【海外がん医療情報 2月17日】 免疫療法が効かないがん患者の一部に対し、糞便移植により腸管内微生物の組成(腸内細菌叢として知られている)を調整することで、免疫療法の効果が得られる可能性があることが、新たな試験で示された。同試験は、米国国立衛生研究所の一部である国立がん研究所(NCI)がん研究センターの研究者と、ピッツバーグ大学のUPMCヒルマンがんセンターの研究者が共同で実施した。
この試験では、免疫療法薬の一種である免疫チェックポイント阻害薬による治療に当初は奏効を示さなかった進行メラノーマ患者に対し、同薬剤に奏効した患者から得た糞便細菌叢を移植した結果、一部において免疫チェックポイント阻害薬に対する奏効が認められた。この結果から、患者の大腸に特定の糞便微生物を導入すると、腫瘍細胞を認識して殺傷する免疫系の機能を高める薬剤に患者が奏効するようになる可能性が示唆されている。本知見は、Science誌に2021年2月4日付けで掲載されている。
「近年、PD-1阻害薬やPD-L1阻害薬と呼ばれる免疫療法薬は、特定の種類のがんを有する多くの患者に有益ですが、奏効を示さないがんを有する患者の治療に対しては、新たな戦略が必要とされています」と、NCIがん研究センター統合がん免疫学研究所の主任であり、本研究の共同リーダーであるGiorgio Trinchieri医師は述べている。「今回実施した試験は、腸内細菌叢の組成を変化させると免疫療法の奏効が改善することを実際の患者で確認した最初の試験のうちの1つです。この試験のデータは、腸内細菌叢ががん治療の標的になりうることを証明しています」。