終了日は、来年3月29日に指定されています。
デュピルマブは日本においても開発が進んでおります。

多発性硬化症で高い有効性が期待されているオクレリズマブが3月承認の見込み

  • オクレリズマブ (ロシュ社:Ocrevus、多発性硬化症)

オクレリズマブは、ロシュ社が開発を進めているヒト化 抗CD20 モノクローナル抗体で、多発性硬化症向けに開発が進んでおります。

一次進行性多発性硬化症の進行抑制を証明した初めての薬として2015年秋に報告されております。また再発寛解型でも高い有効性が示され、期待されています。

オクレリズマブの多発性硬化症治療薬として承認申請に対し、FDAの審査終了予定日が延期されておりますが、有効性や安全性に問題が生じたためではなく、同薬剤の商業生産工程に関する追加データを提出したためということです。3月には承認の見込みです。

PCSK9阻害薬のレパーサとプラルエント は肯定的な臨床試験結果報告で商業機会の増大か?

  • レパーサ(エボロクマブEvolocumab アムジェン社、アステラス社)
  • プラルエント(アリロクマブAlirocumab サノフィ社/リジェネロン社)

高コレステロール血症治療薬のPCSK9阻害薬の2剤、レパーサとプラルエントとも昨年と同様に2017年も注目となる医薬品と考えます。

レパーサは脂質異常症の治療薬の一つです。モノクローナル抗体で、PCSK9を阻害するよう設計されています。PCSK9に結合して、PCSK9とLDL受容体との結合を阻害し、LDL受容体が分解される事を防ぎ、肝臓のLDL-C分解能を維持する効果があります。

昨年11月、アムジェン社がレパーサの冠動脈アテローム性動脈硬化に対する第3相試験で主要評価項目を達成したと発表し、スタチンに加えレパーサを併用することで、プラーク退縮が示されたとういことです。

プラルエントは、食餌療法やスタチン投与で管理不良な高コレステロール血症に対する治療薬です。同剤が、心血管疾患関連死や心筋梗塞を予防出来るのか否かの効果を確認する為の臨床試験は現在実施中であり、結果は2017年に公表される見込みです。

これらレパーサおよびプラルエントの臨床試験の結果は米国の保険会社にとって肯定的に受け入れられることで、両薬剤の商業的な可能性は広がるとみております。

ヌシネルセン、世界初の脊髄性筋萎縮症治療薬(SMA)として承認された新薬

  • ヌシネルセン(Spinraza、バイオジェン/Ionis Pharmaceuticals、脊髄性筋萎縮症SMA)

昨年、ヌシネルセンが、 予定より数ヶ月も早くFDAにより世界初の脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として承認されました。2017年最も注目を集める医薬品の1つであることにまちがいないでしょう。

脊髄性筋萎縮症治療薬(SMA)は乳児と幼児の遺伝的原因疾患による主要な死亡原因であり、進行性の筋力低下による衰弱を特徴として、ヌシネルセンが世界で初の承認された治療薬です。

注目のポイントとして、SMAという過去に治療薬が無かった疾患への治療薬であることとのみならずいくつかの理由があります。FDAによる予想を超えた速さでの承認とその適用範囲。この承認条件ではSMAのどのサブタイプにも適用されます。
そして、薬価の高さです。開発をした両製薬会社が期待した以上の薬価が付きました。この価格に関しても、今後業界内で話題となる事が予想されます。

がん免疫療法1:非小細胞肺がん一次治療は、併用療法の試験結果に注目

  • オプジーボ(BMS,小野薬品、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、 ニボルマブ)
  • キイトルーダ(米メルク,MSD、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、ペムブロリズマブ)
  • テセントリク(ロシュ 中外、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がんほか、アテゾリズマブ)

2017年中には、 非小細胞肺がんの一次治療を対象とし、がん免疫療法の併用療法の臨床試験の結果が発表されます。これらの結果は、今後の肺がん治療に影響を与えるものとして注目されています。

BMS社は、非小細胞肺がんの一次治療としてPD-1とCTLA-4の2つのがん免疫療法(オプジーボとヤーボイ)の併用療法の第三相試験の結果を2017年中に発表される予定です。

一方で、米メルク社、ロシュ社は、化学療法との併用療法での治療効果を追求します。この第三相の臨床試験結果はそれぞれ2017年中に発表の予定です。

がん免疫療法2:アストラゼネカ、Durvalumabの併用療法で肺がん治療薬としてトッププレーヤーの仲間入りができるか?

  • デュルバルマブ(アストラゼネカ、抗PD-(L)1阻害剤、非小細胞肺がん他 Durvalumab)

がん免疫療法は、これまでのキイトルーダ、オプジーボなどの抗PD-(L)1阻害剤の結果をみてもわかるように2017年も注目を集めるエリアであることに間違いはないでしょう。

アストラゼネカが開発をしている抗PD-(L)1阻害剤デュルバルマブにも今年は注目が集まりそうです。

Durvalumabは現在、抗CTLA-4抗体であるtremelimumabとの併用で非小細胞肺がんの一次治療の臨床試験MYSTIC試験を実施しています。この試験結果は 、アストラゼネカが、がん免疫療法のトッププレーヤーの仲間入りをするか、この領域での活躍の機会が極端に減少するかという大きな意味を持ちます。

現在進んでいるMYSTIC試験の結果は2017年の上半期に発表されると予想されています。

画期的な治療方法としてCAR-T細胞療法のKTE-C19とCTL019

  • CTL019(ノバルティス社/急性白血病/、CAR-T細胞療法)
  • KTE-C19(カイトファーマ。 非ホジキンリンパ腫(NHL)CAR-T細胞療法)

CAR-T細胞療法の2つの開発品、KTE-C19とCTL019は、両薬剤ともに2017年前半、業界で大きな話題となることが予想されています。

CAR-T細胞療法では、画期的な治療方法で、患者自身のT細胞を取り出して 、がん細胞の表面にある抗原を認識できるT細胞受容体を人工的に発現させます。この受容体を腫瘍細胞を特異的に破壊する細胞医薬として患者に再度戻します。その結果、体内で標的であるがん細胞に対して攻撃を加え、破壊します。つまり、がん細胞を目標標的とした攻撃を細胞レベルで行うという治療方法です。

昨年、Juno 社のCAR-T細胞療法の開発中の副作用の発症により治験を中止しております。このことも踏まえつつ、両薬剤の開発の動向には世界の注目が集まっています。

卵巣がん治療薬PARP阻害剤が2017年はオラパリブと併せて3剤に

  • Rubraca(Clovis Oncology社の卵巣がん治療薬PARP阻害剤)
  • Niraparib(Tesaro社、卵巣がん治療薬PARP阻害剤)

卵巣がん治療薬としてのPARP阻害剤はアストラゼネカ社のオラパリブ(Lynparza)に加え、2017年には3剤になる見込みです。

Clovis Oncology社の卵巣がん治療薬PARP阻害剤Rubracaは昨年12月にFDAから迅速承認を受けております。またTesaro社が開発を進めているNiraparibに対してFDAは、優先審査をしており、今年6月までに承認の結果判断が出る見込みです。
このことで、2017年には卵巣がん治療薬としてのPARP阻害剤は3剤になる見込みです。

ピマバンセリン、アルツハイマー病の精神症状での治療薬としての可能性に大きな期待

  • ピマバンセリン(Nuplazid、Acadia社)

Nuplazidはパーキンソン病の精神症状治療薬として昨年承認されていますが、同薬剤はアルツハイマー病の精神症状の治療薬としても開発が進められています。Acadia社は昨年の末に第2相試験で、肯定的な結果を発表しています。
このこともありAcadia社は常に大手製薬企業にとっての買収の対象企業として挙げられており、現在同社が実施している臨床試験の結果に対しては同社と同時にその他のステークホルダーも非常に興味を持っているのもパーキンソン病のみならずアルツハイマー病の治療薬としても開発が進められているからです。

難治性てんかんの2つの症候群で効果が期待:エピディオレックス

  • エピディオレックス(GWファーマシューティカルズ社、レノックス・ガストー症候群とドラベ症候群)

GWファーマシューティカルズ社も前述のAcadia社同様に買収の対象企業として注目を集める製薬企業です。同社が開発を進めているエピディオレックス
はレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群の2つの難治性てんかん治療候補医薬品として臨床段階で好結果を出しております。
最も最近の第三相の臨床試験は昨年の12月に提出され、投資家の期待値までには至らなかった が、この開発品への期待値は依然として高いままです。
2017年中にはトップラインの結果のみならず、臨床試験の結果がすべて開示されます。同社は、難治性てんかんのレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群への適応症で米国と欧州での承認申請を行う予定です。

Verubecestat :アルツハイマー治療薬でBASE阻害剤をまだまだ過小評価はするべきではない?

  • Verubecestat(米メルク社:BASE阻害剤、アルツハイマー病)

米メルク社がアルツハイマーのDMDとして開発中のBASE阻害剤Verubecestatの第三相の臨床試験結果(EPOCH試験)が2017年半ばには公開されます。
EPOCH試験では、中等度から重度のアルツハイマー病および前駆期のアルツハイマー病に対するピボタル試験です。このクラスでの今までの試験結果は思わしくないものであり、またこのEPOCH試験では患者のアミロイドβレベルの事前スクリーニングがされてはおらず、試験結果へのリスクは高いと見られています。しかしながら、メルク社はアミロイド仮説実証の可能性にも自信を示しており、このBASE阻害剤を過小評価はするべきではなく、本試験の結果 はアルツハイマー治療においても影響が大きく注目するべきと考えます。

ロシュ社にとって2017年最も重要な臨床試験結果:APHINITY試験

  • パージェタ: ペルツズマブ ロシュ社・中外製薬 乳癌

オンコロジー領域でのバイオシミラーの利用は今後数年間で高くなることが予想され、ブランド治療薬を販売している製薬会社は対応に躍起になっております。

ロシュ社にとっては、HER2陽性の乳癌のアジュバント治療においてハーセプチンとパージェタの併用療法に関する臨床試験(APHINITY試験)で良い結果が出てくることは、戦略的にも非常に重要です。

とくに投資家からの期待は大きくハーセプチンに対してのパジェータの追加投与は、すでに転移性乳癌患者対象の治療で結果をすでに出しております。

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