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人工膵臓の未来|DRG海外レポート

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ディシジョン・リソーシズ・グループ(DRG)社は世界の医薬品・医療機器市場の様々な分野において自社独自の分析・評価を行い、世界のヘルスケア関連企業にアドバイザリー・サービスを提供するインターナショナル・コンサルティング会社です。

この記事は、DRGが発行した以下のオリジナル記事を承諾を得て掲載しております。

出典: 人工膵臓の未来|DRG海外レポート

発行元:Decision Resources Japan KK
発行日:2019年4月16日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、インスリンポンプと血糖測定器を組み合わせた「人工膵臓デバイス」を取り上げます。

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

治療開発の究極の目標

糖尿病の成人患者は1型・2型あわせて4億1500万人おり(2017年)、2045年までに6億3000万人に達すると予測されている。このうちインスリン治療が必要な患者は、頻回注射法(MDI)や、持続血糖測定器(CGM)と組み合わせて使うインスリンポンプ療法に頼っている。

インスリンを産生することができない1型糖尿病患者は、日々、血糖値のチェックとインスリン投与量の修正が必要となる。2型糖尿病患者の場合、インスリンは産生されても量が足りない、もしくは、インスリン抵抗性があり、インスリンが十分に作用しない状態だ。問題としては1型と似ているが、インスリンによる治療は必ずしも必要なく、運動と食事、そして血糖降下薬の服用で、ある程度は症状を管理することができる。

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しかし、糖尿病の管理で最も難しく、危険を伴うのは、突発的な血糖値の変動だ。これに適切に対処できなければ、重篤な合併症を引き起こしてしまう。

こうした背景から、糖尿病の治療では、クローズド・ループ・システム、いわゆる人工膵臓の開発が究極の目標となっている。世界中の何百万という糖尿病患者にとって希望の星であるとともに、企業にとっては市場で頂点を極めるために実現しなければならないシステムとなっている。

イノベーションとQOL

糖尿病の自己管理では、いくつかのイノベーションが起こっている。インスリン皮下注入ポンプと皮下CGMはその一例で、これを使えば一日に何度もフィンガースティック血糖検査でインスリン投与量を判断し、注射をする必要がない。患者は、身体から直接測定した血糖値をモニターで見て、ポンプで直にインスリンを投与できる。

糖尿病患者のQOLをさらに向上させるため、研究者と医療テクノロジー企業はついに、これらの装置を1つの「人工膵臓デバイス」(ハイブリッド・クローズド・ループ・システムとしても知られる)として統合することに成功した。

持続的な血糖値の観察とインスリンの投与には、アルゴリズムが応用されており、患者が操作する必要はほとんどない。健康な膵臓に匹敵する機能を実現したこの装置によって、患者の負担は大きく軽減される。それだけではなく、スポーツをしていたり、眠っていたりといった無防備な状況で生じる突発的な血糖値の変動にも対応可能だ。

治療の現状

世界のMDI市場は現在、かなり飽和しており、今後10年はおおむね縮小傾向をたどると予想されている。DMIはもはや高付加価値製品ではなく、MDI療法を必要とする糖尿病患者はすでに使用しているからだ。

一方、インスリンポンプ市場は、欧州とアジア・太平洋地域で着実に成長している。ただ、米国の成長は限定的だ。というのも、米国ではインスリンポンプデバイスの償還が1型糖尿病患者に限られており、糖尿病の大半を占める2型患者の使用は制限されている。欧州とアジア・太平洋地域も同じようにインスリンポンプの償還は限られているが、市場はまだ飽和には至っておらず、認知度と入手可能性の向上が市場成長の支えとなる。

インスリンポンプの償還は、最終的には2型糖尿病にも広がっていくだろう。これはインスリンポンプ市場のさらなる成長につながり、いずれは人工膵臓システムにも追い風となるはずだ。

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いくつかの国では、特定の患者を対象に治療の費用を補助することで、インスリンへのアクセスを向上させようという取り組みも行われている。オーストラリア政府とJDRF(国際若年性糖尿病財団)は、1型糖尿病の子どもを持ち、医療費が償還されない低所得世帯に、インスリン治療の補助金を提供している。インスリンへのアクセスを向上させようとしているクリニックもあり、インスリンポンプを販売ではなく貸与することで、初期費用の負担を減らしている。

それでもやはり、この市場で最も有望かつ刺激的な要素として注目され続けているのは、人工膵臓の実現だ。

最近の開発状況

患者が操作する必要が一切ない完全なクローズド・ループ・システムは、いまだ完成していない。しかし、操作を最小限にしたハイブリッド・クローズド・ループ・システムが、ここ数年でいくつか当局の承認を取得している。

中でも注目されるのが、世界初の人工膵臓であるMedtronicの「Minimed 670G」だろう。2016年に米FDAの承認を取得した当初は14歳以上の1型糖尿病患者が対象だったが、2018年に適応拡大し、7~13歳でも使用できるようになった。このデバイスは2018年にCEマークを取得し、欧州でも7歳以上の1型糖尿病患者に使用できるようになった。

Diabeloopの「DBLG1システム」も注目される。2018年11月にCEマークを取得しており、2019年前半に同社の本拠であるフランスで市場投入される見込みだ。スマートフォンとの連携で差別化を図っており、患者は自分のスマートフォンで血糖値を見たり、投与量を調節したりできる。

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近年、多くの臨床試験で、ハイブリッド・クローズド・ループ・システムの安全性と有効性が実証されている。その1つ、JDRFの援助を受けて欧州で行われた試験では、ハイブリッド・クローズド・ループ・システムは、1型糖尿病患者において手動のインスリン投与より血糖管理に優れており、低血糖のリスク低下を示した。同様に、InsuletとTandem Diabetes Careが行った試験でも、それぞれの企業が提供するクローズド・ループ・システムが良好な結果を得ている。

クローズド・ループ・システムが広く認識されるようになり、FDAもこうした製品専用のガイドラインと安全性基準の策定に着手した。FDAはまた、クローズド・ループ・システムの開発に無用の負担を強いないよう、糖尿病の様々な患者グループや研究者らとの協議の場を設けています。

競争の勢力図

クローズド・ループ・システムの世界市場で競争している企業はMedtronicとDiabeloopだけで、糖尿病患者集団にもこの技術はまだあまり浸透していない。現在、開発を進めている企業にもかなりのチャンスが残されている。デバイスの開発と臨床試験の実施には莫大な資金が必要なため、多くの企業は、合弁会社を設立したり、共同事業体に参画したりといった方法で、この市場に食い込もうとしている。

これにあたるのが、2016年後期にDexcom、Tandem Diabetes Care、TypeZeroが発表した共同グローバル試験(NIHが助成)だ。この試験では、Tandemのインスリンポンプに、Dexcomの「G5 CGM」と、TypeZeroのクローズド・ループ・アルゴリズムアプリケーションである「inControl」を合体させた人工膵臓システムを検討する。2017年、この試験の研究者らは、試験対象デバイスを拡大してDexcomの「G6ポンプ」を加えるとともに、Tandemの「t:slim X2ポンプ」と統合した。

さらに一部の企業は、インスリンポンプの購入にかかる自己負担を軽減することで優位に立とうとしている。たとえばMedtronicは、すべての「MiniMed 670G」ユーザーに48か月の分割払いプランを提供するほか、購入前1年以内に失業しているなど特定の条件に該当するユーザーには、購入費用を補助するプログラムも用意する。

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さらに、Insuletは2018年11月、Tidepoolのループシステムに使われるオープンソースの自動インスリン投与アプリケーションについて、FDAの承認を得られるよう同社と協力すると発表した。Insuletが初めて共同で開発するポンプ「Omnipod」を完成させるためだ。

有望な領域

クローズド・ループ・システムの実現に向けた機運が高まる一方で、迅速な普及を妨げる要素もある。「デバイスが高額(Minimed 670Gの場合、約6500ドル)」「償還が困難」「一部患者は新技術の導入をためらう」といったことだけでなく、Medtronicの一部のインスリンポンプに欠陥が見つかったことなどにより、訴訟やリコールに関するネガティブな報道もあった。

それでも、このシステムがもたらし得るベネフィットは計り知れず、糖尿病患者のQOLを劇的に向上させるはずだ。今後明らかになる臨床データが良好であるほど、償還対象として認められやすくなり、アップテイクと浸透も連鎖的に進むだろう。

このように、インスリン投与デバイスの市場は大きく変化している。クローズド・ループ・システムをすでに開発中の企業にとっても、また、将来的に新たな機能やより効果の高い製品の提供を目指す企業にとっても、非常にいい状況となっている。一方、クローズド・ループ・システムの人気が上昇し、類似のデバイスが登場してくることは、パッチ式ポンプのようなほかの糖尿病ケアデバイスを販売する企業にとってはかなりの脅威になるだろう。

独特で画期的な機能、優れた臨床データ、戦略的協調、クリエイティブな方法によって、患者アクセスを向上させたり、競争力のある価格を設定したりするのが、技術的イノベーションである。そこから生まれるチャンスを活かせる企業が、人工膵臓の明るい未来に向かって大きく成長していくことになるだろう。

【AnswersNews編集長の目】

今回は人工膵臓について、海外の開発動向をお届けしましたが、日本でも画期的な人工膵臓の研究開発が進められています。

今年1月には、東京医科歯科大や名古屋大などのチームが、マイクロニードルを使った貼付型の人工膵臓のプロトタイプを開発したと発表しました。インスリンポンプのような機械は使わず、貼るだけで1週間以上、血糖値に応じて持続的にインスリンを投与することができるといいます。今後、動物での安全性・有効性の実証をへて、実用化に向けた研究を進めていくといいます。

大塚製薬工場は、オーストラリアのリビング・セル・テクノロジーズ(LCT社)と折半出資で合弁会社「ダイアトランズ大塚」を設立し、バイオ人工膵島を開発。無菌状態で飼育されたブタの膵島細胞をカプセルに閉じ込めたもので、患者の腹腔内に移植し、インスリンの分泌を補うといいます。大塚製薬工場は今年1月、LTC社が持つ合弁会社の全株式を取得。米国で数年以内に臨床試験を始めることを目指しており、日本での開発についても検討を進めています。