新型コロナウイルス感染拡大に広報はいかに対応すべきか|COSMO社

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新型コロナウイルス感染拡大に広報はいかに対応すべきか

「リスク案件の開示」と「メディアイベントのあり方」を考える

新型コロナウイルスによる感染拡大が止まりません。企業としても、感染予防、拡大防止策を徹底し、感染による影響を最小限に抑えると同時に、事業継承のための諸施策を展開する必要があります。

このような状況の下で、広報機能はいかに対応すべきなのでしょうか。今回は、社員が感染者となった場合の開示のあり方、メディアを対象とした記者会見のあり方―の2つのケースを取り上げ、改めて広報対応の基本的な考え方、留意点などを整理してみました。

社員が感染者となった場合の情報開示は

感染者についての情報公開は行政が行っており、従業員に感染者が出た場合、企業がその事実について社外に情報公開する法的ルールはないようです。「一律にこうすべきだ」というルールや判断基準がありませんので、自社が感染の当事者となった場合、自主開示すべきか否か、何をどこまで開示すべきかなど、各企業の経営者の判断が問われることになります。

重要なことは、たとえ行政が実名を伏せて感染者を公表したとしても、社内外から情報が漏れ、ネット上で拡散するリスクが高いということです。複数のテナントを抱える商業施設などでは、テナントに配布した文書が流出し、メディアに伝わることも考えられます。企業が自ら開示せず、「感染の事実を隠した」と見なされれば、社会的に非難を受けるリスクは、感染の事実を開示するリスクに比べて、はるかに大きいと肝に命じるべきでしょう。

従って、このケースの広報対応としては、濃厚感染者となる可能性のある方への注意喚起という観点から、自社のホームページなどを使って自社の従業員が感染者となった事実を社外に自主開示すべきです。自社施設(オフィス、工場、店舗など)内に出入りしていた人が感染者となった場合も、同様の対応とすべきでしょう。

自主開示の際の留意点としては次の3点を挙げることが出来ます。

  1. 個人のプライバシーは守る(行政の発表内容に合わせる)
  2. 新型コロナウイルスに関しては、行政が認定発表した以外の事実は開示しない
  3. 従業員に対する社内告知も忘れずに行う。「報道を見て初めて知った」ということがあっては、会社に対する社員の不信感が増大することにもなりかねません。社外への情報開示にあわせ、社内広報を常にセットで考えることが肝要です。

なお、感染者の行動履歴が解明される中で、自社施設や自社の運営するイベントなどに、感染者が立ち入ったり参加したことが行政当局から公表された場合も、企業側が自主開示するケースが多くなっています。また、行政からの公表がない場合でも、企業側が積極的に開示するケースが見られます。感染の影響というリスクにさらされながらも、積極的な情報開示を行うことで、メディア、ひいては社会からの信用を得られるケースがあることは特筆に値すると言えます。

感染拡大のなかで記者会見はどうすべきか

新型コロナウイルスの国内感染が広がる中で、政府からの「イベント自粛要請」もあり、企業のメディアイベントも次々と開催が中止または延期となっています。企業にとって重要な情報発信の機会であるメディアイベント、中でもトップ出席による記者会見を、感染拡大の中で実施すべきか否かは、広報担当者にとって非常に悩ましいテーマであり、また日頃の広報活動の蓄積や、広報としての知見、ノウハウ、センスが試される局面でもあります。

このような時期だからこそ、今一度広報の基本に立ち返り、企業を取り巻く現在の状況を冷静に客観的に分析し、社外の視点に立って「今社会は企業に何を求めているのか」を的確に把握しメディア側の状況も考慮に入れた情報発信のあり方を考え、対応していくことが求められているのではないでしょうか。

以下、企業が取りうる選択肢とメリット、デメリットを整理してみました。広報の新たな手法やメディアとの新たな関係作りの一助になれば幸いです。

  1. 会見を中止または延期
    会見を中止とする場合は、会見予定時刻に合わせてリリースを配布(配信)し、問い合わせに対応するなどの代替措置をとるべきでしょう。
  2. 会見とウェビナー(ウェブセミナー)を併用して実施
    ウェビナーは会見に参加しないメディアに対して、ウェブ上での参加の機会を提供しようという試みです。メディア側が参加出来る環境を整えるためには、いくつかの制約があり、慣れないメディアにとってはかなりハードルの高い手法ですが、ウェブの扱いに習熟したメディア、地方に本拠を置くメディアや物理的に出席が難しいメディアからは、「積極的に活用したい」と評価する声も聞かれ、今後取り組んでみる価値のある手法の一つと言えるでしょう。
  3. 会見をウェビナー方式に完全移行して実施
    トピックやターゲットとするメディアが合致した場合には有効に機能することもありますが、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションや会見後の囲み取材、企業関係者との人脈づくりに主眼を置くメディア、ジャーナリストからは敬遠される可能性がありますので、一気に移行するのは難しいかもしれません。但し、今後は海外とTV会議で結んだ会見や、電話会議システムを利用した会見など、ステップを踏んで新たな情報発信のあり方を探ってみることは大事です。また、SNSなど情報通信システムが高度に発展する時代におけるメディアと企業との新しい関係づくりについては、メディアの皆さんとも腹を割って、ざっくばらんに議論してみるのもよいでしょう。
  4. 会見は中止し、一部メディアに特別に対応
    専門媒体など特定のメディアに限定した少人数の会見に切り替えるやり方ですが、公平性を欠いたセレクティブなディスクロージャーと見なされるリスクがありますので注意が必要です。リリースで情報開示した後、通常の個別の取材対応を積極的に行うやり方に切り替えるほうが賢明でしょう。

本原稿は、ネット上で公開された各企業の広報対応や専門家による論評記事、メディアへのヒヤリング情報などを基に、COSMOの責任において取りまとめたものです
本件の英訳は追ってCOSMOのウェブサイトに掲載いたします。

この記事は、COSMO社が発行した以下のオリジナル記事を承諾を得て掲載しております。

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