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【ASCO2019】CAR-T細胞療法、押さえておきたいトピックス|DRG海外レポート

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AnswersNewsは、「製薬業界で話題のニュースがよくわかる」をコンセプトに、製薬業界に関するさまざまなニュースをわかりやすく解説するニュースメディアです。

この記事は、AnswersNewsが発行した以下のオリジナル記事を承諾を得て掲載しております。

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されたCAR-T細胞療法に関するデータの中から、特筆すべきものをピックアップして紹介します。

固形がんへの挑戦

科学界にとって、CAR-T細胞療法による固形がんの治療は、大きな挑戦であり、かつ遠い目標だ。ただ、今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)では、複数の作用を組み合わせた次世代型のCAR-T細胞療法に希望の光が見えた。比較的小規模な初期段階のデータではあるが、このアプローチが血液がん以外にも大きな可能性を持っていることが示されたのだ。

CAR-T細胞療法には腫瘍細胞を死滅させる力があるものの、PD-1/PD-L1といった免疫抑制に勝てない場合もある。こうした免疫抑制をPD-1/PD-L1を標的とする抗体で阻害すれば、CAR-T細胞による腫瘍細胞への攻撃を強化できる可能性がある。研究者らは、主要の微小環境をCAR-T細胞に最適な状態に整えるべく、CAR-T細胞療法と抗PD-1抗体を併用する、あるいはCAR-T細胞にPD-1抗体を導入するという方法を模索している。

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メソテリンやClaudin18.2が標的

CD19を標的とするCAR-T細胞がこの分野を開拓したあとも探索は続いており、ほとんどのB細胞性悪性腫瘍に発現する絶好の抗原を見つけることが最大の目標となっている。固形がんには、CARの標的になりそうなものはないのか。ポテンシャルのある標的として目下、研究されているのが、多くの固形がんで細胞表面抗原として発現するメソテリンだ。

前治療歴の長くメソテリンを発現している胸膜がん、転移性乳がん、転移性肺がんの患者を対象に行われた臨床第1相(P1)試験のデータによると、メソテリンを標的とするCAR-T細胞の胸膜内投与は、安全性は良好で、有望な抗腫瘍活性があることが示された。

このCAR-T細胞療法を受けた悪性胸膜中皮腫患者18人のうち、14人が追加の抗PD-1療法として「キイトルーダ」の投与を受け、2人は完全奏功、5人は部分奏功、4人は安定。興味深いことに、キイトルーダによるPD-1阻害の前には客観的奏功は見られなかった。この有望な結果は、メソテリンが期待の持てる標的であることを示唆するとともに、CAR-T細胞療法とPD-1阻害薬の併用が固形がんへの適用につながる可能性も示している。

アンメットニーズの高い2種類の固形がん、すなわち胃がんと膵腺がんも、CAR-T細胞療法の対象として検討されている。今回は、これらの腫瘍で多くみられるClaudin18.2(CLDN18.2)を標的とする治療の小規模P1試験のデータが発表され、忍容性の高さと有望な抗腫瘍活性が示された。評価可能な患者11人のうち1人が完全奏功し、3人が部分奏功、そして5人が安定。無増悪生存期間の中央値は130日だった。

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血液がんでも続く開発

CD19を標的とする米セルジーンのlisocabtagene maraleucel(通称liso-cel)は、前治療歴の長い非ホジキンリンパ腫患者で期待の持てる有効性を示した。

「TRANSCEND NHL 001試験」では、同じくCD19を標的とする「Kymriah」「Yescarta」とliso-celの差別化につながる可能性が潜在的対象患者の下位集団も特定された。ASCO 2019で発表されたデータでは、前治療歴の長いマントル細胞リンパ腫患者9人のうち7人がliso-celに反応した(全奏功率78%)。一方、半数あまりの患者に、グレード3/4の有害事象が生じた。CAR-T細胞療法でよく見られる重篤な有害事象であるサイトカイン放出症候群は33%に生じたが、全例がグレード1で、平均6日以内に消失した。

こうした結果から、liso-celは、まだマントル細胞リンパ腫に対するベネフィットを示せていないKymriahやYescartaとは一線を画すと考えられる。

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「liso-cel」と「Kymriah」「Yescarta」の差別化

さらにliso-celは、別のニッチな患者集団でも有効性を示した。それは二次性の中枢神経悪性リンパ腫の非ホジキンリンパ腫患者で、ここには大きなアンメットニーズがある。ASCO 2019で発表されたデータによると、二次性中枢神経悪性リンパ腫による再発/難治性B細胞リンパ腫患者で、評価可能な9人中4人が完全奏功を達成した。治療毒性は管理可能で、1人にグレード2のサイトカイン放出症候群、もう1人にグレード3の神経性イベントが生じた。

製造のためのロジスティクスや高レベルの毒性、治療費の償還といった課題を考えると、CAR-T細胞療法が臨床現場で主流となるには、まだ遠い道のりが残されているといえる。それでも、ASCO2019で発表された研究開発の進展からは、CAR-T細胞療法が今の地点にとどまることはなく、いくつものがんで治療パラダイムを転換させる可能性を持っていることが読み取れるだろう。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

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