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一次治療として週1回のdose-dense化学療法は、上皮性卵巣がんのPFSを改善しない

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がんの国際会議、研究結果の日本語での配信をしている「がん医薬情報リファレンス」が翻訳、発表した上皮性卵巣がんに関する情報を紹介します。今回は上皮性卵巣がんに関して2019年11月29日にThe Lancet誌に発表され、12月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のホームページに掲載となった記事を翻訳したものです。

1回の化学療法によって腫瘍量が減少すると、腫瘍増殖速度が増し化学療法への感受性も増すことを期待するdose-dense化学療法であるが、日本人以外の民族を期限にする上皮性卵巣がんに対する一次治療としては推奨されるべきではないという結果がICON8試験から示された。

一次治療として週1回のdose-dense化学療法は、上皮性卵巣がんのPFSを改善しない

日本人以外の民族を起源とする女性の上皮性卵巣がんに対する一次治療として、週1回のdose-dense化学療法は推奨されるべきではない。

ICON8試験の研究者らは、2019年11月29日に、The Lancet 誌において、上皮性卵巣がんに対する一次治療として、週1回投与のdose-dense化学療法が投与可能であることを報告した。しかしながら、欧州人の患者集団において、標準的な3週間毎の化学療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することはなかった。

日本人対象のJGOG3016試験では、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)での有意な改善

著者らは研究の背景で、カルボプラチン(販売名:パラプラチン)とパクリタキセル(販売名:タキソール)を3週間毎で投与する化学療法は、上皮性卵巣がんに対する標準的な一次治療であると記述した。週1回投与のパクリタキセル療法は、プラチナ製剤耐性再発卵巣がんにおいて、有効かつ忍容性の高いアプローチである。

日本のJGOG3016試験では、パクリタキセルを週1回投与し、カルボプラチンを3週間毎で投与することで、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の有意な改善が示された。

特に、週1回の治療では、無増悪生存期間(PFS)中央値が11カ月延長され、対応する全生存期間(OS)の中央値は38カ月改善された。研究チームはICON8試験において、主に欧州の上皮性卵巣がん患者を対象に、2剤の抗がん剤を週1回投与するdose-dense化学療法の有効性と安全性を、標準の3週間毎の化学療法と比較することを目的とした。

IC〜IV期の上皮性卵巣がんの患者を対象に実施された第3相ICON8試験

ICON8試験は、新たに診断されたFIGO(International Federation of Gynecology and Obstetric)分類IC〜IV期の上皮性卵巣がんの患者を対象に実施された第3相試験である。

患者は、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)5またはAUC6のカルボプラチンおよび175mg/m2のパクリタキセルを3週間毎に投与するグループ1、AUC5/AUC6のカルボプラチンを3週間毎+80mg/m2のパクリタキセルを週1回投与するグループ2、AUC2のカルボプラチン+80mg/m2のパクリタキセルを週1回投与するグループ3に無作為に割り付けられた。

患者は、英国、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、韓国、アイルランド共和国の117施設から募集された。患者は、即時の初回手術の後か、その後予定している初回手術の前に行う術前化学療法として本試験に参加した。

試験の主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)およびOSであった。データ分析は、intention-to-treat集団で行われ、PFSにおけるハザード比の検出力0.75として行われた。主な比較は、対照治療群(グループ1)と週1回投与を行う被験治療群(グループ2およびグループ3)の間で行われた。

2011年6月から2014年11月までに、合計1566人の患者が無作為に各治療群に割り当てられた。プロトコルで定義された6サイクルの治療を完了したのは、グループ1では72%(365人)、グループ2では60%(305人)、グループ3では63%(322人)であったが、それぞれのグループで90%(454人)、89%(454人)、85%(437人)が6サイクルのプラチナベース化学療法を完了した。

パクリタキセルの用量強化は、週1回の治療で達成された(パクリタキセルの総投与量中央値は、グループ1は1010mg/m2、グループ2は1233 mg/m2、グループ3は1274mg/m2であった)。

2017年2月までに、65%の患者(1018人)に、病気の進行が認められた。

観察されなかった有意な無増悪生存期間(PFS)の延長

週1回投与のレジメンで有意な無増悪生存期間(PFS)の延長は観察されなかった(制限付き平均生存時間は、グループ1で24.4カ月[97.5%CI 23.0–26.0]、グループ2で24.9カ月[24.0–25.9]、グループ3で25.3カ月[23.9–26.9]であった。PFS中央値は、グループ1で17.7カ月[IQR 10.6–未到達]、グループ2で20.8カ月[11.9–59.0]、グループ3で21.0カ月[12.0–54.0]であった。ログランク検定p=0.35[グループ2対グループ1]、 p=0.51[グループ3対グループ1])。

ほとんどの患者は6サイクルの化学療法を完了することができたが、グループ2および3の週1回の治療は、治療変更の回数増加とグレード3以上の毒性の発生率増加に関連していた。グレード3または4の毒性は週1回の治療で増加したが、ほとんど重症化することはなかった。発熱性好中球減少症と感覚性ニューロパチーの発生率は、グループ間で同様であった。

両試験の結果の不一致に民族間のゲノム薬理学的差異の可能性

ICON8試験とJGOG3016試験の結果の不一致の根底には民族間のゲノム薬理学的差異がある可能性があり、上皮性卵巣がんの日本人女性に対する一次治療の選択肢としては、週1回投与のパクリタキセルdose-dense療法が依然として考えられる。しかし、日本人以外の民族を起源とする女性においては、上皮性卵巣がんに対する一次治療の選択肢として、週1回投与の高用量パクリタキセルは推奨されるべきではない。

ICON8(The International Collaboration on Ovarian Neoplasms 8)試験は、婦人科がん国際共同研究グループ(the Gynecologic Cancer Intergroup)によって行われた本研究は、キャンサーリサーチUK、Medical Research Council(英国医学研究会議)、アイルランドのHealth Research Board、Irish Cancer SocietyおよびCancer Australiaから資金提供を受けた。

参考文献

Clamp AR, James EC, McNeish IA, et al. Weekly dose-dense chemotherapy in first-line epithelial ovarian, fallopian tube, or primary peritoneal carcinoma treatment (ICON8): primary progression free survival analysis results from a GCIG phase 3 randomised controlled trialLancet; Published online 29 November 2019.DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)32259-7

翻訳: 河合加奈
監修; 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)
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原文掲載日

出典: 一次治療として週1回のdose-dense化学療法は、上皮性卵巣がんのPFSを改善しない

発行元:海外がん医療情報リファレンス (一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT・ジャムティ)
発行日: 2020年1月22日

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