新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(3月13日UPDATE)

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世界各地で広がる新型コロナウイルス感染症「COVID-19」。治療薬やワクチンの開発動向をまとめました。

治療薬

米国の臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」によると、現在、COVID-19を対象に臨床試験が行われているのは、▽抗ウイルス薬レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)▽抗HIV薬ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィの「カレトラ」)▽抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)――など。

日本では、国立国際医療研究センターの研究班による観察研究として、これら3種類の薬剤の投与が行われています。このほか、吸入ステロイド喘息治療薬シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)の有効性を示唆する報告があり、帝人ファーマは3月10日、厚生労働省からの要請に応じて臨床研究向けに同薬の供給体制を確保すると発表しました。

日本感染症学会が2月26日に公表した暫定的な指針によると、COVID-19で抗ウイルス薬の投与対象となるのは、50歳以上の患者と、糖尿病、心血管疾患、慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患のある患者、免疫抑制状態にある患者など。いずれも、低酸素血症を発症して酸素投与が必要になった段階で投与を検討するとしています。

レムデシビル(米ギリアド)

ギリアドは2月26日、COVID-19を対象にレムデシビルの臨床第3相(P3)試験を始めると発表しました。試験は、重症患者400人を対象としたものと、中等症患者600人を対象としたものの2本で、アジアを中心に診断例が多い世界各国の医療機関が参加。いずれも、レムデシビルを5日間または10日間、静脈内投与し、発熱と酸素飽和度を指標として有効性を評価します。

レムデシビルはすでに、中国(中日友好医院主導)と米国(国立アレルギー・感染症研究所=NIAID主導)で臨床試験が始まっており、ギリアドによる企業治験はこれらの試験データを補完するものになるとみられています。中国での試験は4月に結果が得られる見通しです。

レムデシビルはもともと、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた核酸アナログ。これまでの研究では、コロナウイルスが引き起こすMERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)への効果が示唆されており、ギリアドは2月3日に発表した声明で「今回の新型コロナウイルス以外のコロナウイルスで得られているデータは希望を与える内容だ」としています。

ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィの「カレトラ」)

ロピナビルはウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬で、リトナビルはその血中濃度を保ち、効果を増強する役割を果たします。これらの配合剤であるカレトラは、日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。

In vitroや動物モデルを使った研究でMERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示唆されています。CrinicalTrials.govによると、COVID-19患者にロピナビル/リトナビルを投与する複数の臨床試験が中国で実施中です。

ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)

アビガンは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が200万人分を備蓄しています。

アビガンは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。

中国の臨床試験登録サイト「Chinese Clinical Trial Registry(ChiCTR)」によると、中国ではCOVID-19に対するファビピラビルの臨床試験が複数行われています。

その他

ChiCTRによると、これら3つの薬剤以外にも、▽抗HIV薬ダルナビル/コビシスタット▽抗マラリア薬クロロキン▽抗ウイルス薬インターフェロン▽抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビル▽同バロキサビル▽ステロイド薬メチルプレゾニドロン▽抗IL-6受容体抗体トシリズマブ――などを使った臨床試験が中国で行われています。

武田薬品工業は3月4日、COVID-19の治療薬として、原因ウイルスSARS-CoV-2に対する高免疫グロブリン製剤「TAK-888」の開発を始めると発表しました。TAK-888は、回復した患者の血漿から採取した病原体特異的な抗体を濃縮したもので、これを投与すると患者の免疫系の活性が高まり、回復の可能性が高まることが期待できるといいます。

武田はTAK-888の開発に向けて世界各国の規制当局と協議を進めており、ほかにもCOVID-19に有効な薬剤がないか、発売済みの製品や新薬候補ライブラリを探索しています。
米ファイザーも新たな抗ウイルス薬の開発を進めている模様。ロイター通信は3月2日、米ファイザーがSARS-CoV-2に抗ウイルス活性を示す化合物を特定し、第三者機関と化合物の評価を進めていると報じました。

米ビル・バイオテクノロジーはCOVID-19に対する2つのモノクローナル抗体を特定し、中国での権利を上海のウーシー・バイオロジクスに導出。米リジェネロン・ファーマシューティカルズは、COVID-19に対する抗体医薬の開発に向けて米保健福祉省(HHS)と提携しています。米イーライリリーも同アブセラ・バイオロジクスと治療用・予防用の抗体を共同で開発。米アルナイラム・ファーマシューティカルズはビル・バイオテクノロジーとSARS-CoV-2を標的とするsiRNAを開発すると発表しました。

ワクチン

COVID-19を予防するワクチンの臨床試験も近く始まる見通しです。米バイオベンチャーのモデルナは2月24日、開発中のコロナウイルスに対するmRNAワクチン「mRNA-1273」の治験薬を初めて出荷したと発表しました。米NIAIDが近くP1試験を始める予定です。

CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18~55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。

新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ/NIADI▽独キュアバック▽米ノババックス▽英オックスフォード大――とパートナーシップを締結。ノババックスは自社開発したナノ粒子ワクチンのP1試験を今年の晩春に始めるとしています。

英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、アジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力しています。GSKはさらに、中国のクローバー・バイオファーマシューティカルズとも研究協力に合意。クローバーにもアジュバント技術を提供し、同社創製のワクチンの大量生産をサポートします。

このほか、仏サノフィや米ジョンソン・エンド・ジョンソンなどもCOVID-19に対するワクチンの開発を表明。ロイター通信は3月5日、ファイザーが独ビオンテックとワクチンの共同開発を検討していると報じました。

アンジェスや田辺三菱が開発に名乗り

日本企業では、アンジェスが3月5日、大阪大とDNAワクチンを共同で開発すると発表しました。タカラバイオが製造面で協力し、化学大手のダイセルが有効性を高めるための新規投与デバイス技術を提供。アンジェスは「6カ月以内のできる限り早い時期の臨床試験開始を目指す」としています。

田辺三菱製薬もワクチン開発に乗り出しています。同12日、カナダの子会社メディカゴが、SARS-CoV-2の植物由来ウイルス様粒子(VLP)の作製に成功したと発表。これを使ったCOVID-19向けワクチンの非臨床試験を行っており、「順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するために当局と協議したい」(田辺三菱)としています。

このほか、アイロムグループのIDファーマは、中国・復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。

(AnswersNews 前田雄樹)

この記事は、AnswersNewsが発行した以下のオリジナル記事を承諾を得て掲載しております。

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