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【医薬品】先駆け審査指定制度、対象品目の一覧と開発状況まとめ┃AnswersNews

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世界に先駆けて日本で承認申請を目指す新薬の審査期間を短縮する「先駆け審査指定制度」。2015年の制度創設以来、医薬品ではこれまでに20品目が指定を受け、このうち5品目がすでに承認を取得し、2品目が承認申請中です。対象品目の開発状況をまとめました(記事の末尾に開発状況一覧)。

5品目が承認、2品目が申請中

先駆け審査指定制度とは、世界に先駆けて日本で申請を目指す画期的な新薬、医療機器、再生医療等製品、体外診断用医薬品を承認審査で優遇する制度。2015年に「試行的実施」という形で制度が創設されました。

対象品目には優先審査が適用される上、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による事前評価で実質的に審査が前倒しされ、医薬品の場合、通常なら12カ月程度かかる審査期間を半分の6カ月に短縮。薬価算定の際には「先駆け審査指定制度加算」が適用され、10~20%の範囲で薬価が上乗せされます。

20の医薬品が対象に

対象は、▽新規作用機序を持つ▽対象疾患が重篤である▽対象疾患に対して極めて高い有効性がある▽世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思がある――の要件を満たす品目。企業からの応募をもとに厚生労働省が選定します。

これまでに4回の公募(5回目の公募は2019年10月1日から実施中)で計20の医薬品が対象に選ばれ、このうち19年10月21日現在で5品目が承認を取得。2品目が申請中です。

ゾフルーザ、ゾスパタなど承認

承認を取得した先駆け審査指定制度の対象品目は、
▽塩野義製薬の抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」(一般名・バロキサビル マルボキシル)
▽ノーベルファーマの結節性硬化症に伴う血管線維腫治療薬「ラパリムスゲル」(シロリムス)
▽アステラス製薬の急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」(ギルテリチニブ)
▽ファイザーのトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビンダケル」(タファミジス メグルミン)
▽中外製薬の抗がん剤「ロズリートレク」(エヌトレクチニブ)
――の5品目。

ゾフルーザは、「タミフル」など既存のノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を持つキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬。1回の内服で治療が完結するのが最大の特徴で、利便性を武器に2019年3月期に263億円を売り上げ、市場シェアトップに躍り出ました。

ゾスパタは国内初のFLT3阻害薬で、FLT3遺伝子の変異がある急性骨髄性白血病が対象。ロズリートレクはROS1/TRK阻害薬で、NTRK融合遺伝子変異陽性の固形がんを対象に承認されました。

【医薬品】承認を取得した先駆け審査指定制度の対象品目(2019年10月21日現在):製品(一般名)・社名・申請・承認・先駆け加算(率)→ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)・塩野義製薬・17年10月・18年2月・10%/ラパリムスゲル(シロリムス)・ノーベルファーマ・17年10月・18年3月・10%/ゾスパタ(ギルテリチニブフマル酸塩)・アステラス製薬・18年3月・18年9月・10%/ビンダケル*(タファミジス メグルミン)・ファイザー・18年11月・19年3月・-/ロズリートレク(エヌトレクチニブ)・中外製薬・18年12月・19年6月・10%/(*は適応拡大。PMDAの資料や各社のプレスリリースなどをもとに作成 )

日本新薬の核酸医薬など申請中

申請段階にある先駆け審査指定制度の対象品目は、
▽日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬ビルトラルセン
▽ステラファーマのホウ素中性子捕捉療法用ホウ素剤ボロファラン(10B)
――の2品目。

ビルトラルセンは国産初のアンチセンス核酸医薬。ジストロフィン遺伝子のmRNAに作用し、エクソン53をスキップすることで機能を持ったジストロフィンタンパク質を産生させます。

ボロファラン(10B)はホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使うホウ素剤です。がん患者に同薬を投与すると、ホウ素(10B)ががん細胞に集積。そこに体外から中性子線を当てると放射線が発生し、これによってがん細胞を破壊します。BNCTで中性子線を照射する装置は住友重機械工業が開発中。こちらも医療機器の先駆け審査指定制度の対象に指定されています。

楽天メディカルの光免疫療法はP3、武田のナルコプレシー治療薬はP1

対象品目20品目のうち15品目は臨床開発段階。▽協和キリンの糖尿病性腎臓病治療薬「RTA402」(バルドキソロンメチル)▽楽天メディカルジャパンの光免疫療法薬「ASP-1929」(適応は頭頸部がん)――などが臨床第3相(P3)試験に進んでいます。

RTA402は、体内のストレス防御反応で中心的な役割を果たす転写因子Nrf2を活性化する低分子化合物。抗酸化ストレス作用と抗炎症作用によって、腎機能を改善させると考えられています。

ASP-1929は、抗EGFR抗体セツキシマブにIR700という色素を結合させた抗体薬物複合体(ADC)。投与後、患部にレーザー装置で非熱性赤色光を当てると、IR700が活性化されて物理的にがん細胞を破壊します。

第一三共は3品目が指定

第一三共が大型化を期待するADC「DS-8201」(トラスツズマブ デルクステカン)は、先駆け指定を受けた「HER2過剰発現の胃がん」でP2試験を実施中。HER2陽性乳がんの適応では19年9月に申請を行っています。

第一三共はDS-8201のほかに、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「DS-5141b」と抗がん剤「DS-3201」(バレメトスタット、適応は抹消性T細胞リンパ腫)が先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。DS-5141bは、日本新薬が申請中のビルトラルセンとは異なるエクソンをスキップするアンチセンス核酸で、現在P1/2試験の段階。P1試験を行っているEZH1/2阻害薬バレメトスタットは、不活化されたがん抑制遺伝子を再活性化することでがん細胞の増殖を抑えます。

【医薬品】先駆け審査指定制度の企業別対象品目数(2019年10月21日現在):【3品目】→第一三共/【2品目】→武田薬品工業/【1品目】→ノーベルファーマ、日本新薬、塩野義製薬、Integrated Development Associates、アステラス製薬、サノフィ、ステラファーマ、小野薬品工業、協和キリン、JCRファーマ、ファイザー、メルクバイオファーマ、中外製薬、楽天メディカルジャパン、エーザイ/(PMDAの資料をもとに作成 )

武田薬品工業のオレキシン2受容体作動薬「TAK-925」は、日中の過度な眠気を主症状とするナルコプレシーを対象に開発中。19年9月にカナダで開かれた世界睡眠学会ではP1試験の良好な結果が発表され、武田創製の新薬として久々の大型化が期待されています。

一方、武田がもう1つ先駆け指定を受けていたプロテアソーム阻害薬「ニンラーロ」(イキサゾミブ、ALアミロイドーシスへの適応拡大)は、グローバルP3試験で主要評価項目を達成できず、開発を中止しました。

先駆け審査指定制度 対象品目の開発状況一覧

【医薬品】先駆け審査指定制度の対象品目と開発状況(*は適応拡大。2019年10月21日現在 ):製品名/開発コード(一般名)・社名・対象疾患・開発段階(P1・P2・P3・申請・承認)→【指定1】ラパリムスゲル(シロリムス)・ノーベルファーマ・結節硬化症に伴う血管繊維腫・17年10月申請、18年3月承認/NS-065(ビルトラルセン)・日本新薬・デュシェンヌ型筋ジストロフィー・19年9月申請/ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)・塩野義製薬・インフルエンザウイルス感染症・17年10月申請、18年2月承認/BCX7353(-)・Integrated Development Associates・遺伝性血管浮腫の血管性浮腫の発作管理・P3/ゾスパタ(ギルテリチニブフマル酸塩)・アステラス製薬・FLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病・18年3月申請、18年9月承認/【指定2】-(オリプダーゼアルファ)・サノフィ・酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症・P2/DS-5141b(-)・第一三共・デュシェンヌ型筋ジストロフィー・※P1/P2/SPM-011(ボロファラン(10B))・ステラファーマ・悪性神経膠腫、頭頸部がん・19年10月申請/オプジーボ*(ニボルマブ)・小野薬品工業・胆道がん・P1/【指定3】RTA402(バルドキソロンメチル)・協和キリン・糖尿病性腎臓病・P3/JR-141(イズロン酸-2-スルファターゼ)・JCRファーマ・ムコ多糖症II型(ハンター症候群)・P3/ビンダケル*(タファミジスメグルミン)・ファイザー・トランスサイレチン型心アミロイドーシス・18年11月申請、19年3月承認/MSC2156119J(-)・メルクバイオファーマ・METエクソン14スキッピング変異のある非小細胞肺がん・P2/DS-8201(トラスツズマブデルクステカン)・第一三共・HER2過剰発現の胃がん・P2/ ロズリートレク(エヌトレクチニブ)・中外製薬・NTRK融合遺伝子陽性の固形がん・18年12月申請、19年6月承認/【指定4】DS-3201(バレメトスタット)・第一三共・末梢性T細胞リンパ腫・P1ニンラーロ*(イキサゾミブ)・武田薬品工業・ALアミロイドーシス・※開発中止/TAK-925(-)・武田薬品工業・ナルコプレシー・P1/ASP-1929(-)・楽天メディカルジャパン・頭頸部がん・P3/E7090(-)・エーザイ・FGFR2融合遺伝子陽性の胆道がん・P1/(指定の数字は回(第1回15年10月27日/第2回17年4月21日/第3回18年3月27日/第4回19年4月8日)、PMDAの資料と各社のパイプラインをもとに作成 )

【医薬品】過去に先駆け指定を受けていたものの取り消された品目(*は適応拡大。2019年10月21日現在 ):製品名/開発コード(一般名)/社名/対象疾患/取り消し理由(時期)→【指定1】キイトルーダ*(ペムブロリズマブ)/MSD/胃がん/同作用機序の「オプジーボ」が先に承認されたため(17年9月)【指定2】BIIB037(アデュカヌマブ)/バイオジェン・ジャパン/アルツハイマー病の進行抑制・主要評価項目を達成する見込みがなくP3試験を中止したため(19年9月)(PMDAや厚労省の資料をもとに作成 )

(AnswersNews 前田雄樹)

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