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残存腫瘍量により乳がん全タイプで転帰予測が可能|サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)

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乳がん患者の大規模メタ解析で、術前化学療法後の残存腫瘍量が、すべての乳がんタイプにおいて正確な再発率および生存率の長期予測因子となることが示された。このデータは2019年12月10日から14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

「近年、多くの単施設試験で、術前化学療法後の乳がんの残存腫瘍量により、患者の術後の予後に関して多くの情報が得られることが示されています」と、ヒューストンのテキサス大学MDアンダーソンがんセンター病理学部教授・研究運営統括長で、本研究の筆頭著者でもあるW. Fraser Symmans医師は述べている。「このことが乳がんのすべてのタイプについて言えるのか、また過去の知見がどのくらい一般化できるかの判断に役立てるために、このメタ解析を実施しました」。

Symmans氏によると、残存腫瘍量は、原発腫瘍のサイズ、浸潤がんの上皮内がんに対する割合、リンパ節転移などの複数の要素を通して評価する。MDアンダーソンにホストを置く計算機が残存腫瘍(residual cancer burden: RCB分類)指標を算出し、pCR(病理学的完全奏効)、RCB-I(最少の腫瘍量)、RCB-II(中程度の腫瘍量)、RCB-III(顕著な腫瘍量)に分類する。

本研究で、Symmans氏とI-SPY臨床試験コンソーシアム(I-SPY Clinical Trials Consortium)のスタッフは、約5,100人の患者データを含む、12施設および臨床試験からのデータを収集し、解析した。混合効果モデルを用いて、RCB指数と無イベント生存率(EFS)および無遠隔再発生存率(DRFS)との相関を検定した。

残存腫瘍量の指数は、無イベント生存率(EFS)および無遠隔再発生存率(DRFS)のいずれとの間にも高い相関があり、この結果は12施設すべて、また4つのすべての乳がんタイプで一致して認められた。無イベント生存率(EFS)については、RCB分類の解析で以下の結果が示された:

  • ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性の患者では、患者の11%が病理学的完全奏効(pCR)、11%がRCB-I、53%がRCB-II、25%がRCB-IIIと分類された。10年後のフォローアップ時点で再発または死亡が認められたのは、pCR群で19%であったのに対し、RCB-I群で14%、RCB-II群で31%、RCB-III群で48%であった。
  • ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陽性の患者では、患者の38%が病理学的完全奏効(pCR)、20%がRCB-I、33%がRCB-II、8%がRCB-IIIと分類された。10年後のフォローアップ時点で再発または死亡が認められたのは、pCR群で9%であったのに対し、RCB-I群で17%、RCB-II群で36%、RCB-III群で55%であった。
  • ホルモン受容体(HR)陰性/HER2陽性の患者では、患者の69%が病理学的完全奏効(pCR)、11%がRCB-I、16%がRCB-II、4%がRCB-IIIと分類された。10年後のフォローアップ時点で再発または死亡が認められたのは、pCR群では7%であったのに対し、RCB-I群で15%、RCB-II群で37%、RCB-III群で40%であった。
  • ホルモン受容体(HR)陰性/HER2陰性の患者では、患者の43%が病理学的完全奏効(pCR)、12%がRCB-I、33%がRCB-II、11%がRCB-IIIと分類された。10年後のフォローアップ時点で再発または死亡が認められたのは、pCR群では14%であったのに対し、RCB-I群で25%、RCB-II群で39%、RCB-III群で75%であった。

「RCB指数は予後を強く示すものであり、これによって私たちは自信をもって再発リスクを予測することができます」とSymmans氏は述べる。「今回の残存腫瘍量(RCB)メタ解析は、患者の術前療法に対する反応がどれくらいかという実臨床上の根拠を提供するものであり、RCB指数を予後リスクに読み替えることで私たちは乳がん患者に対する最も適切な次のステップを決定することができます」。

すべてのがんセンターで残存腫瘍量のデータを日常的に収集しているわけではないものの、今回の解析から、病理学者がそのデータを収集して正確な結果を導くことができ、乳がんタイプにおける再発率の予測因子として残存腫瘍量データがもつ可能性を高めることができることが示されているとSymmans氏は述べている。

また本研究の1つの制約は本研究が複数の施設からのデータに基づいているため、臨床手法、検体の取扱い方法、その他の潜在的な決定因子に多様性が生じたことであるとSymmans氏は述べる。残存腫瘍量に関するデータの一部は前向きに収集され、一部は後ろ向きに収集されたものである。

「今後は、残存腫瘍量の報告方法を標準化できれば、長期的予後を判断する際の有用性を向上させることができます」と、Symmans氏は述べる。

本研究は、米国国防総省、米国国立衛生研究所(NIH)のプログラム助成金、テキサスがん予防研究所、および乳がん研究基金の資金援助を受けている。Symmans氏は、MDアンダーソンのRCB指数で使用される数式に関する特許の共同所有者である。

翻訳: 瀧井希純
監修: 原 文堅(乳がん/がん研有明病院 乳腺センター 乳腺内科)
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原文掲載日

出典: 残存腫瘍量により乳がん全タイプで転帰予測が可能|サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)

発行元:海外がん医療情報リファレンス (一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT・ジャムティ)
発行日: 2020年1月22日

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