製薬業界の最新ニュースと解説

複雑化するがん領域における価格&償還戦略に重要なのは、信頼できるエビデンス共有、ペイヤーとの積極的な情報共有

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Insights4 Pharmaは、「海外の製薬業界トップニュースの解説」をコンセプトに、全世界で話題と注目の製薬業界ニュースをピックアップ、提供します。

オンココロジー領域においては、チェックポイント阻害剤や始めとする多くの画期的な治療薬によりアウトカムの向上が著しい。そして、これらの治療薬の併用療法、治療シークエンス、投与対象の患者の条件など治療判断のためのファクターは非常に多く、複雑化している。一方で、同クラスにおいても複数薬剤が承認され、製薬会社にとって戦略的で緻密な価格と償還対策の重要度はさらに増している。

今回英国の市場調査会社であるFirstWord Pharma社では、欧米の経験豊富なペイヤーへの定性調査を実施し、製薬会社にとって価格と償還戦略においてペイヤーがどのような課題を持ち、製薬会社がどのようにペイヤーと接するべきなのかを明らかにしている。この調査によるいくつかの知見をご紹介したい。ちなみに、今回の調査では以下の課題に関して8名のペイヤーの意見を伺っている。
そのため、今回ご紹介する知見はその中の特徴的な意見をピックアップしているので、その他のインタビュー対象者は違う見解をしている場合もあることをご了解いただきたい。

  • クリニカルエンドポイントとしてPSF(無増悪生存期間)になぜペイヤーはこだわるのか?
  • 価格および償還の評価をする際に活用している臨床的に注目している指標は?
  • リアルワールドエビデンスのどのデータはどのように活用しているのか?
  • 「価値に基づく価格」をオンコロジー領域においてどのように理解し、活用しているのか?
  • コンパニオン診断は、より効果の高い患者を特定する上で重要な役割を果たしているが、ペイヤーがこれらの使用費用を負担すべきですか?
  • 増大する医療コストの制限をするための方策として薬価のコントロールは米国がするべき方向だと思うか??
  • CAR-T細胞療法など、費用のかかる1回限りの治療に支払い負担をするペイヤーが直面する主な課題は?

医療費と治療による経済的な価値の相関関係を示すデータへの要望

米国のあるペイヤーは、非常に稀な悪性腫瘍に対する高額な治療とアウトカムが期待されているがん患者への治療費を比較して、治療コストとその治療による経済的な価値とのバランスをしっかりとしたデータは今まで提供されたことはないと述べている。インタビューでは以下のように述べている。

「ある患者が入院もしくはERを利用した際の医薬品コストが年間1000万円程度かかったとしても、治療によりトータルとして経済的な価値を相殺、もしくは削減しているとしたらペイヤーにとってもその支払いは十分に価値があると言える。このようなデータは私たちは見ないものだが。一方で、非常に稀少なタイプの悪性腫瘍に対する治療薬だからといって製薬企業が約2500万円の医薬品代金をチャージしても同様の論理が通用するのだろうか?私にとっても非常に難しい課題だが、経済的な価値のリターンが果たしてあるのだろうか?

つまり、製薬企業がこのような治療コストが経済的な価値を相殺もしくは削減しているといった証拠を見せてもらいたいと思うが、残念ながらこれらのデータは得られたことはない。」

アウトカムの向上に伴い、高価格の医薬品が治療薬として使われていることがオンコロジー領域においては顕著であるが、高価格の治療薬に対する価格と償還の大きな責任をもつペイヤーにとっては高価格の治療薬に対する判断は非常に難しいと言える。確かに生存率と生存期間が長くなることで治療による経済的な価値を維持するとの論理もわかるがより合理的な説明ができるデータへの必要性はこれからも高くなると思われる。

バイアスがかかったリアルワールドデータへの信頼性の欠如

現在、製薬企業にとって「リアルワールドデータ」「リアルワールドエビデンス」は開発中、および承認上市後でも常に活用するデータとなった。しかしながらペイヤーはこれらのデータは「バイアス」がかかっていることを前提にして活用せざるを得ないようである。つまりフォーミュラリー掲載のための都合の良いビッグデータであるとの指摘である。
ある米国ペイヤーのコメントと指摘として、

私のみならず、ペイヤーの多くは「リアルワールドデータ」を見たいと思っている。しかしながら、製薬会社が作った報告書である場合、バイアスがかかったデータとして見ている。実は、非常に多い。もちろん、リアルワールドデータの多くは興味深いが、私たちは製薬会社が作成、共有されたデータにはネガティブなものはない。何も期待しておらず、信頼性に欠けていると言わざるを得ない。

例えばだが、製薬会社がスポンサーで最終的にKaiserがその報告書を発行した場合であっても十分な信頼を付加できるのではないでしょうか?もちろん、その調査は信頼できるデータを活用しての話だが。。。リアルワールドデータは間違いなくパワフルな情報ソースであるが、潜在的なバイアスを払拭することが難しくその点で信頼性に欠けていると言わざるを得ない。」

承認前だからこそ推奨したい情報交換の場

ペイヤーは製薬企業の担当者とどのような関係を築きたいと思っているのでしょうか?今回の調査でインタビューをしたペイヤーの一人はより積極的に開発段階で製薬会社とコンタクトをしており、製薬会社はそのようにペイヤーに対してアプローチするべきと言っている。

「残念なことにすべてのペイヤーが、臨床試験のデザインに実際に関与する時間やリソースがあるとは思いません。」

ペイヤーも価格と償還に際して適切な判断をするために十分な時間と情報が必要であるようです。もちろん重要な判断をしなければならない立場であるペイヤーはそのための知見と専門性を有してはいるが、製薬会社の関与により得られる情報に大きな価値を示しているようだ。また、この判断決定の前だからこそ、製薬会社にとってもペイヤーから大切な情報が得られるとも述べている。

「だからこそ、販売開始の数ヶ月前、販売直前まで待つのではなく、製薬会社はペイヤーとエンゲージするべきだと強く思います。このことにより、製薬会社とペイヤーはその候補品がどのように差別化をして開発を進めてきており、なにが重要であるのかを共有し、理解することができます。この過程こそが保険会社との契約と価格戦略を決定づけると思います。

  • この治験データの評価は?
  • 市販後調査ではなにをするべきでしょうか?

私は製薬会社の関係者と会い、治験の詳細を共有し、結果を提示してもらい、それに対する上記のような質問に対してフィードバックを提供する機会を得られます。」

以上、2020年3月25日に発行となった最新の調査レポート「【英文報告書】欧米における オンコロジー領域の価格と償還対策:ペイヤーにとっての課題は?Pricing and Reimbursement in Oncology」の一部をご紹介しました。

欧米においては。承認のみならず。フォーミュラリーに掲載され、より多くの適切な患者グループを対象として利用されることは非常に重要な戦略の一つである。とくにアウトカムと競争が共に高まるオンコロジー市場では正しい価格と償還対策が、売り上げに大きく影響を及ぼします。今回の調査では、実際に経験豊かなペイヤーの担当者から直接得た情報であり、全世界の製薬企業の方々にとって有益な知見としてご紹介致しします。

参照の英文報告書

タイトル:【英文報告書】欧米における オンコロジー領域の価格と償還対策:ペイヤーにとっての課題は?
Title:Pricing and Reimbursement in Oncology
発行月:2020年3月25日
発行会社:FirstWord Pharma
シングルユーザー価格:$3,295 マルチユーザー価格:$7,995

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