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[READYFORに聞く]クラウドファンディングは医薬品の研究開発を救うのか|AnswersNews

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近年、新たな資金調達の手段としてさまざまな分野で広がりを見せるクラウドファンディング。最近では、関西医科大が膵がんの腹膜転移を対象とする臨床試験の資金を募り、目標金額を大きく上回る寄付を集めたことも話題となりました。

クラウドファンディングは、資金に窮する医薬品の研究開発を救う手段となるのか。関西医科大のプロジェクトを手掛けたクラウドファンディングサービス「READYFOR」でキュレーター(資金調達の伴走支援を行う担当者)を務める小谷菜美さん(写真左)と田中万由さん(同右)に話を聞きました。

(聞き手:AnswersNews 前田雄樹)

膵がんの臨床試験 目標の3.5倍の寄付

膵がん腹膜転移の患者さんに希望の光を――。今年6月、関西医科大が、膵がんの腹膜転移に対する新たな治療法の臨床試験の資金をクラウドファンディングで募ったところ、90日のプロジェクト期間で目標金額1000万円を大きく上回る約3539万円の寄付が集まり、話題となりました。

膵がんはほかのがんに比べて極端に予後が悪く、国立がん研究センターの集計によると、2009~10年に膵がんと診断された人の5年生存率は9.6%にとどまります。関西医科大が臨床試験を計画したのは、こうした膵がんで腹膜転移を起こした患者に、抗がん剤S-1とパクリタキセルを併用して点滴静注し、さらにパクリタキセルを腹腔内に直接投与する「S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内投与併用療法」。胃がんの腹膜転移で承認されている治療法ですが、膵がんではまだ承認されていません。

【田中】膵がんの腹膜転移は標準的な治療法が確立されておらず、死亡率が非常に高い疾患です。治療法の研究を続けてきた関西医科大の里井壯平教授は、医師として多くの膵がん腹膜転移の患者さんに会う中で、治療法がない現状を変えたいということで、胃がんですでに承認を受けている治療を膵がんに適応拡大するための試験を計画していました。

しかし、この抗がん剤はすでにジェネリック医薬品が出ていて、資金を募るために公的な補助金の申請を出したものの不採択という状況で、前に進めることができず、最後の手段としてREADYFORのクラウドファンディングに申請してもらい、プロジェクトがスタートしました。

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関西医科大が取り組んだクラウドファンディングのページ(READYFORのサイトから)

READYFORが臨床試験の資金調達を支援したのは関西医科大が2度目。初めての事例は東京慈恵会医科大付属第三病院が行う喘息治療の臨床試験で、このほか、北海道大によるエボラ出血熱治療薬の非臨床試験の資金調達も手掛けています。

【田中】エボラ出血熱の治療薬開発では、北海道大の高田礼人教授が20年以上ずっとエボラウイルスの研究に携わる中で、エボラ出血熱治療薬の候補となる化合物を発見したのですが、企業に協力を求めたり、助成金の申請をしたりしたものの、なかなか先に進めない状態が続いていて、非臨床試験の費用を集めたいということで最後の頼みとして相談いただきました。結果として、こちらも目標金額370万円に対して3.3倍となる1236万円の寄付が集まっています。

【小谷】今までREADYFORが扱う医療分野の案件は、例えば病院の建物のお金だとか、そういうものが中心でしたが、ここ1、2年で研究や治験といったような事例がいくつか出てきています。今も大阪大が口腔がん治療の研究開発費を募るクラウドファンディングを行っており、この分野はまだまだ増える余地があるのではないかと思っています。

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「ここ1、2年で医薬品の研究開発の資金調達事例が増えている」と語る小谷さん

医薬品開発を救う手段に「なり得ると思うし、なりたいと思う」

「今年、友人を膵臓がんで亡くしました」「父が膵がんでした。今でも悔しく思います」「身内が今、膵がんと闘っています」――。関西医科大のプロジェクトのコメント欄には、支援者からの応援メッセージが並びます。クラウドファンディングの原動力となるのは、こうした個人の想い。一般市民の想いが寄付という形を通じて医薬品の研究開発を前進させるのは画期的なことだと言えます。

【小谷】医療というのは、人の命、自分たちの未来、そして自分たちの日常に直結すること。しかし今までは、そこに対して何かアクションを起こそうとしても、そもそも選択肢がほとんどないという状況でした。クラウドファンディングによって自分の3000円とか1万円で何か貢献できるかもしれないし、社会を変える大きな力になるかもしれない。そういったメッセージに多くの方が共感していただいているのかなと感じています。

【田中】一般の方に理解してもらい、伝わっていかなければ、どんなにいいプロジェクトでも広げていくのは難しい。医療用語は専門用語が多いので、そこは先生とキュレーターがチームを組んで、一般の方に伝わるように、誤解を生まないようにということで工夫して行いました。そうやって情報がしっかり伝われば、この分野を支援してくれる人は多いのだろうと思います。

先生もなかなか患者さんや一般の方の声を広く聞く機会がないので、一人ひとりの応援のコメントが研究をする上での励みになっていると言っていました。そこも含めて、クラウドファンディングに挑戦していただけてよかったなと思いますね。

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難しい医学用語を噛み砕いて一般の人にプロジェクト内容をわかりやすく伝えることが成功のカギと語る田中さん

国立大学に対する運営費交付金が削減され、競争的資金の獲得も難しくなる中、資金不足にあえぐ研究者は少なくありません。READYFORがこれまでに医療系プロジェクトで集めた資金は3億円を超えるといいます。資金調達の新たな道を開くクラウドファンディングは、医薬品の研究開発を救う手段となり得るのでしょうか。

【小谷】なり得ると思いますし、なりたいと思っています。私たちとしても研究開発のお金が足りないという現状が多くあるということは認識していますので、公的な資金と民間の資金をうまく融合させてパイ全体を大きくしていくことができないかと思っています。

クラウドファンディングは、誰かが実行者となって先頭に立たなければお金を集めることはできません。今、表に立てる研究者に先陣を切っていただいているところだと思いますので、その次をどうつくっていくのかというのが1つの課題であり、私たちが伴走していく意味だと思っています。

【田中】関西医科大のプロジェクトが成功したことで、関心を寄せてくれる方は増えており、クラウドファンディングをしたいということで相談をいただくことも増えています。

【小谷】新しい事例をつくっていくのはもちろん、大きく成功したプロジェクトのその後が大切です。クラウドファンディングをすることによって、直接的な資金の調達だけでなく、次の補助金の獲得につながったり、企業との提携につながったりといった2次的3次的な効果もあるだろうと思っています。実行者と継続的な接点を持つことで、そうした効果をしっかり捉えていきたいですね。

私たちがこの分野に流せているお金はまだ決して大きな金額ではありませんが、今後もっと増やしていけたらなと思っています。

【クラウドファンディングとは】
クラウド(群衆)とファンディング(資金調達)を組み合わせた造語。不特定多数の人からインターネットを通じて資金を集める仕組みのこと。

この記事は、AnswersNewsが発行した以下のオリジナル記事を承諾を得て掲載しております。

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